木村拓哉 Flow supported by Spotify - TOKYO FM 80.0MHz - 木村拓哉

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2025年10月12日Flow 第三百七十六回目

まずはメールを1通ご紹介します!

【宮城県 なっちゃん 46歳 女性】
教場の2部作公開が発表されましたね!
生徒役で風間教場におられた丈太郎さん、井桁弘恵さんのポストを拝見しましたが、とても身の引き締まるような現場と想像することができました。
来年の公開心して待ちたいと思います。
風間教官としての撮影の思い出を教えていただけましたら幸いです。


木村:はい、「教場」撮影させて頂きました。こちら、2026年に、2部作という形で皆様にお届けすることが決定しました。「Reunion」っていう形と、「Requiem」っていう形。その2部作、前編後編になってるんですけども。
「Reunion」という前編のこちらは、2026年の1月1日からNetflixで配信されます。そして後編となる「Requiem」の方は、2月20日から劇場公開という形らしいんですけども。

まあとにかく、今年の“猛暑”と言われたまさにあの時期に撮影をさせて頂いてたので、現場はもう常に“熱中症との戦い”と言いますか。ロケに関しては、日陰のないところに日陰を作るっていう(笑)。それはスタッフに色々と簡易テントを設置して頂いたりとか、本番ギリギリまでパラソルで日陰を作って頂いたりとか。もう本当にカメラマン、照明、音声、出演部だけでは絶対的に成り立たない現場でした。制作陣だったりとか、演出部の皆さんもそうですし…。

監督が言うわけですよ。モニターを見て、「この線ちょっと曲がってんな」って。あの、校庭に引かれている石灰の白い線があるじゃないですか。あれをカタカタカタカタって校庭に引いていって、それでトラックを表現して、その外側を生徒の皆が走るとか。
監督がモニターを見て、「ちょっとこの線曲がってんな」っていうふうになると、やっぱり撮影という行程には進まないので、演出部の皆が…演出部だけじゃなかったな、制作部の皆も、炎天下の中、一度引かれた石灰をもう一度その周りの土と同化させて。パッパッつって一度引いてしまった白いラインを箒でなじませるっていうこともできるんだけど、女性のスタッフの強さをまたその時に垣間見たんですけど、女の子たちが素手でブワーッて、一度弾かれた石灰をまぶしてなじませて、さっきまで「曲がってんな」って言われてた石灰を一度綺麗に消して。で、「今度こそ監督のOKが出るでしょう」っていうまっすぐな線を引いて、「いかがでしょうか? 確認お願いします!」ってなって、「ああ、いいんじゃないか」っていうところで、「じゃあいきましょう。よーい…はい!」って、ワンカットずつ撮影が重ねられて行ったんですよ。

もちろん暑さとの戦いっていうのもあったんですけど、室内も、いや〜、きましたね。出演者の皆もそうですし、スタッフも汗だく。玉のような汗を滲ませながら撮影してくれてましたけど。
それでね、パッと気づいたんですよ。ネッククーラーじゃないですけど、そういう暑さ対策グッズを使ってるのも色々見受けるんですけど、なんかね、スタッフの大半は、手ぬぐいを首に巻きつけてたんですよ。汗を吸い取るっていう役割もしてるんですけど、首に巻く手ぬぐいを一度冷たい水で湿らせておいて、それを首に巻いて、技術さんも照明さんも音声さんも撮影をしてたのを見て、「なるほど!」ってなりまして。

作品の撮影に入りましたよっていう時に、「今回もよろしくお願いします」っていう形で、Tシャツを作ってみたりとか、キャップを作ってみたりとか、スタッフジャンパーを作ってみたりとかっていうことは今までさせてもらってきたんですけど、今回、とあるスタッフの助言もあって、「手拭いがいいんじゃね?」っていう話になりまして。それで、勢いで手ぬぐい作ろうっていう流れになりまして。
普通に手ぬぐい作ってもしょうがないし、本当に話の流れで、「じゃあ何か書く?」っていう。一番最初は「まあ筆ペン?」みたいなノリだったんですけど、「いや、筆ペンは違うな」、「やっぱりちゃんとした毛筆に、墨で、半紙に書いて、それをデータで読み込んでもらって、それで手ぬぐい、行っちゃわない?」っていうことで。

