yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ 第百五十話 全ての基本は正しい姿勢 -【鎌倉篇】円覚寺住職 須原耕雲-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った 命の闘いを知る事で、週末のひとときを プレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM OH!…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百五十話全ての基本は正しい姿勢

北鎌倉の人気観光スポットのひとつ、円覚寺。
鎌倉時代後半、寺を建てるために土を掘ったら、古びた石の箱が出てきました。
その箱の中に、中国・唐の時代のお経「円覚経」が入っていたところから、寺の名を円覚寺としたといわれています。
夏目漱石は、自身の悩みと向き合うため、何度もこの寺を訪れ、座禅の行に励みました。
その熱心さは、『門』という小説で円覚寺の山門を描くほどでした。

この円覚寺の住職であり、有名な弓道家として、亡くなった今も信者が絶えない僧侶がいます。
須原耕雲(すはら・こううん)。
彼は、50歳で弓道に出会い、弓を引く前から引いたあと、全ての所作に、座禅と同じ宇宙を見ました。
彼が説く、姿勢や呼吸の大切さは、私たちの日常生活にも生かされるべきものです。
耕雲は、一息座禅をすすめました。
「一息座禅というのは、日常の一息一息の間に、座禅の力を発揮していこうというものである。電車に乗ったら、立ってつり革につかまり、少し足を開き、目を薄く閉じて、一息分、反省をするんです。あのとき、ああ言ってしまったのは、自分が出来ていない証拠だな、というふうに。また、煙草をたしなむひとは、たった一本の煙草の間に、座禅と同じようにきゅっとお尻に力を入れて、息を大きく吐きながら我が身を振り返る。一日たった一息で、ずいぶん世界が変わります」

一息座禅こそ、ひと矢ひと矢に我が身をのせる、弓道から学んだことなのかもしれません。
住職にして弓道家、ローマ法王の前でも弓を引いた男、須原耕雲が人生でつかんだ明日へのyes!とは?

北鎌倉・円覚寺の僧侶、須原耕雲は、1917年1月20日、東京・日本橋に生まれた。
2歳のとき、父の転勤で香港に渡る。
5歳のとき、母が亡くなった。
亡くなる前、病院に母を見舞ったときのことを耕雲は、覚えている。
母は細くて優しい声で言った。
「これ、お食べ」
パンをくれた。丸いコッペパン。
さらに母は、こう言った。
「お腹の中にねえ、赤ちゃんがいるのよ」

母が亡くなり、焼き終えた骨が引き出される。
最前列にいた。
かっと目を見開き、全てを見ていた。
5歳の子どもには、過酷な現実。
でも耕雲は、目をそらさなかった。
母の死後、街角で母に似たひとを見かけると、あとをついていった。
でも結局、自分とは関係のないひとだ。
肩を落として家路についた。
何度も繰り返すうちに、いつしか、ついていくのをやめた。
父は会社を辞め、そのまま香港に残り、退職金で日本料理店を開いた。
日本から板前を呼ぶ。寿司に天ぷら、すき焼きも出した。
繁盛した。
やがて父は店のオーナーだけではなく、香港にやってくる日本人の世話をするようになる。
さまざまな日本人が父を頼ってやってきた。
浪曲師、講談師。画家や相撲取り。
いろんなひとに頼りにされる父が、自慢だった。誇りに思った。
でも、そんな父との別れのときが、近づいていた。

北鎌倉・円覚寺の住職にして弓道家の須原耕雲は、小学5年生のとき、父から離れることになる。
香港での暮らし。耕雲は、やんちゃで無鉄砲。勉強などしない。
父はいつも、もてあましていた。
ある日、日本から来た大洋丸という船が、香港の港に着いた。
その船の料理長は父の友人。
『深川のおじさん』として耕雲もしたっていた。
「大洋丸に、めし食いにいこう」
父に言われて、うれしかった。
豪華な西欧料理を食べる。
いつのまにか寝てしまう。
耕雲が目を覚ますと、海の上だった。
そこに父の姿はない。
「お父さんとは、しばらくお別れだ。今からおじさんと日本に行くよ」
深川のおじさんにそう言われて、涙が出た。
自分は、父に捨てられた…。
この強烈な思いは、生涯、耕雲の心に刻み込まれることになった。

東京・大森にあるおじさんの家に着く。真冬で寒い。
手に息を吹きかける。冷たい手は、そのままだった。
おばさんが迎えてくれる。
「寒いのかい?」と聞かれたので、「はい」と答えた。
「どれ、手を出してごらん」
あったかい両手で包んでくれるのだと、子ども心に思う。
両手を差し出す。
しかし…おばさんは、耕雲の手の甲をバシンと叩いた。
「さあ、これであったかくなったでしょ」
背を丸めて自分の手に息を吹きかける姿がひどく醜いことを、そのときの耕雲は、まだ知らなかった。

須原耕雲は、幼いながらに知った。
全ての基本は、姿勢にある。
見ていて清々しい姿勢は、保つのに苦労する。
キツイ。苦しい。
でも、勝負のギリギリ、人間同士の戦いの最終段階は全て、「正しい姿勢」を保てたものに軍配があがる。
身体が美しいと書いて、躾(しつけ)と読む。
東京のおばさんは、耕雲に躾を教えたのだ。
母を喪い、父に捨てられ、天涯孤独の淵にいた彼に、おばさんは容赦なかった。
でもその裏には、精一杯の優しさがあった。
「世の中に出たら、苦しいことだらけ。我慢しなくちゃいけない。辛くても平気な顔をしていなくちゃならない。そんなとき、姿勢をしゃんとしさえすれば、心は保てるんだよ」

さらに中学にあがったときの恩師は、こう言った。
「いいか、人間の修行というものは、バケツで水を汲むと思っちゃいけない。ザルだ、ザルで水を汲む、そういう気持ちでいかねばならないんだ」
耕雲は思った。
楽な姿勢、というのがある。
だらっとする。
背を丸め、ポケットに手をつっこんで歩く。
でもそれでは、丹田は鍛えられない。
凛とした意見も考えも沸いてはこない。
常にお尻に力を入れ、しゃんと背筋を伸ばす。
一息吐くごとに、自らの姿勢を正す。
耕雲は、思い出していた。
誇らしかった父は、いつも姿勢が綺麗だった。
誰に誇るわけでもなく、自分のために胸を張る。
明日のために、背筋を伸ばす。

【ON AIR LIST】
Breathe and Stop / Q-Tip
ALONE AGAIN / Gilbert O'Sullivan
SMILE NOW, CRY LATER / Sunny & The Sunliners
青空 / スガ シカオ

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと新わかめのかき揚げ

須原耕雲の父が香港で日本料理店を開いたというエピソードにちなみ、今回はこちらの天ぷら料理をご紹介します。

霜降りひらたけと新わかめのかき揚げ
カロリー
219kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 新わかめ
  • 20g
  • ごま
  • 小さじ1
  • 卵白
  • 1個分
  • 小麦粉
  • 大さじ2
  • 片栗粉
  • 大さじ2
  • 大さじ1
  • 揚げ油
  • 適宜
  • 適宜
  • レモン
  • 適宜
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、わかめは4cm程のざく切りにする。
  • 2.
  • ボールに卵白をほぐし、小麦粉、片栗粉、水を入れ混ぜ、(1)とごまを入れ全体に絡める。
  • 3.
  • フライパンに2cmの高さまで入れた油を170から180℃まで中火で熱し、(2)のきのことわかめを適量ずつカリッとするまで揚げる。
  • 4.
  • 塩を振っていただく。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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