みらい図鑑

VOL.230「職人技が光る、チョークボードバインダー」

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板の上に仕掛けたエサに触れたネズミを、
バネの反動ではさみ込む装置、「ねずみ捕り板(ばん)」。

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昔ながらの罠に使われている”強いバネ”をほとんどそのまま使って、
ある文房具が作られています。

それは、紙を挟む「バインダー」。

ボードの部分は、表も裏も、チョークで書き込めるように作られていて、
メッセージボードやお店の看板などにも活躍。

シンプルなデザインと、耐久性に優れたバネが評判を呼んでいます。

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この「チョークボードバインダー」を作っているのは、
いまなお「ねずみ捕り板」を作っている職人さん。

ひとつひとつ手作業でバインダー用に改良して、クリップを取り付けています。

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手掛けているのは、新潟県三条市にある生活道具のブランド、
「folk product(フォルク・プロダクト)」。

代表の鈴木日富(すずき・ひとみ)さんのお話です。

「ねずみ捕り板は、バネという原始的な機能を持ったものですが、
とても魅力的な道具なので、
バインダーのクリップという形状に変えていただいて、取り付けてもらっています。」

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「ねずみ捕り板」の“技”が活かされた、チョークボードバインダー。
全国各地の職人の技を、
もっと多くの方に知ってほしい、と鈴木さんは話します。

「自分も職人だったんですが、職人って、基本的にモノを多く語らないと思うんですが、
やはり、出来たものが、往々に語っていると思うんですね。
本当に良いものは、ちゃんと、使い続けられて、
生き残って、今でも使われているものが本物だと思うんですね。」

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オシャレなだけではなく、機能性も兼ね備えたチョークボードバインダー。
シンプル・イズ・ベストは、職人魂の証ですね。

VOL.229「蚊遣り豚」

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蚊取り線香を焚く豚の器、「蚊遣り豚 (かやりぶた)」。
江戸時代から続く、古き良き、日本の夏の風物詩です。

最近では見かける機会が減ってきましたが、
三重県・菰野町にある、「万古焼(ばんこやき)」の窯元のひとつ、
「松尾製陶所(まつおせいとうじょ)」では、今も「蚊遣り豚」を作っています。

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三重県四日市市の代表的な地場産業で、
指定無形文化財に指定されている「万古焼」。

耐熱性の特徴を活かした急須や土鍋とともに、「蚊遣り豚」も有名です。

「松尾製陶所」の蚊遣り豚は、線香が出し入れしやすいように、ひとまわり大きいのが特徴。

ポピュラーな形の他にも、パカっと蓋が開くような「座り豚」や、
ミニ線香の入る「ミニ豚」も製造しています。

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菰野町の「万古焼」を若い世代にも伝えたい、と
「松尾製陶所」では、地元の小学生たちに、授業の一環として土に触れる機会を作っています。

「松尾製陶所」、二代目の松尾徹也(まつお・てつや)さんのお話です。

「松尾製陶も、小学校の工場見学というのか、見学コースに入れてもらっているんですね。
実際に見て、触ってもらうと、
“後を継ぎたい”、“ぼくもやりたい”と言ってくれます。」

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「万古焼」の後継者不足が深刻ななか、
その伝統を守っていくためにどうすれば良いか、
若い人に職人になってもらうには、、、と、日々考える松尾さん。

「実際、大きくなったら、やりたいことも変わると思いますが、
小学生の頃に触った経験があると、何かの機会に、
“あ、小さいときに土に触れたな “と思い出しますよね。
どのように伝統を守っていくかということは、大事なことだと思います。」

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松尾さんは、「蚊遣り豚」を作って30年。
少しずつ遊び心を加えることで、若い世代にも関心を持ってもらえたら、と、
毎年、模様を変えながら、新作を作り続けています。

豚の姿を見てほっとした気分になり、線香の香りで夏の情緒を感じる「蚊遣り豚」。
世代を越えて愛される日本の文化が、この先も続くといいですね。
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