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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2023.06.04

私たちの利益を守るために! 目指せ適正な価格転嫁



原材料やエネルギーの価格上昇に伴い、物を作るにもコストが掛かるからこそ、受注者・発注者が知っておいてほしいこと、守ってほしいことがあります。
今回は、「私たちの利益を守るために! 目指せ適正な価格転嫁」というテーマで深掘りしました。


青木  足立さん、たくさん種類のあるスマホの中から、今お使いのスマホを選んだ理由を教えてください。

足立  デザインですかね。

青木  このように、日頃から私たちは、たくさんある商品の中から、自分が気に入る商品を自由に選んで買っています。そのため、事業者は自分たちの商品を消費者に選んでもらえるように、事業者間で様々な競争を行っています。
どんな競争が思い付きますか?

足立  新しい技術を開発したり、価格を安くしたりしていると、目に付きやすいですよね。

青木  そうですね。他の事業者と差別化するために、商品の低価格化やサービスの充実、機能の改良などの競争が行われていますよね。
例えば、私たちが携帯電話会社を選ぶときの要素としては、スマホの軽量小型化やメールやカメラなどの機能性の向上、本体カラーやサイズのバリエーションの増加や通話料金など、いろいろあります。
つまり、足立さん、事業者の間で競争が行われると、どうなりますか?

足立  私たち消費者が様々なメリットを受けられるんですね!

青木  そうなんです! では逆に、競争がなかったら、どうですか?

足立  私たちが、安くて良い商品を選ぶことができなくなっちゃいますよね。

青木  そうですよね。もし、市場に競争がなかったら、企業は技術開発やコストダウンを怠るようになり、価格やサービスも企業に有利なことばかりになってしまうかもしれません。例えば、お店同士が競争せずに話し合ったら、私たちはどこの店へ行っても同じ価格でしか商品を買うことができなくなってしまいます。
さらに、お店が価格を吊り上げてしまうと、どうなるでしょうか。
つまり、市場に競争があることは、私たちの利益を確保するために必要なことなんです。その公正かつ自由な競争を促進するために制定されたのが「独占禁止法」です。
足立さん、聞いたことありますか?

足立  もちろん聞いたことあります。学校の授業で習いましたよね。

青木  ここからは、スペシャリストに伺っていきましょう。
公正取引委員会 事務総局 経済取引局 取引部 企業取引課長の守山宏道さんです。

この番組では毎週、様々な行政機関の方や、その関係者にご出演いただいていますが、公正取引委員会の方がご出演されるのは初めてです。

足立  ちなみに、公正取引委員会は、どんなことをする機関なんですか?

守山  公正取引委員会は、「独占禁止法」を運用するために設置された行政機関です。
「独占禁止法」に違反する行為を未然に防止し、素早く発見するため、市場や経済の動き、事業者の活動などを常に監視しています。
そして違反行為を発見した場合には、厳しく取り締まるとともに、その違反内容に応じた措置をとります。

青木  公正かつ自由な競争を守る役割なので、「競争の番人」などと言われることもあるんです。

足立  では、公正取引委員会が運用しているという「独占禁止法」とは、どういうものなんですか?

守山  「独占禁止法」は、私たちの経済が民主的で健全に発達すること、そして、私たち消費者の利益を確保することを目的に、自由経済社会において企業が守らなければならないルールを定めた、公正かつ自由な競争を促進する法律です。
「独占禁止法」を補う法律である「下請法」という法律もあり、公正取引委員会では、主にこの二つの法律を運用しています。

足立  企業が守らなければならないルールには、どんなものがあるんですか?

守山  例えば、企業が単独または他の企業と手を組み、競争相手を市場から締め出したり、新規参入者を妨害して市場を独占しようとする行為や、いわゆる「談合」や「カルテル」といった複数の企業が連絡を取り合って、本来、企業がそれぞれ決めるべき商品の価格や生産数量などを共同で取り決める行為の禁止などです。

足立  なるほど。そうした行為があると、公正かつ自由な競争ができないですよね。

青木  この他にも、事業者が守らなければならないルールがたくさんあるんです。

足立  守山さん、「適正な価格転嫁」の実現に向けて今、改めて知っておきたいルールはどんなことなんですか?

守山  はい。「独占禁止法」で事業者が守らなければならないルールの中には、取引上優越した地位にある事業者が、その地位を利用して、取引先に対して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為をしてはいけない、というものがあります。これを、「優越的地位の濫用」の禁止と言います。

足立  「下請けいじめ」ですね。これはダメですよね。

守山  そのとおりです。例えば、「優越的地位の濫用」の一つの類型として、取引上優越した地位であることを利用して、「一方的に、著しく低い対価での取引を要請すること」は禁止されています。

青木  「下請法」でも同じような行為が禁止されていまして、「買いたたき」なんて言われますよね。

守山  よく御存じですね。「下請法」では、発注する物品やサービスに通常支払われる対価に比べて、著しく低い下請代金を不当に定める行為が、「買いたたき」として禁止されています。

足立  なぜ、今、こうしたルールを改めて知っておかないといけないんですか?

