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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2023.07.30

性犯罪被害者に寄り添う ハートさん



「誰にも言えない。言いたくない。」
性被害のことを悩んでいたらハートさんに相談してみませんか?
顔の見えない電話だからこそ、話せることも。
今回は、「性犯罪被害者に寄り添う ハートさん」というテーマで深掘りしました。


青木  今年6月、国会において性犯罪に関する刑法の改正案が可決・成立しました。
これにより、これまでの「強制性交罪」などが「不同意性交罪」に、「強制わいせつ罪」などが「不同意わいせつ罪」に変更となり、また、被害者が「同意しない意思」を表すことが難しい場合を具体的に示すなど、処罰が適切に行われるよう、様々な改正が行われました。
そして、この改正刑法は7月13日に施行となり、すでに運用がスタートしています。

足立  刑法が改正されたということで、これは知っておかないといけませんね。
でも、性犯罪は、様々な課題があると思います。なかなか表に出てこないとか、とても難しい問題だと思うんです。リスナーの中にも、性犯罪と言われても身近に感じない方がいらっしゃるんじゃないかなと思うんですが。

青木  被害者が声を上げにくい犯罪ですから無理もないことです。
ただ、「強制性交」そして「強制わいせつ」、どちらの性犯罪も警察が認知した件数は増加傾向にあります。
被害者は20歳以下がおよそ8割で、男性の被害も毎年、確認されています。

足立  まだ幼い子や、社会経験が乏しい若者が被害に遭っているのかと思うと胸が苦しくなってきますね。

青木  ここからは警察庁 長官官房 教養厚生課長の櫻井美香さんにお話を伺います。

足立  櫻井さん、性犯罪は本当に卑劣なものですよね。

櫻井  性犯罪は被害者の尊厳を踏みにじり、身体的のみならず精神的にも極めて重い被害を与え、その後の生活にも甚大な影響を与えることが多い犯罪です。
レイプ被害者の半数程度がPTSD、心的外傷後ストレス障害の症状を抱えるとも言われており、日常生活に深刻な影響を及ぼします。

青木  これは、「魂の殺人」と言われることもあるそうですね。

櫻井  はい。性犯罪に限らず、犯罪の被害者は、命を奪われる、けがをする、物を盗まれるなどの直接的な被害だけではなく、多くの場合、事件に遭ったことによる精神的ショックや身体の不調を抱えます。

青木  ここに犯罪被害者、またそのご家族に行った調査があるんですが、事件後の心境や状況について、「不安を抱えた」「落ち込んだ」「外出したくないと思った」「不眠や食欲不振により体調を崩した」「孤立感、疎外感にさいなまれた」などの声が上がっています。

足立  被害者ご本人だけでなく、ご家族もつらい状況に陥るんですね。

櫻井  こうした心身への影響は、突然、大きなショックを受けた後では、誰にでも起こり得ることです。犯罪被害者等の心身の変調の現れ方は、人によって様々であり、また、同じ人であっても時間の経過や環境の変化により一定ではありません。

青木  また、心身への影響だけではないんですよね。

櫻井  はい。犯罪被害者やそのご家族は医療費を負担したり、仕事を失ったり、転職を余儀なくされるなどして、経済的に困窮する場合もあります。
さらに、捜査や裁判が、精神的にも、時間的にも負担になったり、周囲の人々の無責任な噂話やマスコミの取材でプライバシーを侵害されるなど、二次的被害を受ける可能性もあります。

足立  SNSなどでデマが拡散されて被害者をさらに傷つけるとか、そういったことも二次的被害ですよね。

櫻井  はい。このような状況から犯罪被害者は被害について誰にも話さなくなり、そのために、社会が被害の深刻さに気付かず、被害者への誤解や偏見がそのまま放置されるといった悪循環に陥っているおそれもあります。
こうした背景もあり、犯罪被害者と最も密接に関わり、犯罪被害者を保護する役割を担う警察では、犯罪被害者の視点に立った様々な取組を推進しているんです。

青木  その取組のうちの一つが、今日のテーマ「性犯罪被害者に寄り添う ハートさん」なんです。足立さんは「ハートさん」って聞いたことありますか?

足立  ハートさんは、聞いたことがなかったです。

青木  ハートさんは、数字の8103の語呂合わせで「ハートさん」なんですよね。櫻井さん。

櫻井  はい。「ハートさん」とは、性犯罪被害相談電話の全国共通番号です。
警察では、性犯罪被害者などが相談しやすい環境を整備するため、各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「♯8103」を導入しています。
語呂合わせで「ハートさん」と覚えてください。

足立  性犯罪被害に特化した相談窓口の全国共通番号があったなんて知りませんでした。

櫻井  はい。電話は発信場所を管轄する都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながります。

足立  「ハートさん」は、性犯罪被害相談電話の全国共通番号「♯8103」のことですが、いつ掛けてもつながるんですか?

