26.10.13
簗農林水産大臣による「予算カット発言」、3つの問題点

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
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「簗農林水産大臣による『予算カット発言』、3つの問題点」
吉田:簗和生(やな かずお)農林水産大臣による自治体の「予算カット」発言をめぐり、高市総理は8日、衆議院本会議の代表質問で「とにかく働いて仕事で返せと言っております」と語り、続投させる考えを示しました。今朝は、予算カット発言の問題点について、神庭さんに解説してもらいます。
ユージ:神庭さん、改めて、発言の経緯を教えてください。
神庭さん:「週刊文春電子版」と「デイリー新潮」が9月30日に「恫喝発言」「恫喝音声」だとして、簗さんが大臣に就任する前の5月24日の発言をスクープしました。地元である栃木3区の自民党関係者が集まった懇談会での発言で、下野新聞が地元紙の意地で音声データとともに無料公開しています。それによりますと、「那須烏山市、那珂川町の令和8年度の道路予算については大幅にカットしました。ひとつは首長が自民党の国会議員はいらないという行動を取ったわけですから、それが要因1。二つ目の要件は『票数』。多くの市民町民がそのような判断をしたということですから。自民の議員に頼ってインフラ整備が必要だというところに多く回すのが、当たり前の話ですから、それをやりました」という発言でした。選挙で自分を応援しなかったから予算をカットした、というふうに聞こえます。これは問題だということで大騒ぎになっているわけですね。
吉田:神庭さんには3つの問題点を指摘していただきます。まず1つ目は何でしょうか?
神庭さん:公私混同です。日本国憲法第15条で「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」と定められています。簗さんは小選挙区で落ちて比例復活しています。だからといって、自分を落とした有権者に罰を与えるような発言は間違っていますよね。問題は、これが単なるビッグマウスで、自分の影響力、存在感を大きく見せるためのブラフだったのか、それとも本当に予算カットを働きかけていたのかという点になってくるかなと思います。
ユージ:実際のところ、どうなんでしょうか?
神庭さん:簗さんは「事実と異なる発言をしてしまった」「減額を求めた事実はない」と釈明しています。JNN(ジャパン・ニュース・ネットワーク)によると、2月中旬頃、簗さんから国土交通省(国交省)に問い合わせがあったが、国交省は「(問い合わせを受けた)本人もはっきりと覚えていないくらい。働きかけや圧力を受けたことはなかったと思います」と説明しています。
ユージ:ということは、セーフということになるんですか?
神庭さん:そうとも言い切れません。官僚からしたら立場上「覚えていない」「思います」と曖昧にぼかすしかないという側面もあると思います。簗さんは5月の会合で「那須烏山市については前年度の64%減、約3分の1にしました。そして那珂川町は54%減にしています」とやけに具体的な数字を出しています。朝日新聞によりますと、両市町が事業主体となって市道や町道に使われる道路予算は、那珂川町で前年度から54.1%減、那須烏山市については5事業分を簗さんに説明し、その5事業は前年度比64%減だったといいます。少なくとも数字は簗さんの発言と一致しています。一方で、栃木県が主体となって両市町内で実施する事業の予算も加味すると、トータルではむしろ金額が増えており、国交省の苦心の跡というかバランス感覚がうかがえます。農林水産省(農水省)に「簗大臣お支えチーム」ができたという報道もありましたが、こんなことに振り回される官僚の皆さんが本当にお気の毒だなと思います。
吉田:2つ目の問題点は何でしょうか?
神庭さん:構造要因になります。ノンフィクションライター窪田順生さんのダイヤモンド・オンラインの記事によると、今から30年前、選挙で新進党が躍進した時にも「『総選挙の新進党大勝地域は予算減らせ』、自民党内で『報復発言』相次ぐ」という新聞記事が出ています。簗さんが特殊ケースなのではなく、政界全体で長年にわたって報復カルチャーが続いてきたのだとしたら、ここで一気にうみを出し切る必要があると思います。同じ自民党の鈴木宗男参議院議員が簗さんに「決意表明の前に人としての矜持が問われてるんだよ!」と叫んでいましたが、単なるテレビ向きのポーズ、ガス抜きで終わらせず、組織として綱紀粛正に努めていただきたいなと思います。
吉田:そして、3つ目の問題点は何でしょうか?
神庭さん:危機管理です。高市総理は「私の大事なやなちゃん」と呼んで簗さんを重用してきましたが、続投させれば国会で野党の追及が延々と続くというのは目に見えています。高市政権の支持率にもじわじわ効いてくるかもしれません。よく無能な味方は敵よりも、たちが悪いといいますけれども、高市さんの足を引っ張る一番の敵が実は「やなちゃん」ということになり得るわけですよね。高市総理が尊敬する安倍元総理は、第1次政権で閣僚のスキャンダルが相次いで苦しめられた教訓を活かし、第2次政権では不祥事や失言をした閣僚をスッパスッパ切ったわけですよ。リーダーには時に非情な決断も求められます。そこはぜひ高市さんにも安倍さんを見習ってもらって「泣いて馬謖を斬る」を実践していただきたいなと思います。自民党内からも簗さんは辞任不可避だろうという声が出ているようです。ズルズルかばったあげくに辞任に追い込まれてしまうよりは、さっさと切った方が傷は浅く済むと思います。簗さんもこれ以上、高市さんを苦しめて迷惑をかける前に潔く決断した方がいいのではないかなという気もしますけれどもね。
ユージ:本当に今、風向き的には苦しいというか、もう言い訳タイムみたいにだんだんなってきてしまっているんですよね。 もう一回見つめ直して、正しい方向を選んでほしいなと思いますね。