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暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。
番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、
印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

青木源太・足立梨花 Sunday Collection

暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていく番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」。番組パーソナリティの青木源太と足立梨花が、毎回、専門家をゲストに招きトークを繰り広げ、印象に残った“推し”をコレクションしていきます。

2023.11.12

今から知っておきたい介護保険制度



人生100年時代! しかし、いつ自分が、そして家族が介護を必要とするか?
誰にも予想できません。そこで、もしものときに備えたいのが、利用できる制度と頼れる場所です。
今回は、「今から知っておきたい介護保険制度」というテーマで深掘りしました。

(青木)
岐阜県にお住まいのラジオネーム「きゆみ」さん、55歳のかたから、メールをいただきました。
「今、認知症の親の介護をしています。両親は90代に近く、戦前を知っている世代です。おじいちゃんが脳梗塞で倒れて以来、親の近くに住む私は介護に振り回されています。介護制度と相続も分かりづらいです。是非、この番組で介護する家族を支援する制度の特集をしてください。」
ということなんです。このメールでは詳しい状況は分かりませんが、おじいさん、そしてご両親と、長きにわたり、きゆみさんはご家族の介護をされていて非常にお疲れのことは想像できます。

(足立)
「介護に振り回されている」とありますから、きっと自分のことに時間を割くことも難しかったり、不安もあるんじゃないでしょうか。

(青木)
そこで今日は、きゆみさんのご要望でもある「介護する家族を支援する制度」のいくつかの制度の中から、まずは全ての方に知っておいていただきたい、最も基本的な「介護保険制度」と「地域包括支援センター」に注目します。

(足立)
こうやって、リスナーのメッセージから番組が作られていくのもいいですね。リスナーの中には介護のことは、まだまだ先のことで、イメージができないというかたがいると思いますけど、家族に65歳以上の高齢者がいるかたは多いですよね。今の日本は、人口の約3割が65歳以上なんですもんね。

(青木)
いつ、自分が介護する立場になるか分かりません。ですから、事前に介護保険制度のことや、地域包括支援センターのことを知っておくことは、そのときがきたら、きっと助けになると思います。介護保険制度については、以前、番組で少しだけ触れましたが、今日はもう少し深くお伝えしていきましょう。ゲストは厚生労働省老健局総務課課長補佐の菊池 一さんです。

(足立)
菊池さん、まずは介護保険制度について教えてください。

(菊池)
はい。「介護保険制度」は、高齢者の介護を社会全体で支える制度です。皆さん御存じのとおり、日本は高齢化や核家族化が進み、介護を必要とする高齢者を支える家族をめぐる状況が変化してきました。

(青木)
一人の家族にだけ負担が掛かってしまう、ということも少なくないようですね。

(菊池)
はい。介護のために仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれてしまう、いわゆる介護離職されるかたが毎年10万人いるとも言われています。こうしたことを背景に2000年に創設されたのが、市区町村が運営する「介護保険制度」です。

(青木)
介護離職をして、地元に帰らざるを得ないというかたが、私の知り合いでいました。私たちは皆、40歳で自動的に介護保険にも加入して、介護保険料も納めることになります。この制度により、介護が必要になったとき、様々な介護サービスが受けられるんです。

(足立)
こんな制度があるんですね。保険料はどれくらいなんですか?

(菊池)
介護保険料は、所得に応じて算出するので一律ではないんですが、青木さんのような、40歳から64歳の現役世代の介護保険料は、2021年度では一月当たり平均で5,788円ほどです。この、現役世代の介護保険料の一部は、事業主等が負担することとなっています。また、65歳以上のかたの介護保険料は、2021年度から2023年度までの全国平均で6,014円です。

(青木)
介護保険料は、現役世代のかたは医療保険料と一体的に徴収されます。健康保険に加入されているかたは給料明細を、国民健康保険に加入されている方は市区町村からの納入通知書を見れば、実際に自分がいくら支払っているか確認することができます。また、65歳以上の方は市区町村により原則、年金から天引するかたちで徴収されます。

(足立)
介護サービスというのは具体的にはどんなものですか?

(菊池)
ホームヘルパーさんによる訪問介護や、デイサービスなどの介護施設の利用、車椅子やベッドのレンタルなど様々です。こうした介護サービスを受ければ、介護するご家族の身体的、精神的、そして経済的な負担を軽減することができます。

(足立)
経済的な負担も軽くなるんですね。

(菊池)
はい。介護保険サービスを利用した場合に利用者が負担する費用は、その所得に応じて掛かった費用の1割から3割までのいずれかとなります。また、40歳から64歳までのかたは、所得を問わず1割負担となります。

(青木)
介護は先を見通すことが非常に難しいですよね。状態が急変したり、長期化する場合も少なくありません。ですから経済的な負担を軽くできるのは非常に助かりますよね。

(足立)
では、どういった場合に介護サービスを受けられるんですか?

(菊池)
はい。65歳以上のかたは、原因を問わず「介護や支援が必要」と認定を受ければ、介護サービスを受けることができます。また、40歳から64歳までのかたは、パーキンソン病や、65歳未満で発症する、いわゆる若年性認知症など、加齢をきっかけとする特定の疾病により「介護や支援が必要」と認定を受ければ介護サービスを受けることができます。

(足立)
その認定はどのようにして受ければいいんですか? 介護保険サービスを利用するために必要なことを教えてください。

(菊池)
はい。実際に介護保険サービスを受けるには、まずは、お住まいの市区町村の窓口で要介護認定の申請をします。

(青木)
では、私から介護サービスを受けるまでの流れを簡潔にご説明します。市区町村で要介護認定の申請をした後は、市区町村の職員などから訪問を受け、聞き取り調査が行われます。また、市区町村からの依頼により、かかりつけの医師が心身の状況について意見書を作成します。その後、認定調査の結果や主治医意見書に基づき、市区町村の審査会が要介護度を判定します。この要介護度は、要支援1、2、そして要介護1から5までの合計7段階に分かれています。この要介護度に応じて受けられるサービスが決まっていますので、要介護度が判定された後は、「どんな介護サービスを受けるか」「どういった事業所を選ぶか」についてサービス計画書を作成し、それに基づきサービスの利用が始まります。

