yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第百九十話 目に見える全てのものから学ぶ -【宮崎篇】作曲家 フレデリック・ショパン-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM OH!…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百九十話目に見える全てのものから学ぶ

宮崎市で、1996年から毎年開催されている音楽祭があります。『宮崎国際音楽祭』。
この春で第24回、4月28日から5月19日まで行われます。
名立たる演奏家が出演する中、ピアニスト・辻井伸行が奏でるのは、フレデリック・ショパン。
同時期に東京では、彼の師匠・横山幸雄が、ショパンの全240曲を3日間に渡って演奏する特別公演を開催します。
この春は、没後170年のショパンのムーブメントが、日本中を駆け抜けることでしょう。
わずか39年の生涯をピアノ曲の作曲に捧げた、ショパン。
彼の作曲には、彼自身の人生が色濃く映し出されています。
その一生のほとんどが、病との闘いと言っても過言ではありません。
晩年、痩せ細り、外出もままならない状態でも、曲を作ろうという情熱だけは失いませんでした。
友人の画家、ドラクロワの前での即興演奏。
先が続かず、途中でやめてしまったときのこと。
「どうした、フレデリック、続けてくれよ」
そうドラクロワが言うと、
「ダメだ、この世はこんなに色であふれているのに、僕には、光と影が同時に見えるだけなんだ。音で色を表現したいのに…」
と返します。
ドラクロワは、ショパンに言いました。
「光と影は、常に同時にあるものなんだ。それでいいんだ。その両方をいつも見つめていれば、必ず色彩はやってくる。そういうもんだ」
この言葉に励まされたショパンは、曲の続きを演奏しました。
見つめること。
この世のあらゆる出来事を、あるいは自分に起こった全てのことを、見つめて、見つめて、その中に色彩を探すこと。
それこそが、ショパンの音楽を裏打ちしているのです。
ピアノの詩人、フレデリック・ショパンが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

フレデリック・ショパンは、1810年、ポーランドのワルシャワに生まれた。
父は、16歳のときにポーランドに移住してきたフランス人。
文学をたしなみ、理知的で繊細。
貴族の家庭教師としてフランス語を教えた。
ある貴族の娘と恋に落ち、結婚。
フレデリックを授かった。
両親は、音楽をたしなんだ。
父は、バイオリンとフルート。
母は、ピアノを巧みに演奏した。
ショパンは、4歳の頃から姉や母にピアノを習う。
始めてすぐに、一度聴いた曲を完全にコピーできる能力で、まわりを驚かせた。
ピアノの下にもぐりこみ、母の演奏を聴くのが好きだった。
「ああ、体中に音楽が響く。一音一音が、ボクをふるわせる」
母は、寝る前にポーランド民謡を歌ってくれた。
その子守歌が彼の心の奥底にゆっくり積もっていく。
夜遅く、どこかの家からマズルカが聴こえてくると、窓に近寄り、いつまでも聴いていた。
彼の心に、ふるさとの音楽が沁みていった。
大事に育てられたショパンは、音楽だけではなく、文学、絵画にも才能の片鱗を見せた。
ショパンの父は、あらゆるジャンルにおいて教養を持つことが真の知識人の条件であり、将来、要職につくことができる最善の道だと信じていた。
息子がどんなに音楽で「神童」だともてはやされても、音楽だけに偏ることを良しとしなかった。
「いいか、フレデリック、大切なのは、いまおまえの目の前に見えているものを、公平に、正確に把握する力があるかどうかなんだ」

フレデリック・ショパンは、父の教えを守り、自分の才能をひけらかしたり、自慢するようなことはなかった。
8歳にして、演奏会でピアノを弾く。
会場は割れんばかりの拍手に包まれる。
その場に行くことができなかった母に、
「演奏はどうだったの? みなさんの反応は?」
と聞かれると、こう答えた。
「着ていたジャケットの、イギリス製の襟の評判がよかったよ」
学校では、快活でユーモアのセンスにあふれ、みんなに慕われた。
物まねがうまく、先生の特徴をとらえ、クラスメートを笑わせた。