守山  公正取引委員会では、日頃から中小事業者などへの不当なしわ寄せを防止するための取組を行っていますが、近年、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等のコストの急激な上昇などにより、「買いたたき」などの不当なしわ寄せが、中小事業者等に起こりやすい状況にあります。

足立  確かに、ニュースでも聞きますが、原油価格の値上がりによる影響は、この番組でも度々話題にもなりますしね。

青木  それぞれの家庭でも物価高で支出が増えていますが、仕入価格が上がっているというのは、経済活動においても企業にとっても同じことですよね。

守山  こうした状況もあり、公正取引委員会では、コストの上昇分の取引価格への反映の必要性について、明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことなどが、独占禁止法上の「優越的地位の濫用」や、下請法上の「買いたたき」の要件の一つに該当するおそれがあることを明確化しました。

青木  「取引価格を据え置くこと」、これも場合によっては問題になる可能性があるということです。
物品を作るコストが上がれば取引価格も上がるのは当然のことですが、受注者が発注元に「取引価格を上げたい」とは、なかなか言い出しづらいですよね。

足立  「だったら取引しないよ」って言われちゃうかもしれないですからね。

青木  でも、それでは、受注者である下請事業者にしわ寄せが生じてしまうから、そうならないように、問題となる恐れのある行為を明確に示したということですよね。

守山  はい。多くの場合、発注者の方が取引上の立場が強いため、受注者からは、コスト上昇が生じても価格転嫁を言い出しにくい状況にあろうかと思います。
そこで公正取引委員会では、近年のようなコストの急激な上昇という経済環境においては、「受注者からの要請の有無にかかわらず、発注者から積極的に価格転嫁に向けた協議の場を設けていくこと」が、発注者に求められている旨を明確化してきました。このような観点からは、「コストが上がった分、取引価格を協議する必要はありませんか?」と、発注者から積極的に価格転嫁に向けた協議の場を設けることが重要となりますので、周知徹底に力を入れて取り組んでいます。

足立  受注者側として、発注者側から「値上げしなくて大丈夫?」とか、「話し合いの席を設けますよ」と言われると、受注者側としても、安心して協議に臨めそうですよね。

守山  はい。また、受注者側が「コストが上がった分、取引価格を引き上げたい」と求めたにもかかわらず、それに応じない理由を、書面や電子メールなどで回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置くことも、ルールに違反するおそれがあると明確化しました。

足立  発注者側が取引価格を据え置くならば、その理由を文字化して回答しないといけないんですね。

青木  このように明確化した上で、昨年、公正取引委員会は「優越的地位の濫用」に関する緊急調査を実施したんです。緊急調査では、受注者8万社、発注者3万社の計11万社に対する書面調査や、書面調査等を踏まえた立入調査も一部行われました。

守山  調査の結果、4,030社もの事業者について、明示的に協議することなく従来どおりに取引価格を据え置くことや、取引価格引き上げの要請があったにもかかわらず、価格転嫁をしない理由を書面等で回答することなく、従来どおりに取引価格を据え置く行為が認められました。

青木  4,030社も! 公正取引委員会はどのような対応をしたんですか?

守山  公正取引委員会では、この4,030社に対し、具体的な懸念事項を明示した注意喚起文書を送付しました。

青木  分かりやすく言うと、「独占禁止法」に違反している可能性がありますよ、とアラートを出したということですよね。

守山  はい。また、多数の取引先に対して協議を行わずに、取引価格の据置きなどが確認された事業者13社に対しては、その事業者名を公表しました。
これは、「独占禁止法」又は「下請法」に違反することや、そのおそれを認定したものではありませんが、価格転嫁の円滑な推進を強く後押しする観点から、取引当事者に価格転嫁のための積極的な協議を促すとともに、受注者にとっての協議を求める機会の拡大につながる有益な情報であることを踏まえて、公表したものです。

青木  これは、これまでにない取組だったそうですよ。
「競争の番人」として、公正取引委員会が、現在の厳しい経済状況を踏まえた、適正な価格転嫁の実現に向けた取組に努めているということですね。

足立  確かに。普通、発注者側から、わざわざ「値上げする必要ありますか」と聞いたりしないですよね。でも、こうやって公正取引委員会から強いメッセージが出ると、発注者側としても、声を掛けないといけないな、と思いますね。

青木  また、せっかくルールがあるんですから、受注者側も必要に応じて、自分たちから「取引価格の値上げ」を申し出てほしいですよね。泣き寝入りする必要はありません。

足立  そうですよね。こうしたルールが守られて、公正で自由な競争が行われれば、最終的には私たち消費者のメリットにもつながるんですからね。

青木  受注者側からしてみれば、仕入価格は上がっているのに、取引価格が上がらなければ、きっと、どこかにしわ寄せが生まれているはずですよね。

足立  それこそ、賃金ですよね。

青木  だから消費者としてはもちろんですけど、適正な価格転嫁が行われれば、それが賃金アップにもつながりますから、労働者としてのメリットも大きいですよね。

守山  実は、こうした適正な価格転嫁の実現に向けた調査は今年度も行います。
再び、「優越的地位の濫用」に関する更なる調査を、昨年に上回る規模で実施します。
書面が届いた事業者はご協力をお願いします。また、公正取引委員会のウェブサイトにも調査票を掲載していますので、書面が届いていない事業者の方も、インターネットを利用して御報告いただけます。是非、公正取引委員会のウェブサイトを御確認ください。
公正取引委員会では、これからも公正かつ自由な競争を促進するために様々な活動を行います。

足立  今日の話を聞いて印象に残ったのは、「発注者側が取引価格を据え置くならば、その理由を文字化して回答しないといけない」というところが、いろんな人を守ってくれる部分だなと思いました。

青木  そうですよね。だから、話し合いや交渉をしないといけないということですよね。

足立  そこが大事なんだということが今日は勉強になりました。

青木  私が今日の話の中で印象に残ったのは、「受注者からの要請の有無にかかわらず、発注者から積極的に価格転嫁に向けた協議の場を設けていくこと」が、発注者に求められていることです。

足立  これを機に、受注者側も「コストが掛かっているので値上げしてください!」と、当たり前に言える世界になってほしいですね。


【 関連リンク 】
・独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に係るコスト上昇分の価格転嫁円滑化の取組に関する特別調査 / 公正取引委員会
 https://www.jftc.go.jp/partnership_package/tokubetsu/chosa.html