櫻井  はい。ハートさんは2017年8月から導入されているんですが、性犯罪は夜間に発生することも少なくないことから、いつでも相談できるよう、2019年度には全ての都道府県警察において24時間対応、そして、通話料無料となりました。

足立  より相談しやすい体制を整えたんですね。

櫻井  また、性犯罪に遭われた被害者だけでなく、被害者のご家族、友人などからの相談も受け付けています。性別や年齢の限定もありません。匿名での相談も可能で、秘密は守られます。

足立  性犯罪のことで悩んでいる人なら誰でも相談していいんですね。

櫻井  はい。多くの場合、性犯罪を担当する女性職員が対応に当たりますが、土日、祝日及び執務時間外は当直の職員が対応します。
ただし、対応は可能な限り、相談者の希望する性別の者が担当するよう努めています。

足立  とてもセンシティブな内容になる場合があるので、相談者がより話しやすいように、配慮していただけるのはうれしいですね。
ハートさんはどれくらいの方に利用されているんですか?

櫻井  2022年度の着信件数は、およそ2万3,000件でした。

青木  ここで知っておいていただきたいのは、性犯罪・性暴力の特性です。
加害者のおよそ7割から8割は顔見知りであるとの調査結果があります。
特に、こどもの場合、親、祖父母、きょうだい等の親族、また、教師、コーチ、施設職員など、自分の生活を支えている人や友好的だと思っている人から被害を受けています。
被害が継続することも多く、被害を他人には言えない状況があります。

足立  自分が被害を訴えることによって、他の人を傷つけてしまうんじゃないか、自分さえ我慢すればいいのではないか、と考えてしまって、言い出せない子も少なくないような気がします。

青木  他にも、こんな特性があります。
「障害のある方は、被害を受けることが多い一方で、被害が潜在化しやすい」
「男性やセクシュアルマイノリティの方が被害に遭った場合、被害を申告しにくい状況がある」などです。

足立  どれも深刻な課題ですよね。

櫻井  そうですね。ただ、どのような場合でも、一人でつらい気持ちを抱えて耐える必要はありません。周りには話しにくいことでも、顔の見えない電話だから話せる、ということもあると思います。ハートさんにお電話いただければ、いつでも、被害者の皆さんの気持ちに寄り添った対応をします。

足立  具体的な相談の流れはどのようなものなんですか?

櫻井  例えば、被害者からお電話をいただいた場合、まずは、被害者のご意向をしっかりと伺います。その上で事件化はもとより、医療機関での受診やカウンセリング、民間支援団体の紹介など、必要な支援につなげます。

足立  相談者の中には、「大事にしたくない」「事件にしてほしくない」、そのような方もいますよね。そうした場合も相談に乗ってくれるんですか?

櫻井  もちろんです。警察への被害の届出を迷っている段階でも相談できます。

青木  ここで、ハートさんに相談した被害者の方からお寄せいただいた声をご紹介しましょう。こちらは足立さん、読んでいただけますか?

足立  はい。
「被害直後からしばらくの間、精神的に、一人になると気がおかしくなりそうになっていました。被害に遭ったということは変わらない事実で、様々な感情が次々に押し寄せてきます。
この自分の思いを言語化する機会が与えられたり、聞いてくれる人がいると感じたり、一人じゃないんだと思えたりすることは、私にとっては、とても、とても、大切なことと思えたので、この相談窓口『ハートさん』は意義深いと感じています」

青木  今、悩みを抱えている方、どうしたら良いのか困っている方、そうした方々にハートさんの存在を知ってもらいたいですね。

櫻井  性犯罪・性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為であり、決して許されません。警察としては、性別や年齢を問わず、性犯罪被害者などが悩むことなく警察に相談しやすくなるよう、引き続き、環境を整備していきます。
警察は、あなたの心、ハートに寄り添ってお話を伺います。
一人で悩まずに、まずは相談してください。

足立  今日の話を聞いて、「ハートさん」を初めて知ったんですが、「♯8103」へ電話するのに、性別や年齢の限定もないですし、匿名での相談も可能で秘密は守られるというところが重要だなと思いました。やっぱり、なかなか言いづらいことを話すのは大変だと思うんですが、話すことによって解決する糸口が見えるのかなと思うので、是非、ハートさんに電話してほしいと思いました。

青木  被害に遭われた方、一人でつらい気持ちを抱えて耐える必要はありません。
周りには話しにくいことでも、顔の見えない電話だからこそ、話せることもあると思います。被害がある、という方は是非、「♯8103」へ電話でご相談ください。


【 関連リンク 】
・各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「♯8103(ハートさん)」
 https://www.npa.go.jp/higaisya/seihanzai/seihanzai.html