防災フロントラインでは、
災害が起きた時に役立つ情報をお伝えしています。
厳しい残暑が和らぎ、秋の気配を感じる季節。
しかし、日本の災害史を振り返ると、9月から10月にかけての「秋」は、
最も警戒を高めなければならない時期でもあります。
近年でも各地に甚大な浸水被害をもたらした2019年の東日本台風をはじめ、 歴史に名を残す大台風の多くは秋に襲来しています。
なぜ、秋の台風はこれほどまでに恐ろしいのか。
秋台風に潜む「3つの脅威」と、命を守るための具体的な備えを紐解きます。
秋台風の第一の牙、それは「日本を直撃しやすい進路」と「猛烈なスピード」です。 夏の間、日本列島をバリアのように覆っていた「太平洋高気圧」が、秋になると次第に南の海上へ後退します。 台風はこの高気圧の縁に沿って進む性質があるため、バリアが解けた秋は、まるで日本列島を狙い澄ましたかのように、本土を直撃するルートを通りやすくなるのです。
さらに、秋の日本上空には「偏西風」という非常に強い西風が吹いています。 南の海上から時速10キロから20キロほどの自転車並みのスピードで北上してきた台風は、この偏西風のベルトコンベアに乗った途端、急激にスピードを上げます。 時には時速70キロから80キロと、高速道路を走る自動車並みのスピードへと一気に加速します。 「まだ四国の沖合にいるから大丈夫」と油断していると、わずか数時間後には関東を暴風雨に巻き込むなど、避難への猶予を全く与えてくれないのが秋台風の恐ろしさです。
第二の脅威は、「遠隔地への大雨」です。 秋台風を語る上で絶対に忘れてはならないのが、「秋雨前線」の存在です。 北の冷たい空気と、南の暖かい空気がぶつかってできる秋雨前線。そこに、台風から「大量の暖かく湿った空気」が流れ込むと、前線の活動が爆発的に活発化します。 台風本体がまだ沖縄の南の遠い海上にあったとしても、安心はできません。 台風が近づく数日前から、関東や東海、西日本などで、線状降水帯が発生し、記録的な大雨を降らせることがあるのです。空が暗くなり、風が強くなってきた時には、すでに川が氾濫危険水位に達し、避難が不可能な状態になっているケースも少なくありません。
第三の脅威が、進行方向の右側で吹き荒れる「極端な暴風」です。 台風は反時計回りに強い風の渦を巻いています。 そのため、台風の進行方向に向かって「右側」のエリアでは、台風自身の風の強さに、台風が移動するスピードがそのまま上乗せされます。 先ほどお伝えした通り、秋台風は猛スピードで進むため、この右側のエリア、いわゆる「危険半円」に入ると、トラックを横転させ、電柱をなぎ倒すほどの暴力的な風が、突如として吹き荒れます。広範囲で長期間の停電が発生するリスクも一気に高まります。
猛スピードで接近し、離れた場所にも大雨を降らせ、極端な暴風をもたらす秋台風。 私たちに必要なのは、「時間との勝負」に勝つための備えです。 台風が遠くても、気象情報で「秋雨前線」という言葉が出たら、すぐに家の周りの点検や、側溝の掃除を済ませてください。 そして、「秋の日はつるべ落とし」と言われるように、秋は日が落ちるのが早くなります。暗闇での暴風雨の中での避難は、足元の冠水に気づかず転落するなど、かえって命の危険を伴います。 ハザードマップで自宅のリスクを確認し、「風が強くなる前」「外が明るいうち」の避難を徹底してください。もし、すでに外に出るのが危険な場合は、家の中の少しでも高い場所、崖や川から離れた部屋へ移動する「垂直避難」で命を守りましょう。
秋台風の圧倒的なスピードに対しては、私たちの「早めの決断と行動」でしか対抗できません。 空が明るいうちに、ためらわずに安全な場所へ。あなたと、大切な人の命を守るための行動をお願いします。