似顔絵を上手に画くことができることでも有名だった。
ある日、授業中に落書きを画いていたのが見つかり、校長室に呼ばれた。
ひどく怒られるだろう…覚悟して部屋のドアをノックする。
校長は、ショパンが画いた担任教師の似顔絵を見て、こう言った。
「今度は、あれだ、私の似顔絵を画いてくれないか」
14歳の夏休みは、特に忘れられない思い出になる。
ワルシャワ郊外の、ある村にショートステイした。
初めて親元を離れる。
しかし、心細さはすぐに吹き飛んだ。
農民の子どもたちが大声で歌を歌っている。
大人たちも何世代も歌い継がれてきた民族音楽を楽しそうに演奏している。
深い緑の香りをかぎ、降り注ぐ陽の光を浴びて、ショパンは心の底から音楽を楽しむことを知った。
彼は即興でピアノを演奏して、地元の子どもたちと一緒に歌った。
彼は父に手紙を書いた。
「お父さん、僕は全く勉強などしていません。でも、音楽を楽しんでいます。僕は幸せです。そして、僕は祖国ポーランドの音楽が大好きです」

フレデリック・ショパンは、15歳にして本格的な音楽活動を始めた。
作曲は、常に聴くひとの気持ちを考えた。
聴衆が何をのぞみ、どんな気持ちになりたいか。
飽きさせない工夫は、彼の技術を高めていった。
作曲と即興演奏。
聴衆はその旋律に驚き、喜び、拍手を送った。
そんな絶頂の最中、病魔は少しずつ彼の体をむしばんでいった。
肺結核。
もっともっとたくさん学びたい。
自分にしか作れない曲を書きたい。
そんな情熱に水をさすように、病は執拗につきまとう。
でもショパンは、焦らなかった。
「いま、目の前にあること、見えるものを大切にしていけば、必ず道は開かれる」。
大学では文学と歴史の講義をとる。
ある教授は言った。
「創造とは、霊感によるものだ!」
ショパンは、思った。
「そうでもあり、そうでもない。確かに霊感は芸術の核になるものかもしれない。でも僕は、自分に起こる全てのことから学び、それを五線譜に置く。」
真摯に見つめることで湧き上がる独創性。
それこそが、彼を高みへと引き上げた。
フレデリック・ショパンの音楽が今もなお世界中のひとに愛されるわけは、彼の世界を見つめるまなざしが、ひときわ優しいからなのかもしれない。

【ON AIR LIST】
子犬のワルツ / ショパン(作曲)、横山幸雄(ピアノ)
「4つのマズルカ作品24」より マズルカ第15番ハ長調 / ショパン(作曲)、辻井伸行(ピアノ)
幻想ポロネーズ / ショパン(作曲)、横山幸雄(ピアノ)
華麗なる大円舞曲 / ショパン(作曲)、横山幸雄(ピアノ)

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけのスタミナ炒め

今回は、ショパンの出身国・ポーランドで主食として食べられている野菜、じゃがいもを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけのスタミナ炒め
カロリー
256kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • じゃがいも
  • 2個
  • アスパラガス
  • 3本
  • オリーブオイル
  • 大さじ3
  • にんにく
  • 2片
  • 塩・こしょう
  • 少々
  • しょう油
  • 大さじ1
  • 鷹の爪
  • 少々
  • ベーコン
  • 4枚
  • バター
  • 大さじ3
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけを小房にほぐし、じゃがいもは皮をむき一口大に切る。じゃがいもは耐熱容器に入れ、600Wのレンジに5分かける。アスパラガスは下半分の皮をむき、4等分にする。
  • 2.
  • フライパンにオリーブオイルとスライスしたにんにく、鷹の爪を入れ、弱火にかける。
  • 3.
  • 香りが出てきたら、鷹の爪を取り出し、すべての食材を(2)に入れて炒め、塩・こしょうをし、仕上げにしょう油とバターを加えて、味を調える。
  • recipe LIST

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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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