yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第三百九話 隠れた現実を知る -【東京篇】民俗学者 柳田國男-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第三百九話隠れた現実を知る

今から146年前の7月31日に生まれた、日本近代民俗学の父がいます。
柳田國男(やなぎた・くにお)。
彼が民俗学を体系化するまで、日本における「歴史の研究」は、主に、名をなした偉人の政治的な大事件を扱っていました。
しかし、柳田が目を向けたのは、名もなき市井の人々。
度重なる自然災害や歴史的な出来事に翻弄され、それでも力強く生きてきた庶民の生活や風習に光を当てたのです。
民間伝承や土地に伝わる昔話にも耳を傾け、常に「日本人とは何か?」という問いを追及しました。
彼が民俗学を「農民の暮らしを少しでも向上するための学問」と位置付けたのは、幼い頃の経験と関係があります。
のちに柳田は自らの生家を「日本一小さな家」と称しましたが、貧しい一家は、7人で狭い家に暮らしていました。
毎日、喧嘩が絶えない。
子ども心に「家が狭いせいだ」と思ったと言います。
やがて兄嫁は耐えきれず、家を出て行ってしまいました。
さらに何年にも及ぶ、飢饉を体験。
貧しさや家の狭さはひとの心まで変えてしまう。
そもそも、どうして貧しさが生まれてしまうのか…。
柳田少年の心に芽生えた疑問が、民俗学の扉を開いたのです。
「歴史が教える最も実際的な知恵は、民族が進展の可能性を持っていることである」
そう彼は、唱えました。
民は、常に向上する可能性を秘めている。
それを阻むものとは何か、逆にその背中を押すものとは何か、ヒントは歴史にある。
土地にある。
見過ごされてきた現実にある。
柳田は、それらを繙くため、日本中を訪ね歩き、民俗学を開拓したのです。
東京都世田谷区成城で87年の生涯を終えた偉人・柳田國男が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

民俗学を確立した賢人・柳田國男は、1875年7月31日、現在の兵庫県神崎郡に生まれた。
あたりは戦国時代から続く農村。
古い薬師堂や塚穴があり、村人たちは貧しさを共有していた。
父は村の医者だったが、漢学に目覚め、学問を究めようと一日中、本を読んで過ごす。
町の先生になったり、神社の神官になったりと、好奇心のままに動く。
晩年、柳田國男は、自分の中に父の遺伝を感じてこう述べている。
「移り気な気質は父譲りで、そのおかげで、一生を幾つにも折って、常に新しく使うことができた。感謝している」
幼い國男は、虚弱体質。いつも母の後ろをくっついて歩き、同級生からバカにされ、仲間外れになっていた。
10歳のとき、家屋敷を売ることになり、二里ほど東の村に移る。
家が貧しく、11歳で里子に出された。
さびしい。家に帰りたい。
そんな孤独を埋めたのは、預けられた家にあった膨大な蔵書だった。
「本なら、いくらでも読んでいいよ」
家主に言われ、むさぼるように読む。
実家で禁止されていた大人の読み物も自由に読めた。
日本や中国の古典から、地理学、数学、物理学まで。
やがて家主が驚く。
國男は、そのほとんどの書物をひとつ残らず暗記していた。
12歳で兄に連れられて、初めて訪れた東京の景色を、國男は生涯忘れなかった。
朝まだ明けきらぬ、午前5時の本郷あたり。
通りのガス灯に灯りがともっていた。にじむオレンジ色の光。
それが都会の象徴に思えた。

民俗学の父・柳田國男は、幼い頃、家を転々とする。
13歳から2年間は、茨城県北相馬郡利根町布川に暮らす。
ここで、彼はある神秘的な体験をする。
兄と暮らす家の前に、綺麗な土蔵があった。
土蔵の前には二十坪ばかりの平地があり、数本の樹が植わっていた。
樹の下に、石の祠(ほこら)。
石の扉を開けたくて仕方がない。
おそるおそる、入ってみた。
そこに、ひとにぎりくらいの、美しい蝋石の珠があった。
石に埋め込まれている。
それは祖母が生前、自らの病が治るようにと、一日中、撫でまわしていたものだった。
春の日が差し込み、珠は輝いていた。
あまりの美しさに見惚れ、感極まり、思わず青い空を仰ぐ。
「ん? あれは…なんだ?」
空に、星があった。
澄み切った青空に、数十の星がまたたく。
いま、自分がどこにいて、なにをしているのか、意識が遠のいていく…不思議な浮遊感…。
突然、近くの森で、鴫(しぎ)がギー!と高い声で鳴いた。
急に我に返る。
もしあのとき、鴫が鳴いてくれなかったら、自分はどうなっていただろう。
鴫を鳴かせてくれたのは、祖母ではなかっただろうか。
この体験が、彼を民間伝承へと導いていく。
「この世には、自分が知らない現実が潜んでいる」。

柳田國男は、行く先々の村で、貧困にあえぐ農民の姿を目の当たりにした。
さらに飢饉が追い打ちをかける。
明治18年の頃だった。
町の有力な商家の前で炊き出しが行われた。
國男は、その様子をじっと見ていた。
食糧のない村人が、おかゆをもらうため、土瓶を持って並ぶ。
幼い子を抱えた母親、歩くのもやっとの男、目だけが異様に光り、ぎょろっとこちらを見る。
13歳の國男は、思う。
「貧しさとは、なんだろう」
「どうしてこういうことが、繰り返されるんだろう」
実家が狭く、喧嘩が絶えなかったこと、祠で神秘体験をしたこと、そして、飢饉であえぐ村人を見たこと。
勉強をすればするほど、それらが全てつながっていく。
「学問は、ひとを幸せにするためでなくてはいけない」
そう確信し、東京帝国大学法科を卒業したのち、農商務省農政課に勤務。
日本の農業の在り方について学びつつ、現状の調査をした。
島崎藤村や田山花袋、小山内薫らと、イプセン会をつくり、文学、文芸にも興味を示し、自らも執筆を始める。
暇を見つけては、日本各地を訪れ、伝承される民話を集めた。
柳田國男は、知っていた。
全ての物語は、ひとが暮らす土地に隠れている。
その物語にこそ、現実を知り、打開する先達の教えが宿っている。

【ON AIR LIST】
現実は見た目とは違う / 佐野元春&The Coyote Band
夜明け前 / Tokyo No.1 Soul Set
Cielo People (feat. Sam Gendel) / 笹久保伸(ギター)
遠野物語 feat.あんべ光俊 / 佐藤竹善

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと夏野菜のカレー

今回は、兵庫県で多く生産されている野菜、玉ねぎを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと夏野菜のカレー
カロリー
551kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【4人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • かぼちゃ
  • 200g
  • オクラ
  • 8本
  • パプリカ(赤)
  • 1/2個
  • 塩、こしょう
  • 適量
  • サラダ油
  • 大さじ2
  • 玉ねぎ
  • 1個
  • 豚ひき肉
  • 120g
  • カレールウ
  • 4皿分
  • 600ml
  • ごはん
  • 600g
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐす。パプリカは縦細切りに、かぼちゃは薄切りにする。
  • 2.
  • フライパンに油(大さじ1)を熱し、(1)とオクラを焼き、塩、こしょうで味付けする。
  • 3.
  • 玉ねぎはみじん切りにし、残りの油を熱した鍋でよく炒める。
  • 4.
  • (3)に豚ひき肉を加えて炒め、色が変わったら水を加える。沸騰したらルウを加えて煮溶かす。
  • 5.
  • 皿にごはんを盛りつけ、(4)をかけて(1)をトッピングする。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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