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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2022.07.31

考えよう! 日本の食品価格事情



食品や日用品など様々な物が値上がりしていますが、なぜ、値上げをすることになったのか、その舞台裏や私たちの手元に届くまでのことを知ってみませんか。
今回は、「考えよう! 日本の食品価格事情」というテーマで深掘りしました。


青木  「2022年は値上げラッシュ!」
ちまたではこんなことが言われていますけど、足立さん、実感はありますか?

足立  そうですね。コンビニに行くと、「もっと安く買えたよな。」ということがあったり、「小麦粉など、この先、値上げする物を今のうちに買っておこう!」ということはありました。

青木  ここ最近、値上がりのニュースをよく目にしますよね。

足立  ガソリンもそうですが、日々、身の回りの物が値上がりしているんだなと感じます。

青木  後は、価格は同じでも、内容量が減っていると感じるときがありますよね。

足立  ありますね!
駄菓子も、昔は4個入りだったのが、3個になっていました。

青木  こういった様々な物の値上げの原因は、原材料価格の高騰、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などによる原油高、急速な円安など、様々な要因が絡み合っているといわれています。

足立  食品の値上げについても要因は同じなんですか?

青木  ここからは、スペシャリストに伺っていきましょう。
農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 企画グループ長の吉松亨さんです。

足立  今年の春から食品の値上がりが続いている印象があるんですけど、要因はどんなことなんでしょうか?

吉松  先ほど青木さんが様々な要因が絡み合っているとおっしゃっていましたが、食品の値上がりについても正に同じで、原材料価格の高騰、原油高、円安などのほか、様々な要因が複雑に絡み合っています。
例えば、「なたね」や「パーム油」の場合、需要が拡大しているのに供給量が増えない、こうしたことも値上がりの要因の一つです。

足立  「なたね」や「パーム油」と言われましても、どちらも、あんまり身近な食品というイメージがないですけど…。

青木  はい。
でも、「なたね」は、なたね油の原料で、なたね油は国内需要、生産量共にトップ。ほとんど無臭で、軽くあっさりとした味が特徴なので、揚げ物や炒め物など幅広く使われています。
「パーム油」は、アブラヤシを原料に、チョコレートやポテトチップスなどのお菓子やカップ麺など、様々な加工食品に使われています。

足立  めちゃくちゃ身近な物なんですね。
でも、なぜ、そうした「なたね」や「パーム油」の需要が拡大しているんですか?

吉松  世界の人口は年々増加しているので必然的に需要が増えます。
また、所得の水準が上がった中国などの国では食用油の需要が拡大しています。
さらに、エネルギー向けの需要も増加していて価格に影響を及ぼしているんです。

足立  では、供給量が増えないのはどうしてですか?

青木  実は、供給量は増えないどころか、今年は減っているんです。
昨年の夏は、なたねの主要産地であるカナダが記録的な猛暑と熱波に襲われました。
多くの方が亡くなってしまったほどの異常気象だったんです。
こうした異常気象により、なたねの生産量は減り、品質にも影響が出てしまっているんです。

吉松  パーム油の場合は、新型コロナウイルスの影響により労働力が不足し、主要産地であるマレーシアでは収穫作業が進まず生産が減る傾向にあります。

足立  異常気象や新型コロナウイルスの影響も食品の価格に大きな影響を与えているんですね。

吉松  日本では大豆や小麦などの穀物を始め、多くの食品の原料を輸入に頼っています。
新型コロナウイルス感染症の影響で、物流関係者の人手不足などにより、海上輸送の遅延や輸送費が高騰していることも価格に影響を与えているんです。

足立  では、いずれ様々な状況が落ち着けば、また値下がりする可能性もあるんですか?

青木  足立さん、食品の値段は安い方がいいですか?

足立  それはもちろん。
多くの消費者は安いほうがいいと思っているんじゃないかと思うんですけど。

吉松  確かに消費者にとって食品の価格は安い方が好まれます。
そのため生産者や食品メーカー、市場や流通業者、小売店、飲食店など、食品流通に関わる方々はそれぞれ努力を積み重ねて価格を安く抑えます。
この努力が適正なものであれば問題はありません。
しかし、価格を抑えたいがあまり、原材料価格や燃料価格、人件費が値上がりしているのに、それを価格に転嫁しないと、どこかにしわ寄せが生じます。
そして、最悪の場合、供給できなくなるおそれもあります。

青木  例えば、なたね農家が、なたねを生産するために必要なコストが増えているのに、価格を変えずに取引をしたとします。
そうすると、なたね農家は収入が減ってしまい、なたねの生産を続けることが難しくなってしまう可能性があります。
このような状況では、なたねを安定的に供給することができなくなり、結果的に、なたねの値段が上がってしまうということになる訳です。

足立  生産する農家の負担が増えますし、長い目で見ると、結局、私たちの家計に影響しちゃうということですね。

吉松  はい。
同じように食品を製造する企業が適切な価格転嫁をしなかった場合、やはり利益が下がります。当然、従業員の給料を十分支払えず、人手を確保できないことから商品の安定供給ができなくなります。
そして、企業も利益が上がらず事業経営が困難になり、場合によっては倒産してしまう可能性もあります。

足立  私たちが値下げを望んでいたら、たくさんの従業員が働く場を失うこともあるわけですよね。それは本当に困りますね。

吉松  そうなんです。つまり、食品の原材料や燃料、人件費などの値段が上がっているのに、それを適切に価格転嫁しないと、悪循環が生まれてしまうということです。

青木  さぁ、ここからは、コーヒーの価格に注目していきたいんですが、日本人は一週間に平均何杯くらいコーヒーを飲んでいると思いますか?

