yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

第四百十一話 無欲に学び続ける -【医学の発展に貢献したレジェンド篇】ヴィルヘルム・コンラッド・レントゲン-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った命の闘いを知る事で、週末のひとときをプレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM大阪…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第四百十一話無欲に学び続ける

1895年にX線を発見し、第一回ノーベル物理学賞を受賞した、科学者のレジェンドがいます。
ヴィルヘルム・コンラッド・レントゲン。
第一次世界大戦によって傷ついた多くの兵士たちは、いわゆるレントゲン写真のおかげで、死をまぬがれました。
そして、発見から130年近く経った今も、X線によって救われている命があるのです。

医療の現場にここまでX線が広まった理由には、レントゲンの「無欲」があります。
彼は、X線を発見したとき、新聞記者に聞かれました。
「特許を申請されますよね? あなたは、大富豪になれます!」
しかし、彼はこう答えたのです。
「いいえ、特許など必要ありません。
そもそも、私がX線を発明したわけではないのです。
X線は、ただただ、そこにあったのですから。
これから、X線を研究したいと思う科学者、X線装置を作りたいと思う学者には、喜んで、私の実験資料を提供いたします。
私は、自分の研究を独占したいなどとはいっさい思わないのです」
そんなレントゲンの言葉に、嘘はありません。
彼は、ひたすら実験し、探究し、おのれの仮説を確かめたかったのです。
大金持ちになるより、名誉を得るより、自分がやった仕事に誇りと充実感を持つことができるか。
そこに幸せの秘密があると、レントゲンは知っていたのです。
また彼は、こんな言葉も残しています。
「いいですか、若い学生たちよ。
その仕事があなたに向いているかどうかは、人生の後半になってみないとわかりません。
だから、どんどん試せばいい。探せばいい。
必ず、見つかります。あなたにふさわしい仕事が」
若い頃に苦難を味わった彼だからこそ、そう言えたのです。
「無欲のひと」と称えられた伝説の物理学者、ヴィルヘルム・コンラッド・レントゲンが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

ドイツの物理学者、ヴィルヘルム・コンラッド・レントゲンは、1845年3月27日、プロイセン王国に生まれた。
父は織物工場を経営する資産家。母もオランダの商家の出身。裕福だった。
父44歳、母39歳で生まれた、待望の男の子。
両親から溺愛されて育つ。
プロイセンでは革命運動が激化。
一家は、母のふるさと、オランダに逃れた。
大きな屋敷には、細かい細工を配した調度品や高価な工芸品が、所狭しと並んでいた。
レントゲンは、自然豊かな環境の中、伸び伸びと育つ。
父は手先が器用で、工作が趣味。
ミニチュアの模型やジオラマを作っては、レントゲンを喜ばせた。
お父さんを真似て、工作に夢中になるレントゲン。
手先の器用さは、のちに、実験道具を作ることに生かされるが、このときはまだ知る由もない。

レントゲンに最初の挫折が待ち受けていたのは、全寮制の工芸高校2年生、17歳の冬のことだった。
天真爛漫で自由奔放にふるまうレントゲンを、ふだんから気に食わないと思っている教授がいた。
ある日、同級生が黒板にその教授の落書きを書いた。
落書きを見つけた教授は、激怒する。
「これを画いたのは、誰だ! おまえか、レントゲン!」
「いえ、ボクではありません」
「じゃあ、誰だ?」
「言いたくありません」
同級生をかばったレントゲンは、さらに教授の怒りを買った。
結局、退学に追い込まれる。
それでも、彼は、同級生の名前を口にしなかった。
彼を待っていたのは、長く、暗い、苦難のトンネルだった。

