JFN
  • x
  • Facebook

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2023.03.19

食から日本を考える。ニッポンフードシフト



誰にとっても大事な「食」ですが、現在、日本が置かれている食料事情について、意識したことはありますか?
今回は、「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」というテーマで深掘りしました。


青木  食と言えば、足立さん、私たちはこの1年、食に関することをテーマに、いろいろと学んできましたよね。

足立  確かに、この1年でも日本の農林水産物と食品が海外で人気という話だったり、進化するお米、スマート農業に、GI産品、と学んできましたね。
あれから、GIマーク、チェックするようになりました。
たくさん学びましたが、特に最近、いろんな食品の価格が値上がりしていることもあって、いつも以上に食の話題には興味が湧いています。

青木  では、足立さん、近年、食が値上がりしている主な理由は何だったでしょうか?

足立  やっぱり、新型コロナの影響は大きいですよね。
あとは、ロシアによるウクライナ侵略とか、そういうのが理由なのかと思いますが。

青木  そうですよね。理由は一つではなく、今、足立さんが言っていた、新型コロナウイルスや、ロシアによるウクライナ侵略もあります。
あとは、世界的な異常気象、そして、昨今、進む円安など、様々な要因が複雑に絡み合っています。
しかも、世界は急激に人口が増加していて、食料需要も増大しています。

足立  それも以前に学びましたよね!

青木  そうですね。こうした現状から、今後も、国内外の様々な要因によって食料供給に影響を及ぼす可能性は十分に考えられます。
足立さんの勝負飯も、食材が手に入らない、そんな事態が起こり得るかもしれないんです。

足立  確かに、その不安は以前よりも高まってるなって思いますし、実際に、新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵略など、予想もしなかったことが起こって、食品などの価格に響いたことを身をもって感じましたから、もしものときに備えて食料自給率を上げる必要があるなって思います。

青木  だから、今こそ私たちは、日本の食料事情を知り、考えて行動することが求められているんです。
そこで、ここからは、日本の国民食とも言われる「カレー」から日本の食料事情を考えていきます。
スペシャリストをお呼びしましょう。
農林水産省 大臣官房参事官 小峰賢哉さんです。

足立  小峰さん、「カレー」から日本の食料事情を考えるって、どういうことですか?

小峰  私たちにとって身近なカレーですが、このカレーに使用される食材を一つ一つひもといてみると、日本の食をめぐる課題が見えてくるんです。

例えば、カレーに欠かせない様々なスパイスは、熱帯や亜熱帯が原産地であることが多く、気候条件などから国内では栽培が難しいものもあり、海外からの輸入品に頼らざるを得ません。

足立  日本の国民食だけど、肝心のスパイスは輸入品ということなんですね。

小峰  また、カレーを家庭で作る場合、じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、トマトなどの野菜は国産を使用する場合が多いと思いますが、加工業務用のカレーに使用されている野菜はコストなどの理由で、海外からの輸入品が使用されることも少なくありません。

足立  確かに、国産よりも、安く手に入るからですね。
これは、同じことがお肉の場合にも当てはまりそうですね。

小峰  はい。お肉の場合も、輸入されているものもありますし、例え国内で畜産された牛肉、豚肉、鶏肉を使用したとしても、その餌の原料であるトウモロコシや大豆かすなどは、その多くを海外から輸入しています。

足立  そうなんですね。
結局、輸入に頼らざるを得ない部分があるってことなんですね。
肉なしカレーだと味気ないし、困っちゃいますね。

小峰  でも、肉をジビエに変えれば、肉の自給率は100パーセントになります。
野生の鳥や動物の肉をフランス語でジビエと言いますが、日本では、野生のシカやイノシシによる農作物被害が大きな問題となっていて、捕獲を進めています。
その捕獲頭数に対するジビエの利用量は10パーセントほどなので、この利用拡大が課題となっています。
ですから、今よりもっと需要が増えると流通が促進されるので、農林水産省でもそういった取組を進めています。

