26.10.06
食料品の消費税減税法案の概要が判明、そのメリットとデメリット

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。神庭さんが注目した話題はこちら
「食料品の消費税減税法案の概要が判明、そのメリットとデメリット」
吉田:きのう、所信表明演説を行った高市総理は、臨時国会に関連法案を提出する飲食料品の消費税率引き下げに言及し、「家計に少しでもゆとりを生み出したい」と強調しました。今朝は、消費減税のメリットとデメリットについて、神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:神庭さん、まずは消費減税の関連法案ですが、具体的にどんな内容なんでしょうか?
神庭さん:共同通信などによると、2027年4月から2年間限定の臨時的な対策として、食料品の消費税率を現在の8%から1%へ引き下げます。残りの1%相当分を財源として「就業者負担軽減支援金」を原則、年に1回支給するそうです。2027年度に先行導入して、2年後の2029年度以降に規模を拡大します。具体的な給付対象や給付額は政令で定めるということです。減税によって自治体に生じる減収分は、全額を国が交付金で補填します。2年間で約10兆円の財源が必要になりますが、赤字国債には頼らず、歳出と歳入の見直しで確保するということです。
吉田:改めてですが、消費減税のメリットは何でしょうか。
神庭さん:中低所得者の生活が楽になるのでは、と期待されています。家計の消費に占める飲食費の割合を示すエンゲル係数は2025年度、28.8%で45年ぶりの高水準となりました。家計の3割を食費に持っていかれている計算です。エンゲル係数は一般的に低所得世帯ほど高くなりますから、中低所得世帯は負担軽減の効果を実感しやすいだろうと思います。1%分を充てるという触れ込みの支援金についても、所得制限をつけて中低所得者にだけ配るとみられています。
吉田:ではデメリットは何でしょうか。
神庭さん:よく言われる反対論・慎重論を挙げていくと、
・インフレ時に減税すると需要がふかされて、かえって物価が上がってしまう。
・消費税が7%下がったとしても、事業者側がその通りに値下げするとは限らない。お店側もインフレで苦しいので、減税分をそのまま価格に反映しないのではないか。
・お弁当やテイクアウトは1%に下がるけれど、外食は10%のままだから、外食産業に逆風になるのではないか。
・財政が悪化して金利上昇などにつながる。
といったデメリットが想定されます。
ユージ:そういった懸念点について、高市総理は何と言っているのでしょうか?
神庭さん:高市総理への日本テレビの単独インタビューを書き起こした日本経済新聞の記事によれば、インフレ下の減税で逆に物価高を招かないかという懸念に対しては、「食料品というのは日々の生活必需品であって、消費期限もあるから税率が下がったからといって、ものすごく買いだめをして、急激に消費が増えるという効果は相対的には大きくないと思っている。飲食料品の消費税率引き下げというのは、物価高を過度に助長するようなものではない」と答えました。また、本当に減税分、商品価格が下がるのかという疑問に対しては、「消費税率が引き下げられたというときに、同じ飲食料品を昨日と同じ値段で売っているお店があったら、そのお店の評判にも関わるので日本の商慣行を考えると一定の値下げを試みる傾向にあると思っている」と語っています。
ユージ:なるほど。神庭さんはどう見ていますか?
神庭さん:2年限定と言っていますが、2年後に本当に戻せるのかということですね。時事通信の9月の世論調査では、2年後に1%から8%に戻すという政府方針に対して56.9%が反対しています。減税前の段階でこの回答です。実際に上げる段になれば痛みもありますし、より一層、反対論が高まるだろうと思います。となると、どうやって恒久的な財源を穴埋めするのかという話になります。市場はシビアで何も忖度してくれませんから、財政に不安ありと見れば、容赦なく日本国債を売り浴びせてくる可能性があります。足元で10年債の利回りは3%台と30年ぶりの高水準に達してしまっています。
吉田:財政悪化で金利が上昇すると、どんなマイナスの影響がありますか?
神庭さん:一例が住宅ローンです。固定型のフラット35の10月の最低金利は3.83%で過去最高でした。1月は2.08%でしたから、今年に入って1.75ポイントも上昇したことになります。5,000万円のローンを借りた場合、1月の引き渡しなら月々の支払いが16万7,000円台で済んだのに、10月は21万6,000円台で5万円近くも上がってしまいました。利息の総額も2,000万円超から4,000万円超に倍増しています。現役世代ほど住宅ローンなどの借金をたくさん抱えている一方で、高齢世帯は負債が少なく、金融資産が多いです。消費税は高齢世代も含めて老若男女が幅広く負担していますけれど、住宅ローンの重みは現役世代に偏りやすいです。消費減税は巡り巡って現役世代の負担を増やし、世代間格差を広げてしまう可能性があります。本来は消費減税よりも、社会保険料の引き下げなど、働く現役世代の負担を下げる政策を優先すべきだと思います。もう1つの懸念材料がアメリカからの圧力です。ベッセント財務長官は日本の金利上昇が米国債の利回り上昇に波及することを嫌がっていて、日本の経済政策への発言を強めています。イラン戦争の責任転嫁もありますし、これはバリバリ内政干渉ではないかと思いますが、11月の中間選挙を前に、アメリカが日本の消費減税についてああだこうだと介入してこないかは、注視しておきたいところですね。