三協フロンテア presents The Starters(ザ スターターズ)

パーソナリティ ユージ・吉田明世20代~30代の若手起業家をゲストに迎え、
彼らがどんな発想や未来への展望を持ってブレイクスルーを起こそうとしているのかお話を伺います。
高い意識とモチベーションで社会に風穴を開けようと取り組む彼らの話が、
「あなたも、世の中を変えられる!」という、
朝、仕事へ向かうビジネスパーソンのやる気のカンフル剤になることを目指してゆきます。

Guest ゲスト

2025.07.29

宇宙を普通の場所に

株式会社アクセルスペースホールディングス
代表取締役
中村友哉
小型人工衛星ビジネスを手がける宇宙ベンチャー


ONE MORNING「 The Starters 」
火曜日のこの時間は社会に風穴を開けようと取り組む若き起業家をお迎えして
そのアイデアの根っこにあるものや未来へ向けたビジョンを伺います

今週のゲストは先週に引き続き、株式会社アクセルスペースホールディングス
代表取締役の中村友哉さんです。
中村さんは東京大学大学院在学中に世界初めて、大学生による超小型衛星の打ち上げと軌道上での運用に成功し、卒業後、特任研究員を経て、2008年に株式会社アクセルスペースホールディングスを設立されています。2022年に、ジャパン・ベンチャー・アワードで最高賞の経済産業大臣賞を受賞されています。自社で開発し、打ち上げ運用する小型衛星の力を使って、いろいろな分野のサポートをされているのがアクセルスぺースということなんですが、今週は会社を創業される前後のお話をお伺いしたいと思います。中村さんのお生まれは大阪で、育ちは三重県なんですね。宇宙への興味はいつ頃からあったんですか?

「昔から宇宙少年でしたという答えを期待されるケースが多いんですけれども、全くそういうわけではなく、本当に宇宙とは無縁の子ども時代を過ごしていました。宇宙に関してはまさか自分が将来の仕事にするなんて夢にも思わなかったですね。」

逆に子ども時代は何に興味があったんですか?

「中学高校を勉強を進める中で、化学が好きで興味がありました。」

学生時代には世界で初めての大学生による小型衛星の開発をされていたと思うのですが、これはどういった流れで宇宙分野に進むことになったんですか?

「化学は好きだったんですけど、大学入ったら難しい方程式が出てきて、「ちょっと自分には難しいな」と思って諦めたんです。東大って途中から細かく学科に分かれるんです。それで、とにかく片っ端からいろんな学科の先生の話を聞いて、ビビッときたものに取り組もうかなと思ったのがきっかけです。」

それが宇宙分野だったんですか。いろいろな学科の先生の話を聞く中で、すごくいい先生と出会えて自分の興味もそちらに向かっていったんですね。

「航空宇宙工学科の中須賀先生という先生のお話を聞いたんですが、子どもみたいに「今、研究室で人工衛星を作ってるんだ、君たちも一緒にやらないか?」と話をされ、「これは研究なのか?」とも思ったんですが、それにすごく魅力を感じたのがきっかけですね。」

それで小型衛星のプロジェクトに参加されるわけなんですね。ただ、小型衛星は簡単に作れるものではないと思うんですが、実際にそのプロジェクトに参加されていかがでしたか?

「やはり私も半信半疑で、実際に研究室を見せてもらった時、ソファーに寝転がって徹夜している人や、研究室の中ではんだ付けしてる人たちがいて、「こんな感じで人工衛星ができるんだ」とすごく思ったんですよね。やはり人工衛星と聞くと、何百億円かけて白衣を着て作ってるようなイメージあるじゃないですか。あとは、衛星を作っている学生の目がキラキラ輝いているところを見て、自分もここに加わりたいと思ったのが一番でしたね。」

実際、大学で作るにあたってもお金ってかかるじゃないですか。制作費はどこから来ていたんですか?

「大学からのお金は少ない中で、学生には給料払われない分の人件費をコストカットをしたり、秋葉原が近くなので、毎日自転車で通って部品を買ってきていろいろな実験をしたりしていました。」

本当に手作り感満載というか、材料の部分ではなく知識の部分で勝負していたんですね。
大学と言えどスポンサーがいたわけじゃなかったということですか。

「そうですね。なので基本的には研究室の研究費を使い、時には先生のポケットマネーから出していただいていました。」

青春ですね。研究段階ということもあり失敗も多かったと思うんですが、先生はどうお考えだったんしょうか?