足立  確かに、ジビエは自然の中で生きているので、餌は輸入ではないですが、でも、ジビエには抵抗のある方も少なくないですよね。

小峰  そうですよね。
ジビエは食文化をより豊かにしてくれる、味わい深い食材です。
しかも、野生のシカやイノシシは運動量が多いので、筋肉が発達して脂肪が少なく、タンパク質が多い。つまり、低脂肪、高タンパクの食材なんです。
ですから、鉄分やビタミン、亜鉛なども豊富なので、動物性脂肪のとり過ぎを抑えて生活習慣病の予防にもつながるヘルシーな食材なんです。
だから、皆さんにも、少しだけでも試していただけたらと思います。

足立  健康の観点から考えると、ジビエはとても良さそうですね。

青木  健康観点だけでなく、農作物被害の抑制にもつながり、自給率向上にもつながれば、これは、一石三鳥ですよね。
小峰さん、カレーを「お米」で食べるか、それとも「ナン」で食べるかを考えても、食をめぐる課題が見えてきますよね。

小峰  はい。お米なら国内で生産されるため、自給率は高くなります。
これがナンだと、食材の小麦粉はほとんど国内で製造していますが、原料となる小麦は8割以上を海外から輸入しているため、自給率は下がります。
これを国産小麦の小麦粉や米粉にすると自給率は上がります。
このように、日本の国民食と言えるカレーでも、その食材の一つ一つから日本の食料事情を垣間見ることができるんです。

足立  日本の食料自給率が低いことは知っていましたけど、こんなふうにカレーの食材をひもといて考えていくと、より自給率の低さを実感できますね。
まさか、「カレー」でこんなに実感できるとは思いませんでした。

青木  ご家庭で食卓に「カレー」が並ぶとき、家族でこういう話をしてみるのもいいかもしれませんね。

足立  確かに! 私たちも、日本の食料事情についてしっかり考えなければならないですからね。

青木  そうですよね。そこで「ニッポンフードシフト」なんです。

足立  小峰さん、「ニッポンフードシフト」とは、どういうことですか?

小峰  誰にとっても大事な食ですが、その背景にある農業や農村とのつながりを意識する機会がかつてより減っているのではないでしょうか。
「ニッポンフードシフト」とは、食と農業の距離を近付けるために、消費者、生産者、食料関係事業者、日本の「食」を支えるあらゆる人々と行政が一体となって、日本のこれからの「食」はどうあるべきかを考えようという国民運動です。

足立  具体的には、どんなことをしているんですか?

小峰  多くの方に日本の食料事情について考えてもらうきっかけ作りとして、企業と連携した情報発信、イベントを全国各地で実施しています。
これらの取組については、ニッポンフードシフトのホームページに掲載しています。
そのホームページでは、日本の食と農業とのつながりの変化を分かりやすく解説したアニメーション動画や、先ほどお話したカレーから見た日本の食料事情を解説した動画も発信しています。
また、現在、食にまつわる課題は様々ですが、その課題の解決に実際に取り組まれている各地の事例などもご紹介しています。

足立  アニメーションと聞くと、私、ワクワクします。
どんなのだろう?

青木  私、今、ちょうど「ニッポンフードシフト」のホームページを見ています。
「ニッポンフードシフト」と検索するとすぐに見付かりますよ!
さらに、メニューから「ニッポン全国フードシフト中」を選択すると、各地の取組を見ることができるんです。

「牛にも人にもやさしく」のアニメーション、牛が仲良く2頭並んでエサを食べていて、かわいいですね。

小峰  これはICTなどの先端技術を導入したスマート酪農の事例です。
最先端技術によって、牛舎の温度や湿度の管理のほか、牛の生育状況も把握しているんです。こうした先端技術により、スタッフの作業にも余裕ができていると、聞いています。

青木  牛に優しいだけでなく、働くスタッフの方々の負担も減る。そんな事例ですね。

足立  4匹のヤギが何かの植物を囲んで食べているアニメーションもありますね。
何を食べているんですか?

