今週は、日本に古来から伝わる、森の木を、木材・建築材として利用する優れた技術「木組み」のお話です。
木組み…つまり釘などを使わず、木だけで組み合わせてお家の骨組みを作る技術。日本の伝統的な建築で用いられてきた技術です。
東京の西早稲田に一昨年オープンした、「木組み博物館」の館長で、一級建築士でもある谷川一雄さんにお話しをうかがいました。

◆木組み博物館をつくった理由とは
高橋:はじめて木組み博物館に来たんですが、入った瞬間に木のいい香りがして、たくさん切り株や木組みが置いてあって、どうしてこんな博物館をつくろうと思ったんですか?
谷川:自分は建築学科を出て40年間、伝統木造建築の施工管理に携わってきたんですが、そのなかで、日本の伝統建築を立てたいという人が少なくなっていて、職人さんも少なくなっていて、材料なんかも少なくなってきているということをすごく感じていました。そこで、自分に何ができるかなと思ったときに、いろんな現場で集めた物があったものですから、それを一般の人に見ていただいて、日本の伝統木造建築の技術と文化を理解してもらいたいなっていうのが最初のきっかけです。
 名前が「木組み博物館」ですから、日本に古来から伝わる木組みを、はずしてみたり、組み立ててみたりして、実際に手にとって見てもらいたいと思いました。それに関連して、左官屋さんが壁を塗ったりだとか、漆を塗ったりだとか、彫刻をしたりだとか、いろんなことがありますから、付随するいろんなものも一緒にあわせて見ていただきたいなと思っています。

高橋:「木組み」っていうと、宮大工さんの技術で、釘を使わずに組んでいくというような簡単な理解しか無いんですが、どういうものか説明して頂いてもよろしいですか?
谷川:1300年前に大陸から朝鮮半島経由で入ってきたものとか、あるいは直接唐から入ってきたものが奈良のお寺など、いっぱいあるわけなんですが、それとは別に富山県の桜町の遺跡で、4000年前の木組みが発見されています。縄文時代ですからね。日本人が古来から持っている技術というは、ここからスタートしてるのかと思ったりしてるんです。ですから、日本固有の技術が4000年前からあったんじゃないかと思っているんです。桜町遺跡の場合は、木に穴を開けたものや掘ったものなど、色々なものが出てきて、それが今現在あるものの元になっているものがかなりの部分あるんじゃないかっていわれているんです。




「木組み博物館」はあくまで日本の伝統的な建築とその技術を展示する博物館です。  その中でも代表的で親しみやすい「木組み」を博物館の名前にしたんだそうです。
 展示されている木組みはおよそ40種類。実際には4000種類ほどあるそう。そして、展示されている40種類ほどの木組みの中に、特に目を引く展示がありました。

◆宮大工に代々伝えられる言葉
高橋:いま目の前にすごく大きな木組みがあるんですが、これはなんですか?
谷川:これは薬師寺の三重塔なんです。初層部分の軒の下の「枡組」っていうものです。普通でしたら足場に登らないと見れないものが、ここでは目の前で見れます。なおかつ、触っていただけます。釘は一本も使ってないです。ですから、ちょっと揺すってもらうと…
高橋:ああ、ちょっとキシキシという音がしますね。組み合わせ方が複雑ですね。この、いま私が見ている木組みをつくった、八田さんという方は?
谷川:八田さんというのは宮大工の棟梁なんですが、西岡常一さんという有名な棟梁のもとで西塔の工事があったときに携わったんです。西岡常一さんは法隆寺の宮大工で、20年前に亡くなったんですが、宮大工の神様みたいな人ですね。
法隆寺の大工さんに伝わる、いろんな口伝があるんですが、その中の言葉で、「塔組は木のくせ組、人のこころ組」というのを西岡さんがよく言ってました。木というのは真っ直ぐな木だけではなく、ねじれている木とかいろいろありますよね。右にねじれた木ばっかりで組んだら、みんな右にねじれて倒れてしまいます。ですから、右にねじれている木があったら、こんどは左にねじれている木を使って造っていきなさいということです。また、それを造るにあたっては、色んな人が関わります。大工さんだとか、左官屋さん、屋根屋さん。そういう、人の心も組んであげないと、できませんよっていうことなんです。
 そういうのが10項目くらいあって、ほかには例えば、「木を使うときは、山を買え」とか。一本一本買うのではなくて、山全体を買って、生えている方向で使いなさい。南向きの木は建築材料になっても南向きで建てなさいとか、そういうお話がいっぱいあるんです。それを、この人が後継者と決めたときに口伝で伝えるんです。



そういう宮大工さんの技術や、言葉や、心を後世に伝えようと博物館を開いた、館長の谷川さん。ご自身もかつて、建築会社で神社仏閣の再建事業に関わって来たといいます。
神社やお寺を再建をする時に、強度などをテストするために、「木組みの部分模型」を作るそうなのですが、そのテスト用の木組みの模型が、この博物館で展示されています。その中には、博物館のすぐお隣にある神社ゆかりの木組みもありました。

◆滑り勾配
高橋:真ん中のこの大きい木組みは、丸い柱に十字に木組みがされていますが、これはなんですか?
谷川:これは、この博物館の隣にある穴八幡宮の随神門の一階部分の柱の頭の木組みなんです。これは実物の大きさです。柱の太さは直径30センチあります。「滑り勾配」といいますが、ここが斜めになってますよね。で、上が広くて下が狭くなっています。要するに、滑って入っていくんですね。
高橋:広いところから、だんだん狭いところに入るから、最後、キュッとなって動かなくなるんですね。
谷川:これは室町時代あたりにあったものを改造したんです。重要文化財を修理解体すると、工事報告書というものを作るんですが、木組みは1300〜1500種類くらいあるそうなんです。そのなかの一つにこういうのがあったんです。
高橋:昔、朝鮮半島からやってきたときよりも、日本の宮大工さんが組み方を増やしていっているんですか?
谷川:そうですね。最初の頃は、材料もいっぱいあったので、木組みがなくても組んでいけたようなところがあったんですが、だんだん材料も少なくなり、建物も大きくなっていくと、材料を足さないといけない。材料が細いから、しっかり組まなくてはいけないっていうことで、木組みもいろいろ改良されていった。あと、大工さんの腕比べなんかもあって凄いものになっていたんだと思うんですけどね。


今回のお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き「木組み博物館」のお話です。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Bang Bang / Mani
・輪廻ハイライト / 椎名林檎

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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