「やはり先生は、失敗も含めて学生に“ものづくり”を学んでほしいという強い思いをお持ちでしたね。」

そうだったんですね。人工衛星作りの知識は先輩に教えてもらったんですか?

「大学生で人工衛星を作ったことある人っていないじゃないですか。教科書もあるわけじゃないし、結局全員で手探りで進めていくしかないので、仲間同士の絆というか、一緒に未開拓領域を切り開いているワクワク感がやっぱりあって、チームとしての一体感がありましたね。」

研究室の仲間の皆さんは今どうされているんですか?やはり宇宙分野にいるんですか?

「宇宙分野で中心的な役割を担っている人が多いですね。はやぶさ2のプロジェクトマネージャーをやっている人もいます。」

それはいい刺激になりますね。そして、2008年にアクセルスペースを設立されております。実際にビジネスにしていこうと思ったのはなぜだったんでしょうか?

「我々が学生で衛星を作っていた時は、宇宙をなめるなということで「うまくいってもあまり役に立たないような衛星を作って何の意味があるんだ」という批判もあった中で、私自身3つの衛星に関わって、その中で性能の急速な向上というのを目の当たりにして、これは絶対世の中に役に立つツールになるという確信のようなものがありました。それを世の中に出して証明したいという言ってみれば反骨精神のような思いと、「自分たちがやってきたのは趣味ではなく、これを新しい世の中に役立つインフラにしていきたいんだ!」という思いがあり、それの実現のためにはビジネスしかないと思いました。」

いざビジネスとなると失敗も許されないですし、秋葉原で部品を集めるわけにもいかないですよね。いよいよ大きな資金が必要になると思うのですが、資金提供してもらうためにどういった努力をされてきたんですか?

「これは本当に大変でした。2008年創業なんですが、その頃、“宇宙ビジネス”なんて言葉はないわけです。スタートアップ企業の多くは、ベンチャーキャピタルからお金を集めるんですが、誰も話を聞いてくれませんでした。だとしたら、「もうお客さんを直接見つけるしかない!」ということで、いろいろなお客さん候補の人のお話を聞いて、その中で最初に一緒に衛星やろうと決めてくれたのが、ウェザーニューズさんだったんです。」

ウェザーニューズさんはお天気の情報を発信しているので、衛星情報というのはやはり大事な要素の1つですよね。

「ウェザーニューズさんには、北極海の氷の分布を知りたいというニーズがありました。既存の衛星は細かいものを見てしまうので、本来はもっと広いエリアを見る必要がある。それなら自分で衛星を持ってしまってもいいんじゃないか、ということで決めてくださって、そのおかげで我々は起業できたんですよね。すごくラッキーでした。」

衛星を飛ばすって国規模の話でしかないと思っていたんですが、今では一企業が自分たちの会社のために衛星を上げるような時代なんですね。
このアクセルスペースでは、“Space within Your Reach〜宇宙を普通の場所に〜”というビジョンを掲げていらっしゃるのですが、このビジョンに込められた想いとは何でしょうか?

「宇宙ってまだ「夢があっていいね」や「ロマンだね」といった見方をされるところがあります。もちろんそういう側面も大事だと思うんです。子どもたちが宇宙に興味を持つきっかけになると思うので大事だと思うんですが、一方で、宇宙というのが当たり前に普段使えるツールとしての側面もあると思っていて、そこをしっかりこの世の中に定着させていくということをやっていきたい、という想いが込められています。」

余談ですが、中村さんは宇宙に生物はいると思いますか?

「クマムシは宇宙でも生きられるっていう話もありますし、この広い宇宙で人間だけってわけじゃないと思うので、どこかにはいるんじゃないかと思っています。」

宇宙にはまだまだわからないことが多いですが、衛星の技術が進むことによって、もしかしたらわかるようになってくるかもしれないですね。
最後の質問になります。これからの夢は何でしょうか?

「今だとITビジネスって言い方ってあまりしないじゃないですか。それと同じように、宇宙ビジネスという言い方が一般的なんですけれども、それを当たり前にして宇宙ビジネスという言葉をなくす。これをなんとか実現していきたいなと思っています。」

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