小峰  これはアロエを食べているんです。宮古島の農園の事例ですが、アロエベラという品種のアロエは、島の代表的な作物であるサトウキビに比べ、収穫作業の負担が少ない、ということで、島の新たな農作物として栽培を開始しました。
島で身近に飼われているヤギの糞と、アロエの皮など、残さを混ぜて、アロエ畑のたい肥とする循環型の農業を行っているんです。

足立  グルグル巡ってますね。動画をクリックすると詳しい説明が見られるんですね。
ヤギとアロエが映っている写真、かわいい!

青木  循環型農業というのは、これからの環境を考えても大切なポイントですからね。
あとは、ラーメンとお魚が段ボールに詰められて出荷されているアニメーションも気になりますね。鯖ラーメンで「日本食外交」とありますが、これは輸出に関する事例ですか?

小峰  はい、そうです。これは鯖の加工を行っている老舗のお店が、海外での販路開拓のため、輸出用の「鯖ラーメン」を開発した事例です。
お店がある静岡県では、ムスリムの観光客や留学生が多く、中東の方をターゲットに、何か商品開発ができないか、と思ったことがきっかけとなったそうです。その結果、アルコールや豚肉が禁止されているムスリムの方でも口にできるラーメンの開発に成功しました。
今では、中東だけでなく、EUや米国にも輸出先を広げていると聞いています。

足立  以前、日本人の「魚離れ」の話も伺いましたが、私たちが魚を食べることはもちろん大切ですが、こうした輸出の取組も応援したいですよね。
日頃、私たちが食べているものの背景には、いろいろな取組が広がっていて、なんだかワクワクしますね。

青木  「朝食のススメ」というのも面白いですね。こどもと一緒に見てみたいなと思いました。
是非、「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」のホームページをご覧になってください。

小峰  皆さんは、昨日何を食べましたか? では、一昨日は何を食べましたか?
記憶力の話ではなく、「食」食べ物への興味・関心を深めていただきたいと思います。
その食事にはどんな食材が使われ、それがどこで、どのように作られたのか、こういったことを是非、考えていただきたいと思います。
こうしたことが、私たちの自分自身の食の未来を、より確かなものにしていくきっかけ作りにつながると考えています。

また、農林水産省では、世界的な食料情勢の変化や、食料安全保障上のリスクの高まりの中で、地球環境問題への対応や、今後の国内市場、海外市場を見据えた中で日本の農業をどうやっていくのか、ということで、食料・農業・農村基本法という、農水省の憲法のようなものがあるのですが、これが制定から20年経過しており、現在、見直しに向けた議論を始めております。
この法律は、日本の農業政策の基本理念や政策の方向性を示すものです。
こちらの情報についても、農林水産省のホームページで公開していますので、是非、関心を持っていただければと思います。

足立  今日の話を聞いて、「ニッポンフードシフト」というものがあることを初めて知りました。食と農業の距離を近付けるために、消費者、生産者、食料関係事業者、日本の「食」を支えるあらゆる人々と行政が一体となって、日本のこれからの「食」をどうあるべきかを考えようという国民運動ということで、その一部に私たちもなっているんだなと。だから、今後の日本の「食」について考えていかなきゃならないんだなというのを改めて知りました。だからこそ、楽しく知っていきたいですね!

青木  はい。「ニッポンフードシフト」のサイトはとっても分かりやすかったですね。
話のきっかけにもなりますし、学びもあります。
私が今日の話を聞いて印象に残ったのは、ジビエです。
食文化をより豊かにしてくれる味わい深い食材ということで、低脂肪、高たんぱくということに、私、惹かれました。
でも、国産の牛肉、豚肉、鶏肉であっても、飼料が海外から輸入されていたら、食料自給率としては、低くなってしまいますから、ジビエであれば、国内で賄えるので、今後注目していきたいなと思います。


【 関連リンク 】
・食から日本を考える。NIPPON FOOD SHIFT|ニッポンフードシフト
 https://nippon-food-shift.maff.go.jp/

・食料・農業・農村基本法/農林水産省
 https://www.maff.go.jp/j/basiclaw/