26.10.15
授業の余白をどう生かすか?調整授業時数制度

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは情報社会学がご専門の、学習院大学・非常勤講師 塚越健司さんです。
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「授業の余白をどう生かすか?調整授業時数制度」
吉田:4年後に実施される新たな学習指導要領について、文部科学省の審議会は、小中学校の裁量で教科の授業時数を増減できる制度を導入する方針をまとめました。
ユージ:塚越さん、導入が検討されている「調整授業時数制度」について教えてください。
塚越さん:今の制度では、学年や教科ごとに年間の「標準授業時数」が決まっています。今回の制度は、年間の総授業時数は基本的に変えずに、一部の教科の時間を減らして、浮いた時間を学校の判断で他に使えるようにするものです。検討案では、各教科の標準時数の最大15%まで減らせます。例えば、国語の年間の授業時間を少し減らして、その分を英語や探究学習に回すといったことができます。その他にも学校独自の教科を新設することや、子どもに合わせた学習、先生の研修などに使えます。今も標準の1割まで調整できる制度はありますが、国の指定が必要な、あくまで特例でした。今回の新しい制度では、申請なしで使えるようになります。小学校は2030年度、中学校は2031年度から、新しい学習指導要領で導入される予定ですが、希望する学校は2028年度から先行して使えるようにする方向で検討されています。
吉田:導入の目的は何でしょうか?
塚越さん:まず、教える内容が増えすぎているということで、文科省によると、50年前に比べて、小学校の主な教科では教科書のページが3倍になっているということです。3倍なんですよ。図が増えたり文字が大きくなったということもあると思うので、全部3倍ってことはないと思いますけれど増えているということで、生徒も先生も余裕がないので一部の教科の時間を減らして別の学びや先生の研修・研究に充てようということです。次に、子どもの多様化への対応です。不登校の小中学生は12年連続で増えていまして、およそ35万人います。またギフテッドと呼ばれる特異な才能のある子どもや、外国にルーツのある子どもなど、画一的な集団授業では対応しきれないという課題があります。一言でいうと、詰め込みを見直して、多様な子どもに合わせるための「余白」をつくる制度、ということですね。
ユージ:余白ができて、期待できることは何でしょうか?
塚越さん:学校ごとに判断するので、これまで通りの学校もあれば、英語や探究学習を厚くする学校、つまずきやすい子に丁寧に時間をかける学校など、個性が出てくると思います。保護者にとっても、その学校が何を大事にしているのかが見えやすくなると思います。学校としても、先生の研修時間を確保できれば、人手不足の中で働きやすい職場づくりにもつながるということです。あとは感染症や天候の問題で学級閉鎖や休校になり、特定の教科の時間が足りなくなりそうなとき、年度の途中で別の時間から振り替えられる設計も検討されています。
吉田:一方で課題は何でしょうか?
塚越さん:やはり、「どの教科を減らすか」です。教科の間で調整が必要になりますし、カリキュラムを組み直すと先生の負担もあるし、いろいろな議論になるかなと思います。あと、この関連で思い出すのが「ゆとり教育」です。あのときは、国が授業時間と一緒に、教える内容そのものも減らしました。その結果、学力低下論争が起きて、その後は授業時間が増えました。今回は全体の授業時間は基本的に減らさずに、教科ごとの配分を学校が選べるようにする点が違います。ただ、教科書の中身が減らないまま教科の時間だけ減れば、その教科ではかえって詰め込みが強まりかねません。そのため国としても、教科書の内容も絞り込む(減らす)方針ですが、減らしすぎると今度はゆとり教育と同じような批判が出てしまう可能性もあります。これはとても難しいですよね。結構難しい課題なので、国が「何を減らし、何を残すのか」をきちんと説明できるかも重要だと思います。そのうえで、学校の経営層の方は、これをチャンスとして多様な特色を出せるテーマもあると思います。まだ数年ありますので、今のうちから準備することが必要だと思います。いろいろな難しいところもありますけど、お2人はどうですか?保護者としては。
ユージ:余白時間がもしあったらどんな授業にしたいかでいうと、僕はもう「人間力を磨く授業」が欲しいですね。存在しない授業かもしれないけれども。
塚越さん:いいじゃないですか。ユージさんとかが学校に来てそういう話をしてくれて。芸能界はどうなのかとかね。
ユージ:人間力ですよ。もう人前で喋る力、人とのコミュニケーションの仕方とか、その辺がもっと上手くなれば生きやすくなるだろうなと思って。
塚越さん:そうですね。その分ちょっと他の教科を減らして、ここは少し簡単にする、というやり方はあるかなと。
吉田:今もすでに結構「この学校は中学受験に強いから」と引っ越される方とかもいるじゃないですか。学校によって特色とか特徴、強化しているものが違うので、その学校を狙って引っ越す方とか増えそう。激戦区の学校とか。
ユージ:学校に配分をお任せしますだと、学校のカラーがより出やすくなるだろうね。
吉田:ちょっと私立と似るというか。
塚越さん:こういうのをみんながどうしていくか分かるというのは、選択が多くて大変かもしれないですけれども、いろいろな選択肢が増えるというのはいいことですね。