撮影中に、書き初めで使うあの長い細〜い半紙あるじゃないですか。あれを用意してくださって、毛筆の筆と墨をドン、ドン、って置いてくれまして。「よし、書くか!」って言って、スケジュール的にはその日の自分の必要撮影部分は終わってたんですけど、「いや、私服に着替えると風間さんの書いた文字じゃなくなっちゃうから、この衣装のまんまやるわ」って言って書いて…。
で、「何て書く?」っていうところもまた始まるじゃないですか。「これかな?」っていう言葉がやっぱり『心得』っていう言葉に着地しまして。
いや〜、多分、70〜80枚書きましたね(笑)。「これ、あ〜違う!」とか言って、「これも違う!」っていう。

お台場の湾岸スタジオっていうところでスタジオ部分の撮影をさせてもらってたんですけど、他の撮影に来られていたスタッフとか、出演者の方とか、「あいつ、エレベーターホールの前のテーブルで何やってんの?」っていう。
でも皆、「なんかこの髪色で、あの眼鏡を掛けて、警察官の格好してる人、見たことあるな」っていう人が通りかかると、「あ、お疲れ様でーす」って言いながら通ってはくれるんだけど、明らかに撮影はしてないじゃないですか。もうひたすら「駄目だ!」、「これ駄目! 没!」っていうふうになった、書きかけだったり、書いた半紙が周りにブワーッて溜まっていく奴のことをみんな横目で見ながら、「あいつ、あそこで何やってんの…?」っていう(笑)。

そんな中、「これかな? うん、よし、これにしよう!」っていう1枚に着地しまして。それで『心得』っていう言葉と、一応「中身は木村ですけど、こういう立場として書かせて頂きました」という意味で、あえて名前は『風間公親』にさせて頂いて。
それで、その『心得』っていう言葉と『風間公親』っていう名前だけじゃちょっと寂しいなと思って、「じゃあ1匹、勝ち虫のトンボを飛ばしておこう」と思って。それも、『風間公親』って書いた、あの細い方の筆あるじゃないですか。それで、もう本当に一筆書きで描いたトンボを1匹、ピュンって飛ばして、手ぬぐいを作りましたね。
それが出来上がってきて、2色作ったんですけど、その2枚を1セットにして、全スタッフ、全キャストに一応お渡しさせて頂いて。

自分から思いついたイベントごとをやっていかないと、結構厳しい現場だったので。内容もやっぱり重いですし(笑)、皆で「イェーイ!」って盛り上がれる現場ではないですし。割と皆、「あれ? さっきから身長ちょっと伸びた?」っていうぐらいの、背筋を伸ばしてくれた状態で、毎日撮影をさせて頂きましたね。

さすがに2本分という分量だったので、撮影期間も結構長かったですし、天候の都合だったりとか、今まで撮影で使えたところが、諸事情があって使えなくなったりとかっていうこともあって、もう本当にスケジューラーさんも、どうやってこの人数のスケジュールを管理してくれたんだろうっていう。この場所に行ったらこのシーンしか撮れないし、少しでも天気が悪かったら、今度は前後の繋がりがおかしくなっちゃうし。とか、もう本当に細かいことを配慮して、大変だったとは思いますね。

撮影が、「このカットでついに終わるのか」っていうカットが終わって、スタッフも、「以上をもって、風間公親役、木村拓哉さん、オールアップです!」っていう言葉を頂いて、花束を頂いて、監督と握手をさせて頂いて、カメラに「一言お願いします!」って言われた時に、あんまり思い浮かばず、もうとにかく「お疲れ様でした! ありがとうございました!」ってなって。
その後はね、ひたすらパタッて。ロケで、室内の空調設備が一切ない武道場のシーンだったんですけど、その武道場を一歩出たところに屋根付きのスペースがあって。雨は降ってなかったんだけど、夕方になってきていてちょうど心地いい風も吹いていて、暑いと言えば暑いんですよ。なんだけど、室内よりかはまだマシっていう状況。そこに出たところで、ただただ天を仰いだ状態で、バタンって3分間ぐらい「あー…」って言って(笑)、仰向けに倒れてました。

終わる時って毎回そういう感じなんだよね。やってる間は「今日はこのシーンだ」とか、「ちょと今こういう状態だけど、いけるか?」みたいに自分と相談しながらとか。共演者ももちろん一緒の作業なので、皆のメンタリティだったり、フィジカルだったり、っていうものを、一番いい状態に、とかね。
「教場」の現場は人数も多かったし、作業も多かったし、状況的には厳しかったですが、本当に皆がいてくれたからやることができたんじゃないかな、っていう。だから、「やりきったぜ!」っていう個人的な時間は、その3分だけだったかな(笑)。もうあとは、とにかく「本当ありがとうございました!」っていう一言に尽きますね。
皆さん、楽しみに待ってて欲しいと思います!

[OA曲]
M.心得/Uru

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