yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ 第百四十二話 日々の努力を怠らない -【奈良篇】日本画家 小倉遊亀-

yesとは?

  • 語り:長塚圭史
  • 脚本:北阪 昌人

『自分にyes!と言えるのは、自分だけです』
今週あなたは、自分を褒めてあげましたか?
古今東西の先人が「明日へのyes!」を勝ち取った 命の闘いを知る事で、週末のひとときを プレミアムな時間に変えてください。
あなたの「yes!」のために。

―放送時間―
TOKYO FM…SAT 18:00-18:30 / FM OH!…SAT 18:30-19:00
FM長野…SAT 18:30-19:00 / FM軽井沢…SAT 18:00-18:29

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第百四十二話日々の努力を怠らない

あなたは、一本の梅の木を見て、何を思いますか?
立派な枝ぶりに目がいくひともいれば、咲いた花の香りにうっとりするひともいるでしょう。
日本画家・小倉遊亀(おぐら・ゆき)は、庭の梅の木を見て、こう言いました。
「梅は、何ひとつ怠けないで、一生懸命生きている。私も、怠けていてはいけない」
小倉は梅が好きでした。
桜ほどの華やかさはないけれど、人間の目線に寄り添い、けなげな佇まいを崩さない。
鎌倉にアトリエを構えるとき、竹やぶを切り開きました。
伐採しているうちに、一本の梅の木が顔をのぞかせます。
樹齢100年ほどにも思える、古い木です。
小倉は、その木を守りたくて、植木屋さんを呼びました。
「この老木を、なんとか助けてあげてほしいんです」
以来、庭に梅の木は残り続けました。
彼女は毎朝、アトリエの窓をあけて、挨拶するのが日課だったといいます。
このエピソードは、小倉の画風や生き様を色濃く物語っています。
こつこつと、ただ絵を画き続ける。
画き続けることでしか、たどり着けない場所があるから。
仕事とは、桜のように、決して華やかなものではありません。
日々の積み重ね、なんでもない日常の過ごし方にこそ、仕事の難しさと喜びがあるのです。
小倉にとって、奈良女子高等師範学校、現在の奈良女子大学に通った4年間が、のちの画家としての人生を決定づけました。
そこで恩師に言われた言葉。
「自分のために絵を売るな」「へつらうな」。
そして、最も彼女の心を強くとらえたのは、こんな助言でした。
「もっとよく自然の真髄をつかみなさい」
105歳で亡くなるまで、努力を怠らなかった日本画家・小倉遊亀が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

日本画家・小倉遊亀は、1895年滋賀県大津市に生まれた。
遊ぶ亀と書いて、遊亀(ゆき)。本名は、ひらがなで「ゆき」だった。
2歳になる頃、父の仕事の関係で大阪に移り住む。
家のすぐ近くにお御堂があった。
母は遊亀を背中におぶって、境内まで父を迎えにいった。
遊亀は母の背中から、お座敷通いをする芸者さんの姿を見ていた。
艶やかな着物、美しい島田髷(しまだまげ)。
目の前をさっと通る姿がまるでスローモーションのように映る。
「なんて綺麗なんだろう…」
幼な心を、とらえて離さない。
家に帰ると、母にせがんだ。「ねえ、あれ、画いて!あれ、画いて!」
半紙に母が墨で芸者を画くと、「ちがう!ちがう!そんなんじゃない!」と反発した。
「だったら、自分で画きなさい」
母が言ったひとことに、遊亀は初めて絵筆を持った。
おそるおそる、白い紙に筆を置く。
驚いた。頭の中にあるものがうまく再現できない。もどかしい。
何度やっても、うまくいかない。「ちがう、ちがう、ちがう!」
のめりこんだ。何度も画いた。母は石盤にチョークを与えた。
これなら何度でも消しては画きなおせる。
こうして、ひとりの少女が、女流画家への道を歩きはじめた。
ただその道は、細くて険しい茨の道だった。

日本画家・小倉遊亀は、幼い頃から絵の才覚をあらわした。
でも、高校時代、図画の先生に美術大学への進学を勧められても、断った。
絵描きには、なりたくない。そう思った。
学校の成績は優秀。首席で卒業して、奈良女子高等師範学校に入学した。
学科は、国語漢文部。選修科目に図画を選んだ。
そこで運命的な出会いがあった。
国語漢文部教授の水木要太郎と、図画教授の横山常五郎。
二人は小倉の才能を見出し、のちに、画壇の大家、安田靫彦を紹介することになる。
奈良で小倉は、日本の歴史を学ぶとともに、伝統的な書や絵画、器などに触れることができた。
ある日、「素晴らしいものを拝ましてあげるからおいで」と教授の水木に呼ばれた。
大和の人里離れた一軒の平屋。
中に入ると、奥の座敷に通される。そこに掛け軸がかかっていた。
安田靫彦が画いた、聖徳太子だった。
お軸の前には、座布団と絵の具や筆が用意されている。
水木は何も言わず、出ていった。
残された小倉は、一心不乱に模写をした。
「すごい、この絵はすごい。とても再現できない。これが、本物の絵というものなんだ…」
体中がふるえた。絵を極めてみたい。
そんな激しい欲求が体の奥からあふれてきた。
安田先生の弟子になりたいという、途方もない夢を描いた。