足立  私は一日一杯は飲んでいるので、10杯でしょうか?

青木  全日本コーヒー協会が行った調査によると、2020年の一人一週間当たりの杯数はおよそ12杯です。
一人一日に一杯から二杯は飲んでいる計算になりますから、身近な飲み物ですよね。私、今も飲んでいます!

足立  街中にコーヒーショップがありますし、缶コーヒーやインスタントコーヒー、最近はコンビニのレジ横にもコーヒーマシンがあって、淹れたてのコーヒーが飲めるので、確かに身近な飲み物だなと思います。

青木  そのコーヒーの原材料であるコーヒー豆の価格も昨年から上がっています。

吉松  はい。要因はコーヒー豆の世界最大の生産国であるブラジルの天候不順や世界的な物流の混乱などがあったこと。
また、新型コロナウイルス感染症の影響で、止まっていた経済活動が再開し、コーヒー消費量が増加したからです。

足立  日常的に飲むコーヒーの値段が上がるのは、消費者にとっては厳しいと思ってしまうのですが、そもそもコーヒーの値段ってピンキリで、適正価格がよく分からないですよね。

青木  そうですよね。
限られた農園でしか栽培されていない希少性のある豆ならば高いのは当たり前ですが、例え同じ種の豆だったとしても値段が違う場合があります。
価格が高い物の中には、コーヒー豆の段階から栽培管理、収穫、生産処理、選別、輸送時の品質管理などを徹底的に行うためコストが掛かり、価格に影響するものもあるんです。

足立  なるほど。品質管理が行き届いていると、美味しさにつながるということなんですよね。

青木  美味しさを追求して選別の段階で悪い豆が混入しないように、手作業で取り除いたり、雑味につながるコーヒー豆の薄皮を丁寧に取り除いたり、そういったことをしているコーヒー豆は、おのずと値段が高くなるんですよね。

吉松  はい。
また、近年はSDGsの取組みを積極的に行う企業も増え、人権、環境に配慮したコーヒー栽培がなされ、価格に反映している場合もあります。
コーヒー豆の生産者の多くは熱帯地域の小規模農家です。
コーヒーの生産コストの大きな割合が人件費ですが、二割から五割の農家が生産コストを賄うことができていないといわれています。
つまり、人件費や所得が安く抑えられていることになります。

青木  こうした状況を引き起こしてしまっている要因の一つとして、消費者がより安いコーヒー豆を求めたからともいえるんです。

吉松  食品の値段が安いと家計が助かります。
企業努力により安くなっている場合もあります。
しかし、生産、加工、流通、小売・外食という長いフードサプライチェーンの中で、どこかにしわ寄せがいって安い場合もあるということも知っていただきたいと思います。こうした状況があるので、政府は、適切な価格転嫁のための環境整備を進めているところです。

足立  安いからといって喜べない場合もあるということですよね。
逆に、一般的なものより少々高いものの中には、人権や環境に配慮しているなど、高いなりの理由があるということですね。

吉松  そうですね。
ですから、消費者の皆さんには、食品などを買うときには価格だけではなく、その物が手元に届くまでの過程も想像していただきたいと思います。

青木  コーヒー豆などの場合、様々な認証マークがついているものがあります。
有機栽培されたことを示すマークや、公平・公正な取引を示すマーク、生物多様性の保全に取り組んでいることを示すマークなど、そうした認証マークがついていたら、どういうマークなのかなど調べてみるのもいいのではないでしょうか。

足立  手元に届くまでの過程を知れば、初めは高いと思った価格も納得できるかもしれませんよね。
夏休みの子供の自由研究のテーマにもなりそうですね。
一緒に調べて、大人も勉強になりますし。

吉松  今日のお話をきっかけに、これから食品を購入するときには、その価格の背景にも目を向けてみてください。
そして、納得のいく食品を選び、豊かな食卓を楽しんでください。

足立  私たちは「安ければいい!」と思っているところも多少ありましたが、そうじゃないということが、今日、お話を聞いて分かりました。
商品、食品、その物が手元に届くまでの過程を想像して、この値段になっているんだと考えるのも大事だと思いました。

青木  私が印象に残ったのは、やはりフードサプライチェーン、生産、加工、流通、小売・外食と非常に長いですが、「どこにもしわ寄せがいかない、適切な価格を」と思いました。


【 関連リンク 】
・食品製造業・小売業の適正取引推進ガイドライン
 https://www.maff.go.jp/j/shokusan/kikaku/tekiseitorihiki.html