(足立)
なるほど。聞いていると、どうやら、やらなければならないことが、たくさんあることは分かりました。

(青木)
そうですよね。すぐには決まらないことですからね。

(足立)
でも、親が突然倒れて介護が必要な状態になったり、家族が認知症かもしれないというときなどは、まず何から始めればいいのか、混乱しそうな気がします。市区町村への申請やサービスの計画書の作成なんて、当事者ができるんですかね?

(青木)
はい。こうしたことは、その立場になって初めて対応していくことなので、やはり最初は戸惑うと思います。そこで、覚えておいてもらいたいのが「地域包括支援センター」なんです。

(足立)
「地域包括支援センター」聞き慣れない言葉ですが、菊池さん、これはどういったものなんですか?

(菊池)
はい。「地域包括支援センター」は、地域の高齢者が健康で安心して暮らせるように、医療、福祉、介護の面から総合的に支援するための機関です。市区町村や、または市区町村が委託する組織により公的に運営されており、各市区町村に一つ以上設置されていて、現在は全国におよそ5,400か所あります。介護についての不安や悩みについて安心して相談することができ、もちろん相談や支援は無料です。

(足立)
ということは、介護保険サービスを受けるための申請手続きや、サービスの計画書の作成ということも相談できるということですか?

(菊池)
そのとおりです。地域包括支援センターには、医療、福祉、介護の専門家である保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャーなどのスタッフがいます。それぞれの得意分野をいかして連携を取りながら、相談内容に応じて、制度の概要の説明や、相談窓口の紹介など具体的な解決策の提案をします。また必要であれば、関係機関と連携し、介護サービスや、様々な制度が利用できるよう支援します。地域包括支援センターの連絡先は、市区町村のホームページなどですぐに確認できます。

(足立)
介護のことで分からないことがあれば、まずは「地域包括支援センター」に相談すればいいんですね。

(青木)
その上、地域包括支援センターは、介護に関する相談に乗るだけではないんです。地域の高齢者の健康づくりに関することや、高齢者の権利に関すること、そういった相談にも乗ってくれる、いわば、高齢者の「よろず相談所」なんです。例えば、「ご近所のおじいさんの敷地内にごみが溜まっていて困っている」とか、「ご近所のおばあさんが虐待されているかもしれない」といった、高齢者に関することであれば、地域の方からの相談も受け付けています。

(足立)
すごいですね! 「地域包括支援センターは高齢者に関する総合相談窓口」と覚えておけばいいんですね。

(菊池)
はい。日本の65歳以上の高齢者数は2025年にはおよそ3,657万人となり、2042年にピークを迎え、医療や介護の需要はさらに増加することが見込まれています。そのため政府では、2025年をめどに、重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、また、認知症の高齢者の地域での生活を支えられるように、医療、介護、介護予防、住まい、生活支援が包括的に確保される「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。そのシステムの重要な一端を担うのが地域包括支援センターなんです。是非、お住まいの地区の地域包括支援センターについて確認していただければと思います。

(足立)
高齢になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らしたい、というのは多くのかたが願うことですよね。その願いを叶えるためにあるのが、地域包括支援センターということで、今回メールをくださった「きゆみさん」は地域包括支援センターに相談に行っているんですかね?

(青木)
詳しい状況が分かりませんけれど、もし、まだであれば、迷わずに相談していただきたいですね。

(足立)
今日は、突然、介護に直面しても慌てないように、事前に知っておきたい、介護保険制度と地域包括支援センターに注目しましたけど、菊池さん、他にも事前に準備しておいた方がいいことはありますか?

(菊池)
はい。親御さんが元気なうちは、介護について親子で話題にすることは少ないと思いますが、突然の病気やケガで介護が必要になる可能性があります。そこで、例えば、親御さんに介護保険の保険証が届く65歳を迎えた時、あるいは、皆さんが介護保険料を納付し始める40歳を迎えた時などに、介護について親子で話し合ってみてはいかがでしょうか。

(青木)
親自身が「老後の生き方」や「介護が必要になった場合の暮らし方」について、どのような考えを持っているかなど、直面したときには言いづらいこともあるかもしれませんから、事前に知っておくことも役立ちますね。

(菊池)
実は昨日、11月11日は「介護の日」でした。是非この機会に介護保険制度や地域包括支援センターについて理解を深めていただければと思います。

(足立)
今日の話を聞いて、介護保険サービスを受けるための手続きなどいろいろと大変なことがあるんだということが分かったのですが、地域包括支援センターは高齢者に関する総合相談窓口なので、介護に関する相談だけではなく、健康づくりや、高齢者の権利に関することなど、いろいろと相談できるので、何か困ったことがあったら、「地域包括支援センター」に相談に行こうと思いました。

(青木)
今日の話を聞いて印象に残ったのは、「介護について親子で話し合ってみては」という部分です。突然、介護が必要な状態になってしまう可能性もある中、自分の仕事をどうするか?親の介護をどうするか?と悩む前に、普段からコミュニケーションをとって、何かをきっかけに、介護について話しておく、確認することが大事なんじゃないかなと思いました。


【 関連リンク 】
・介護保険制度の概要 / 厚生労働省
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/

・地域包括支援センターの手引きについて / 厚生労働省
 https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/03/tp0313-1.html