X線を発見した科学者、レントゲンは、同級生をかばい、工芸高校を退学になる。
大学進学の道を断たれたと、失意の中にいたが、「大学入学資格試験」があることを知る。
独学で、必死に学ぶ。もともと成績は優秀だった。
1年間、勉強漬けの毎日。
ようやく試験を受け、一次の筆記は、ほぼ満点の成績だった。
あとは、口頭試験を受けるのみ…しかし。
面接官を見て、レントゲンは、驚きで体が震えた。
そこに、彼を退学に追い込んだ教授がいた。
教授は、いじわるな質問を繰り返し、レントゲンは、不合格。
運命を呪った。
「どうして、こんなことになるんだ。
神はボクに、勉強の機会を与えない、おつもりか!」
それでも彼は、勉強を諦めなかった。
オランダの大学で、授業を聴講。
機会を奪われれば奪われるほど、学ぶことが好きになる。
やがて、スイスのポリテクニウムという、工科大学の前身となる専門学校の存在を知る。
そこに入れば、もっと高度な理系の勉強ができる。
必死で受験勉強をする。
受験日をひかえたある日、彼の目を異変が襲う。
重度の角膜炎。
オランダからスイスに行けば失明すると、医者に宣告を受ける。
道は、再び閉ざされた。

再び、進学の道を断たれたレントゲンは、どうしても諦めきれず、ポリテクニウムに嘆願書を送った。
医師の診断書、これまでの成績表や、学問への思いをつづった手紙、再試験を実施してもらえないかという叫びにも似た願いを封筒に詰めた。
合格の知らせが届いたとき、レントゲンは、泣いた。
苦難が襲っても、決して涙を見せなかった彼が、泣いた。
「これで、思い切り科学に向き合うことができる。
もう、後戻りはしたくない」

1895年、50歳のレントゲンは、ドイツのヴュルツブルク大学の総長になっていた。
しかし彼は、毎日実験室に通い、日々の勉強を休むことはなかった。
11月8日、夕食の時間になり、実験室の電気を消した。
ガラス管の近くにある蛍光板が青く光っている。
実験装置のスイッチを切り忘れていたからだが、ガラス管は黒い紙で覆ってある。
いったい、何の光なのか。
ガラス管と蛍光板の間に、そっと手を入れた瞬間、とんでもないものが映った。
それは、手の骨…。
こうして、レントゲンは新種の放射線の存在を発見した。
それは偶然のようで、偶然ではない。
たゆまぬ努力の証。
彼は苦難の日々を体験したからこそ、無欲に学問に向き合うことができた。

「私は、何も考えなかった。ただ実験し、ただ、探究した」
ヴィルヘルム・コンラッド・レントゲン

【ON AIR LIST】
アドレナリン / 山崎まさよし
ひそやかな涙 / シューマン(作曲)、アルブレヒト・マイヤー(オーボエ)
X線もおどろく恋 / あがた森魚

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけと冬瓜のそぼろあんかけ

今回は、今が旬の食材、冬瓜を使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけと冬瓜のそぼろあんかけ
カロリー
173kcal (1人分)
調理時間
20分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • 冬瓜
  • 1/8個(正味300g)
  • 鶏ひき肉
  • 100g
  • しょうが
  • 1片
  • 【A】だし汁
  • 400ml
  • 【A】しょう油
  • 大さじ1
  • 【A】みりん
  • 大さじ1
  • 【A】酒
  • 大さじ1
  • 片栗粉
  • 大さじ1
  • 糸唐辛子
  • お好みで
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、冬瓜は種とわたを取り、皮を厚めに剥き、食べやすい大きさに切る。しょうがはみじん切りにする。
  • 2.
  • 鍋に冬瓜、鶏ひき肉、しょうがと【A】を入れ、火にかける。
  • 3.
  • 沸騰後、アクを取り、フタをして弱火で15分ほど煮る。
  • 4.
  • 冬瓜に火が通ったら、霜降りひらたけを入れ、フタをして3分ほど煮る。
  • 5.
  • 同量の水で溶いた片栗粉でとろみをつける。
  • 6.
  • 器に盛り、お好みで糸唐辛子を飾る。
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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドラマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、『ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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