26.10.26
不正アクセス、PHP問題…「バグマゲドン」で世界はどうなる?

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターはダイヤモンド・ライフ編集長、神庭亮介さんです。
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不正アクセス、PHP問題…「バグマゲドン」で世界はどうなる?
吉田:情報漏洩、サイトの緊急停止、相次ぐ不正アクセスやプログラミング言語「PHP」の深刻な欠陥などを受けて、世界中で混乱が拡大しています。AIの進化による破滅的な「バグマゲドン」を懸念する声も出ていますが、インターネットは今後どうなってしまうのでしょうか?神庭さんに解説してもらいます。
ユージ: 9月以降、毎日のように情報漏洩や不正アクセスのニュースが報じられていますよね。
神庭さん:本当に連日ですよね。被害が大きかったもの、深刻なものをいくつかピックアップします。タイムズカーでは不正アクセスを受けて660万件のアカウントが漏洩。免許証などの本人確認書類の画像データが外部に送信された146万件については、1人3000円の見舞金を支払います。見舞金は総額44億円になるということです。佐川急便では氏名や住所など、最大でのべ5300万件の個人情報が流出した可能性があります。セキュリティソフトなどを手がけるソースネクストでは2200万件超の情報流出の恐れがあります。暗号がかかっていない状態でパスワードが流出したと報じられています。他にもカプコン1170万件、ビッグエコーの第一興商で870万件、ブックオフグループHDで640万件、ふるさとチョイス440万件、ローソンID200万件超などなど。もはやどこにもかすっていない人、無事な人はいないんじゃないの?というレベルになってますね。
吉田:なかでも気になる被害は?
神庭さん:治安や安全保障にかかわるケースが気になります。読売新聞によると、大阪のシステム運営会社が不正アクセスを受けて、22府県警の警察職員を中心に14万件の個人情報が流出した可能性があるということです。これによって逆恨みで警察官が狙われたり、偽警官詐欺に本物のデータを流用されてしまったり、様々な危険が考えられます。日本原子力研究開発機構や、福島第一原発の廃炉作業に関する研修サイトなどの原子力関係、デジタル庁、環境省などの官公庁、日経新聞、NHK出版などのメディアも攻撃対象になっています。GMOインターネットのFX関連サービスへの不正アクセスをめぐって、身に覚えのない取引で「数百万円単位の損失を被った」という声があがるなど、金銭的な実害が出ているのも非常に気になるところです。
吉田:そうしたなか、先週にはPHPをめぐる問題も起きました。改めてPHPについて教えてください。
神庭さん:Webサイトを動かすプログラミング言語で、サイトの裏側で情報を処理しています。レストランでたとえたら、お客さんに合わせて厨房で料理をつくるコックさんのようなものですね。「入力されたIDとパスワードが正しいかどうか確認する」「ネットショップで商品を探して、カートに入れる」など様々な処理を担っています。1995年に公開されて、いまや世界のサイトの7割で使われているんですね。先週、そのPHPに重大な脆弱性(欠陥)があることがわかって、てんやわんやになりました。そのままにしておいたら、ハッカーにセキュリティホールを狙われて、好き放題されてしまうかもしれないということで、当初は22日にアップデートする予定だったんですが、ネット上で情報をお漏らしする人が現れて、このままでは危ないということで21日の夜に前倒しで修正パッチが公開されました。爆速表示で有名な、あの阿部寛さんのホームページすらもメンテで一時止まり、そのことに衝撃を受けた人も多かったようです。
ユージ:PHPの欠陥はどのようにしてわかったんでしょうか?
神庭さん:PHPの脆弱性は、アメリカのセキュリティ企業Calif(カリフ)やGoogle傘下のWizという会社がAIを使って発見したんですね。これだけ聞くといいニュースに思えるかもしれませんが、攻撃する側もAIを悪用していますから全然安心できないんですね。最強のAIで攻撃して、最強のAIで守る。現代の故事成語、矛盾というか究極のマッチポンプみたいな話ですね。ただ、サイバーセキュリティの世界では100回の攻撃を99回防いだとしても、1回でも侵入を許したら終わりなわけですよ。攻撃者の方が圧倒的に有利ということなんですよね。
ユージ:一連の混乱を受けて、今後予想されることは何でしょうか?
神庭さん:ウォール・ストリート・ジャーナルは「バグマゲドン」が到来したと書いています。バグとハルマゲドン(最終戦争)を掛け合わせた言葉なんですけれども。「な、なんだってー!神庭さん、MMRの読みすぎだよ」と言われるかもしれないが、決して大袈裟ではないんですよ。AIによって、PHP以外にも今後続々と深刻な脆弱性が明らかになってくるというふうにみられています。チームみらいの安野党首は「AIによる攻撃力が高まるなか、電力や水道、医療など、ライフラインの停止も伴うような大規模な被害を想定しておかなければいけない」と訴えています。イギリスの防衛大臣も、サイバー攻撃や災害などに備えて、食料、水、救急用品の備蓄をするように呼びかけています。マイクロソフトは中国政府と関係するハッカー集団が9月以降に、AIを使って世界中の数百の組織にサイバー攻撃を仕掛けていたと発表しているんです。ということは、私たちはすでにサイバー戦争、AI戦争の真っ只中にいると。実はいま平時ではなくていまが有事になりつつあるんだよという自覚をしないといけないかなと思います。我々が手元でできることは多くないんですけども、アプリを最新にアップデートしておくとか、パスワードの使いまわしをしないとか、できることはやっておくということが大事かなと思います。