yes!~明日への便り~presented by ホクトプレミアム 霜降りひらたけ

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ストーリー

第453話 準備をおこたらない
-【福井にまつわるレジェンド篇】探検家 ロイ・チャップマン・アンドリュース-

[2024.05.04]

Podcast 

福井県は、恐竜王国として有名ですが、今からおよそ100年前に、世界で初めて恐竜の卵を見つけた探検家の名前をご存知でしょうか。
ロイ・チャップマン・アンドリュース。
映画『インディ・ジョーンズ』のモデルとも言われている彼が、恐竜探検隊の隊長として中央アジアに出かけたのは、1922年のことでした。
それから60年後の1982年、福井県勝山市で、白亜紀前期、1億2千万年前のワニ類化石が発見されました。
ここから、福井県の恐竜化石発掘の歴史が始まり、日本のおよそ8割の恐竜の化石が、福井県で見つかっています。

なぜ、福井県で多くの恐竜の化石が発掘されたのか。
主な理由は、二つです。
ひとつは、恐竜が生きていた頃に、陸、川や湖などでたまった地層の中でも、骨などが特にたくさんかき集められた部分、いわゆる「ボーンベッド」を発見することができたこと。
化石が出やすい、「手取層群」が広く分布していたのです。
さらに、福井県が早くから大規模で集中的な発掘を粘り強く続けてきたことも、大きな要因としてあげられます。
福井駅西口に降り立てば、たくさんの恐竜の動くモニュメントが出迎えてくれます。


子どもから大人までロマンを感じる恐竜の世界に魅かれ、探検に一生を捧げた男、ロイ・チャップマン・アンドリュースは、映画のように、クジラ、オオカミ、盗賊に襲われ、危機一髪でまぬがれてきました。
どんなに危険な目にあっても、探検をやめることはありませんでした。
彼は、好きだったのです。
未知の世界に出会うことが。
そして、新しい自分を発見することが。
アンドリュースは、「冒険」という言葉を嫌いました。
「大切なのは、準備。探検には準備が必要だ。でも、冒険には往々にして準備がない」
大胆であり、繊細。
そこに探検家としての矜持があったのです。
恐竜の生態をひもとく扉を最初に開いた賢人、ロイ・チャップマン・アンドリュースが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?

世界で初めて恐竜の卵を発見した探検家、ロイ・チャップマン・アンドリュースは、1884年1月26日、アメリカ合衆国・ウィスコンシン州で生まれた。
家の近くには、森があり、川が流れ、小高い丘があった。
アンドリュースは、幼い頃から探検が大好き。
毎日、森に出かけ、秘密基地をつくった。
時に道に迷い、自宅に帰れず、村中のひとに探してもらう。
父は叱らなかったが、暖炉の前の椅子に腰かけ、アンドリュースにこう言った。
「必ず戻る道を用意しておくのが、真の探検家だ。
命を粗末にするのは、探検家とは言わない」
森に出かけるのを止めるどころか、幼い我が子に、父は、銃の扱い方、射撃を教えた。
獲って来た獣をナイフでさばく様子も見せた。
アンドリュースは、自然の中で生き抜く術を学んでいく。
学校の中の誰よりもサバイバルについて詳しいという自負が芽生えた。
そんな彼の自信を打ち砕く出来事が起きたのは、大学2年の時。
友人たちと、ロックリバーの川下りに挑戦した。
一緒にクルーになった同級生のモンティ・ホワイトとは息が合い、お互いが相棒として信頼しあっていた。
突然の悪天候。
大雨を受け、川が濁流と化した。
彼らが乗った船は転覆。
親友・モンティは、帰らぬひととなった。
奇跡的に助かったアンドリュース。
川面から出たモンティの最期の手が、目に焼き付いて離れなかった。
アンドリュースは思い知る。冒険は、大切な命を奪う。

探検家・ロイ・チャップマン・アンドリュースは、大学を卒業すると、剥製を独学で学び、それでお金を稼いだ。
稼いだお金を持って、ニューヨークにやってくる。
目的はただひとつ、ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館で働くためだ。
幅広い知識と熱意で、なんとか「剥製部門」の研究員にもぐりこむことができた。
そのときはまだ誰も、彼がのちに自然史博物館の館長になる人間だとは思わなかったに違いない。
旅に出ては、さまざまな骨、石、標本を持ち帰り、展示品にした。
獲物を求めるようなスタイルは、まわりから「ハンター」に見えた。
やがて彼に運命的な出会いが待っていた。
古生物学者として名高い、ヘンリー・フェアフィールド・オズボーン博士。
当時、オズボーン博士は、人類の起源が中央アジアにあると提唱していた。
アンドリュースは、師匠の学説を証明するため、ゴビ砂漠に向かう。
目的はただひとつ、哺乳類の化石だった。
40名の探検隊員、75頭のラクダ、そして5台の自動車。
アンドリュースは、探検隊の隊長に任命された。

ロイ・チャップマン・アンドリュースは、幾度かの調査で、中央アジアへの探検旅行の手ごたえをつかんでいた。
当時、モンゴルは難攻不落の土地。
過酷な寒暖差、ゴビ砂漠、広大な平原に鉄道はなかった。
そこでアンドリュースが選んだ手段は、自動車だった。
ラクダか馬が最適だと思われていたが、彼は自動車に運命を託す。
5台のクルマで5000キロ?
無理だと誰もが思う。
でもアンドリュースは、食料や燃料はラクダで運び、キャラバン隊と連携すれば、乗り切れると確信した。
これまでの体験が生きていた。
大切なのは、準備。
自分の好きを貫くことも、結局、準備が必要だった。
人生や仕事も同じだと、彼は悟った。
何も怖れることはない。
最良の準備をして、それでダメなら仕方ない。
こうしてアンドリュースは、恐竜の卵の第一発見者として、名を残すことができた。

「私は、探検家になるために、この世に生を受けた。
探検家になることに迷いはなかった。
好きなことだったし、それ以外、私は何もできなかったから。
ただ、好きを守るために、学び、歩き、準備した」
ロイ・チャップマン・アンドリュース


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