日本画家・小倉遊亀は、奈良女子高等師範学校を卒業すると、教師になった。
絵だけでは食べていけない。
先生をしながら、絵の修行をするつもりだった。
あるミッションスクールで絵を教えた。
学校はキリスト教だったが、クリスチャンではないので教会に足を踏み入れなかった。
ある日、校長のミス・カムバルスに呼ばれる。
教会に入らないことを怒られるのだと思い、ビクビクして校長室のドアをノックした。
中に入ると、校長は満面の笑みでこう言った。
「あなた、絵、描きますね。牡丹の絵、毎日毎日、描きますね。牡丹の花、神様。だから、あなた描く絵、神様の絵。あなた、毎日毎日、神様を描いているのです。教会に出ないこと、なんでもない。なぜなら、あなたは毎日、神様に逢ってるから」
涙があふれそうだった。絵を画くことは、神様に逢うことなんだ。
小倉は、ようやく気がついた。
彫刻家が、ひとのみひとのみ仏像を彫るように、絵を画くということは、神様を画くということなんだ。
猫を画いても、子どもを画いても、器を画いても、梅の花を画いても、それらは全部、神様を画くということ。
だからひと筆ひと筆、怠けることはできない。
だから休むことは許されない。
少しでもうまくなる。自分の殻をやぶり、成長する。
わずかでも前に進むためには、地道な日々の努力しかない。
そうして小倉遊亀は、亡くなる直前まで絵筆を握り続けた。

【ON AIR LIST】
Both Sides, Now / Ann Sally
ミルク / Chara
The Climb / Miley Cyrus
窓 feat.矢野顕子 / 大橋トリオ

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今週のRECIPE

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霜降りひらたけの柳川風

今回は、日本画家・小倉遊亀の故郷、滋賀県大津市の特産野菜でもある、ごぼうを使った料理をご紹介します。

霜降りひらたけの柳川風
カロリー
252kcal (1人分)
調理時間
15分
使用したきのこ
霜降りひらたけ
材料
【2人分】
  • 霜降りひらたけ
  • 1パック
  • ごぼう
  • 30g
  • 豚バラ肉
  • 50g
  • 2個
  • 【合わせ調味料】
  • 160cc
  • しょう油
  • 20cc
  • みりん
  • 20cc
  • 20cc
作り方
  • 1.
  • 霜降りひらたけは小房にほぐし、豚肉は一口大に切る。
  • 2.
  • 中火のフライパンにささがきにしたごぼう、豚肉、霜降りひらたけの順に入れて【合わせ調味料】を回しかけ5~10分煮る。
  • 3.
  • ごぼうが柔らかくなったら溶いた卵を流し入れて火を止め、蓋をして5分程蒸らす。
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番組へのメッセージ

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PROFILE

  • 長塚 圭史

    語り:長塚 圭史

    1975年生まれ。東京都出身。96年、演劇プロデュースユニット「阿佐ヶ谷スパイダース」を旗揚げ、作・演出・出演の三役を担う。08年、文化庁新進芸術家海外研修制度にて1年間ロンドンに留学。帰国後の11年、ソロプロジェクト「葛河思潮社」を始動、三好十郎作『浮標(ぶい)』を上演する。近年の舞台作品に、『鼬(いたち)』、『背信』、『マクベス』、『冒した者』、『あかいくらやみ~天狗党幻譚~』、『音のいない世界で』など。読売演劇大賞優秀演出家賞など受賞歴多数。
    また、俳優としても、NHK『植物男子ベランダー』、WOWOW『グーグーだって猫である』、WOWOW『ヒトリシズカ』、CMナレーション『SUBARUフォレスター』など積極的に活動。

  • 北阪 昌人

    脚本:北阪 昌人

    1963年、大阪生まれ。学習院大独文卒。
    TOKYO FMやNHK-FMなどでラジオドマ脚本多数。
    『NISSAN あ、安部礼司』(TOKYO FMなど全国FM37局ネット)、『ゆうちょ LETTER fo LINKS』(TOKYO FMなど全国FM38局ネット)、『世界にひとつだけの本』(JFN)、『AKB48の私たちの物語』(NHK-FM)、『FMシアター』(NHK-FM)、『青春アドベンチャー』(NHK-FM)などの脚本・構成を担当。『プラットフォーム』(東北放送)でギャラクシー賞選奨、文化庁芸術祭優秀賞受賞。『月刊ドラマ』にて、「ラジオドラマ脚本入門』連載中。
    主な著書に『世界にひとつだけの本』(PHP研究所)、『えいたとハラマキ』(小学館)がある。

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NEWS

特別版『オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!』
常盤貴子さん長塚圭史さん
風も、雨も、自ら鳴っているのではありません。 何かに当たり、何かにはじかれ、音を奏でているのです。
誰かに出会い、誰かと別れ、私たちは日常という音を、共鳴させあっています。
YESとNOの狭間で。
あなたは、自分に言っていますか?
YES!ささやかに、小文字で、yes!
毎週土曜日、明日(あした)への希望の風に吹かれながら、自分にyes!と言ったひとたちの物語を朗読でお届けしている番組『yes!明日への便り』。 1月8日は、その特別版「オードリー・ヘップバーンが教えてくれる、明日へのyes!」をお送りいたします。
2018年に没後25年を迎える稀代の大女優オードリー・ヘップバーンの波乱万丈な人生―女優になるまでの波乱に満ちた半生、輝かしい女優時代、ユニセフ親善大使として世界中の子どもたちに尽くした晩年までを、 女優の常盤貴子さんが演じます。
長塚圭史は「語り」の部分やオードリーの夫、また彼女の人生に影響を与えた映画監督の役を担当します。女優、オードリー・ヘップバーンが、私たちに教えてくれる、明日へのyes!とは?

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