三協フロンテア presents The Starters(ザ スターターズ)

パーソナリティ ユージ・吉田明世20代~30代の若手起業家をゲストに迎え、
彼らがどんな発想や未来への展望を持ってブレイクスルーを起こそうとしているのかお話を伺います。
高い意識とモチベーションで社会に風穴を開けようと取り組む彼らの話が、
「あなたも、世の中を変えられる!」という、
朝、仕事へ向かうビジネスパーソンのやる気のカンフル剤になることを目指してゆきます。

Guest ゲスト

2018.10.02

半歩先の未来を考えたものづくり

矢島里佳
株式会社 和える
代表取締役
矢島里佳
ものづくりだけでなく、原材料供給にも目を向けて

先週に続いてスタジオにお越し頂いたのは、
株式会社 和える 代表取締役 矢島里佳さん。1988年 東京生まれ。
9歳の頃から全国を回り、大学時代に自ら企画した「日本の伝統産業の職人に出逢う」
という企画で旅行会社の会報誌の執筆・取材を行うなど、
日本の伝統文化・産業の情報発信を始めました。
この経験を経て、「日本の伝統を次世代につなぎたい」という想いから起業を考え、
学生ビジネスコンテストに出場。優秀賞を受賞し、その資金を元に
大学4年時の2011年3月「株式会社「和える」を創業。
赤ちゃん・子どもたちへ日本の伝統や先人の智慧文化をつなぐ
様々な商品・サービスの提供で、注目を集めています。


先週、“0から6歳の伝統ブランドaeru”の
『こぼしにくいコップ』を紹介しました。
全国の伝統産業の職人が作ったコップなんですが、
陶磁器やガラスは、子どもが割ってしまう心配もあります。
この点について考えをうかがいました。

「和えるでは、『こぼしにくい器』や、
 『こぼしにくいコップ』などを作っており、これらは、
 全国の職人さんに陶器や磁器や漆器など、
 各地の特色を活かしたいろんな素材で作っていただいています。
 特に陶磁器やガラスは落としたら割れやすいもの。
 だからと言って、割れやすいから子どもに与えないのではなくて、
 割れるということを学ぶことも、お勉強のひとつ。割って初めて、
 こういうふうに扱うと割れるのだと学ぶことができるのです。
 大人がその貴重な機会を奪ってしまうと、
 子どもたちが学ぶ機会を逸してしまいます。
 そうではなくて、割れてしまったら「お直し」という方法があることを
 伝えることが大切だと私たちは考えています。
 日本には、職人さんによる伝統のお直しの技法、
 「金継ぎ」、「銀継ぎ」があります。
 割れたり欠けたりした部分を漆で接着して、そこに金や銀を施すことで、
 新しい表情が生まれ、再び使えるようになるのです。
 そして、大人になった時、
 子どものころから大切にしてきたコップで、お酒を飲みながら、
 以前お直しをしたときのことなどを、思い出すこともあるかもしれません。
 和えるでは、このように、伝統的なお直しの技術と共に、
 ものを大切に扱うという日本の精神性も含めて、次の世代のお伝えしたいという
 想いで、お直し事業を行っております。」

こうしたお直し事業の裏には、ある秘めた想いがあると言います。

「会社として、利益を上げることを一番優先するとお直しをせず、
 新しいものを購入いただいた方が良いですよね。
 しかし、和えるは、利益を第一に追求して生まれた会社ではなく、
 「伝える」ということを最も大切にしています。
 小売業ではなく、ジャーナリストの精神を持って
 日本の伝統を次世代に伝えていきたい。
 短期的な利益を考えて、急成長をするのではなく、
 今はビジネスという手法を用いて、
 長く緩やかにこの取り組みを継続していくことが大事なのではと考えています。
 半歩先の未来を考えて行動すると実は今の私たちにとっても、社会にとっても、
 すごく心地よい結果がまれるのではないかということは、
 創業からこの8年継続してきたことで感じています。」

最後に、今後のビジョンについて伺いました。

「“aeru satoyama”事業を、2019年以降に立ち上げる予定で、
 現在秋田県中央部に位置する五城目町というところで、
 準備を進めています。 和えるのものづくりの原点となる原材料は、
 山からいただくものがほとんど。けれども現在は、歴史的な背景や、
 手入れに携わる方々の減少などによって、山の力がすごく衰えてしまっている。
 これはやはり私たちが近代化の流れの中で、
 里山を忘れてしまったという流れがあると思っています。
 でも本当の意味で次世代に日本の伝統を伝えていくためには、
 もう一度、豊かな里山を取り戻すことが大切です。
 人間も、会社も、自然も、もう一度生態系を見直す時期。
 それを林業、農業、単体で行うとなかなか難しいと言われると思うのですが、
 和えるでは、“aeru satoyama”事業という大きな概念で捉えて、
 循環していくビジネスの生態系を生み出すため、
 一生懸命そこに向かって準備をしております。」

株式会社 和える代表取締役 矢島里佳さんに伺いました。
ありがとうございました。
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