26.10.20
運動会の子どもの写真を祖父母がSNS投稿。その危険性と対策

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
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「運動会の子どもの写真を祖父母がSNS投稿。その危険性と対策」
吉田:秋の運動会シーズンですが、運動会の写真をめぐってトラブルも起きています。祖父母らが孫の写真を、勝手にSNSに投稿し、プライバシーや防犯の観点から批判を集めているようです。そこで今朝は、神庭さんに問題の背景や対策を解説してもらいます。
ユージ:神庭さん、運動会の写真をめぐって、どんな問題が起きているのか教えてください。
神庭さん:BSS山陰放送の報道によれば……SNSのThreads上に子どもの運動会の写真が多数アップされていて、「お友達の顔、モザイクなしでバッチリ写っている…」「学校特定できました。危機感なさすぎ」「他人の子を危険に晒さないでほしい」といった批判が集まったそうです。親だけでなく、祖父母世代が投稿しているケースも多いということです。
吉田:やはり、SNSにあげるにしても背景や他の子どもなどにモザイクをかけるのはマナーですよね。
神庭さん:それくらいは少なくともやってほしいなと思いますが、一番問題なのはプライバシーの部分です。自分の子・孫はもちろん、無関係な子が写っていたら、その子の権利まで侵害することになってしまいます。もう一つの問題が防犯です。虐待や家庭内暴力、ストーカー行為を受けて引越しを余儀なくされ、ひっそりと暮らしているご家庭もあります。写真がきっかけで「この家族はここにいますよ」ということがバレてしまうと、最悪、命にかかわるような事態になる恐れもあります。
ユージ:1枚の写真からでも特定されてしまうものですか?
神庭さん:特定されてしまいますね。体育着の校章、校舎の外観、背景に写り込んだ建物など、何気ない情報がすべて特定のヒントになり得ます。スマホも高画質になっているので、意図せずいろいろ写り込んじゃってる可能性もありますよね。そんな大袈裟だと思うかもしれませんが、過去には、アイドル活動をしていた女性がアップした写真の瞳に映った背景、カーテンの色などから最寄り駅や住んでいるマンションが特定されて、犯罪被害に遭ったという事件も実際に起きています。
ユージ:それは怖いですね……。
神庭さん:怖いですよね。中にはフルネームアカウントといって、特に祖父母世代にはあまり気にせず実名でSNSをやっている人も少なくありません。Facebookはそもそも実名が原則です。珍しい名前だと祖父母の名字から孫の名字を推測しやすいです。フルネームで検索をかけるだけで、地域や勤務先、同窓会といった情報が芋づる式に出てきたりします。そこに運動会の写真で学校や保育園の名前が加わると、「このエリアの、この学校の、この名字の子」というところまで、簡単に絞り込めてしまいます。
吉田:ずいぶん前から、そういう危険性は指摘されていたと思いますが、なぜ投稿してしまうのでしょうか?
神庭さん:おそらくまったく悪気はないんですよね。自分の孫、かわいい孫を友人・知人に自慢したい、もう見てほしいというだけだと思います。純粋な気持ちで。祖父母世代が子育てをしていた時代には、もちろんSNSなんてなかったわけですよね。ネットリテラシーの格差が、トラブルにつながっているように見えます。そういう世代間のギャップは無数にあります。子育てひとつとっても、この20年、30年で常識は大きく変わっています。たとえば、頭の形が良くなるからといって赤ちゃんのうつ伏せ寝が流行ったことがありましたが、乳幼児突然死症候群のリスクが指摘され、いまは仰向け寝が基本になっています。離乳食前に果汁を飲ませるとかも、いまは全然やらなくなりました。運動会の写真問題というのもそういう時代のズレの1つの表れなのかなと思います。
吉田:どう対応すべきでしょうか?
神庭さん:祖父母世代にもわかりやすく伝えてあげるといいと思います。「実名のSNSで孫の写真を投稿するのは、写真の裏に名前と住所のヒントを書いて駅前の広場に置いておくようなものなんだよ」とか、それぐらい分かるように伝えてあげる。「最近は登校中に名札はつけないんだよ。名前がわかると犯罪につながることもあるからね。それと一緒で写真も……」みたいに話を持っていくのもありかなと思います。非公開の鍵アカウントにする設定が分からないようなら、代わりに変えてあげることもいいと思います。
ユージ:他にはどんな対策が考えられますか?
神庭さん:楽しかった思い出を残したい、誰かに感動をシェアしたいというのは自然な感情です。そこに完全に蓋をするのではなくて、見せたい気持ちの受け皿を用意してあげるということも大事かなと思います。「SNSはダメだけどLINEの家族グループにあげてよ」とか「『みてね』っていうサービスの家族アルバムにアップしてね」という感じで、安全な方向に誘導してあげる手もあるのかなと思います。学校から保護者にプリントを渡しても、祖父母にまで伝わっていない可能性が高いですから、プログラムにSNS禁止の注意書きを大きく記載する、当日の場内アナウンスでも念押しするなど、来場者全員に伝わる形で注意喚起できるといいですね。
吉田:注意の仕方も大事ですね。
神庭さん:そうですね、伝わらないと意味がないですからね。あとは、これは世代を問わない話ですが……最近はAIで子どもの写真をイラストのように加工した上でアップする人もいるようです。「これならいいでしょ」というつもりかもしれませんが、中にはAIに自分の子どもの写真を学習させること自体が嫌だという家庭もおそらくあるんですよね。これだけ情報流出が相次いでいるなかで、「その写真加工サービスは本当に大丈夫なの?」と心配になる人も中にはいると思います。たとえAIイラストだとしても、子どもの姿、まして無関係な人をSNSで公開することは避けた方が無難という気が私はします。
ユージ:あとは「人数が少ないから誰も見てないでしょう」と思っても、SNSは世界中の誰でも見ることができますよね。その認識を持っていない方もすごく多かったりするので、その辺も家族間で共有しないといけないですね。
神庭さん:『鍵アカ(鍵付きアカウント)』の中にも裏切り者がいる可能性がありますから。そこも注意してほしいなと思います。