今週も明治神宮で毎年開かれている、森と向き合い、木と触れ合いながら自然とともに生きることを考える場づくり「アースデイ いのちの森」のレポートです。
4月末に行われたこのイベント、森・緑に実際に触れて、匂いを嗅いで、体で感じることができるワークショップが色々とあったのですが、会場の一角では、小さな子どもたちが、手を泥んこにして一生懸命 コケ玉づくりをしていました。

これは特別に許可を得て拾った明治神宮のどんぐりを2年育てた苗でコケ玉をつくるものです。
土や杉の木の皮、赤玉土という園芸で使われる土などを混ぜてつくった玉にポッドから外した苗を植え、緑の苔でくるみます。そして、モールを使って目や口を可愛くつくります。
こうしてつくったコケ玉は家に持って帰って育てるというワークショップなんです。


苗木を育てているNPO法人響の方によれば、明治神宮は元々、全国から10万本の献木で出来た森。
その恩返しとして、育った苗木は全国の植樹に役立てるのだそうです。

そして別の場所では米作り体験が行われていました。実は、明治神宮には、関係者以外は立ち入れない小さな田んぼがあるんです。この田んぼでは、自然体験をしたい!と応募した一般の方々が、体中どろんこにしながら、田植え前の準備作業に精を出していました。

NPO法人 響 副代表で、明治神宮の稲作を取りまとめている、山下泰さんにお話を伺いました。

-明治神宮の田んぼとはどういうものなんですか?
 最初にできたのは14年ほど前になります。昔の人たちはどのような暮らしをしていたのかということを体験して学ぼうと考えて、そのひとつとして田んぼをつくることにしました。

-この田んぼの特徴はどんなものですか?
 この田んぼは森のなかにあるので、普通の田んぼに比べて日があまり当たらないのが特徴ですね。森のなかにあるので、様々な虫や生物がこの田んぼにやってきます。一年の間に4種類のトンボがやってきて産卵をします。生まれたヤゴたちは、その田んぼで生まれたオタマジャクシの生き血を吸っています。そういうような食物連鎖が田んぼの中にあります。

-この日はどんなことをしたんですか?
 この日は代掻きの準備をしました。代掻きというのは田んぼをドロドロにして、水をいれられるような状態にするんですが、そのために土を15〜20cmくらい、細かくほぐしてもらいました。みなさん多分翌日筋肉痛になったんじゃないでしょうか(笑)鍬は軽いので、子どもたちも参加していました。



-この後、この田んぼはどうなっていくんでしょうか。
 この後は代掻きをして、水を入れたら田植えをします。これは明治神宮の神饌田ということで、神様にお供えをする米をつくるための田んぼなので、神事として御田植祭というお祭りを行います。

ちゃんと明治神宮の神職の方に来て頂いて、我々も早乙男、早乙女という役をするため、装束を着て御田植の儀式を行います。この儀式は近隣小学校に総合学習の一環として見学と、その儀式のあとに子どもたちが田植えを体験します。


-この稲作に参加することは出来るんですか?
 NPO法人響のサイトに参加申し込みのフォームがありますので、そこから応募ができます。この後は6月、7月、8月の第2、第4日曜日のあさ10時から草取りや虫取りを行います。7月、8月の最初の活動日は中耕機こいう機械をつかった溝切りをする予定です。
実は田んぼの学校という、子どもが参加できるようなイベントを来年行うことにしていまして、今年はそれを実施するための仲間を増やそうとしています。やってみたいという方はNPO法人響のサイトをぜひチェックしてください。


NPO法人響のサイトはこちらです。
http://www.npohibiki.com/
興味のある方はぜひチェックしてみてください。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Slow & Easy / 平井大
・パレード / つじあやの
今週も東京でいちばん緑の濃い場所、明治神宮の森からのレポートです。
お伝えするのは、この明治神宮の豊かな森を舞台に開かれたイベント、「アースデー いのちの森」です。
このイベントは東京の真ん中で森と向き合い、木と触れ合いながら自然とともに生きることを考える場づくりとして 毎年行われているもの。
明治神宮のどんぐりを「コケ玉」に植えて育てるワークショップや、貴重なトウモロコシの種を守り、増やすという取り組みの紹介など、様々な企画が明治神宮の芝生スペースで開かれていたのですが、中には、実際に森の中に入り、特定の植物を捜し歩くというものもありました。
その名も。『そうじさんのワクワク薬草教室』です。


◆そうじさんのワクワク薬草教室〜明治神宮は貴重な森〜
 ドクダミがすごい多いですね。これは薬用植物では代表的なもので、胃腸の機能を整える効果があります。ドクダミにはどうしてもいやな匂いがあるんですが、乾燥するとこの臭みが全くなくなって、健康茶でよく使われています。


 向こうに茎がちょっと白っぽいような植物がありますね。あれはケシ科の植物です。有毒です。あれがタケニグサというタイプで、ケシ科の植物はやっぱり有毒植物が多いです。今はあまり見かけませんが、昔よくあったくみ取り式のトイレ、肥溜っていうんでしょうかね。夏になるとウジが湧いてきて、とても困ったわけなんですが、あの葉っぱを2〜3枚入れておくとウジが全滅するんです。除虫剤という使い方をされていました。竹細工をするときに、一緒に煮込むと竹が柔らかくなるからタケニグサという説もあります。
 これはホウチャクソウですね。我々のような植物の調査をしてる人間にとっては、このようなホウチャクソウの群生というのは、今は滅多に見ることはなくなりました。そういう意味では、やっぱり明治神宮の森っていうのは非常に価値の高い自然がよく管理、保護されてるっていう、そういう特徴がありますね。


 この一面にあるのは全部カントウタンポポですね。これだけタンポポがあって外来種が一切ないっていうのはすごいですね。


参加者を案内してくれたのはNPO自然科学研究所 理事長の小谷宗司さん。薬草のプロフェッショナルの方です。「百草丸」という長野県で古くから知られる、お腹の和漢生薬を作る会社の方で、NPOとしての活動もされています。
そんな 薬草おじさん、そうじさんの案内で明治神宮の森を歩き、そこに自生している薬草たちを見つけて歩く・・・というのがこの企画です。
ほかにどんな植物、薬草があるのでしょうか。

◆そうじさんのワクワク薬草教室〜ヘラオオバコ チドメグサ〜
これはオオバコの仲間です。ヘラオオバコというタイプで、帰化植物です。これも薬用植物でよく使われてますね。これから花が咲いてくんですけれども、花のあとに種子ができます。それを咳止めの薬、あるいは全体が咳止めの薬として使われてますね。西洋でも代表的な薬草です。


それからこれはセリ科の植物でチドメグサ。山で怪我したときにはむしり取って揉んで、傷口に湿布したりとか塗りつけたりすることによって殺菌効果もあるし、血止めの効果もあります。
「クローバーに似ていますね。」
クローバーはマメ科の植物で全く別のものです。昔は学校でもよくうさぎを飼ってたりして、子どもたちにクローバーを餌として集めさせていたりしましたが、実はクローバーは有毒植物だということがわかってきました。まあ我々はクローバーを食べることはありませんが、仮に食べてしまうと、直射日光に当たってるところだけが発赤するんです。日光過敏症アレルギーという疾患名で、光にあたったところだけが炎症を起こします。山菜の本なんかでよくアカザという植物がでています。おひたしにして食べるとかそういうのが載ってるんですが、アカザも日光過敏症のアレルギーが発症します。これも最近わかったんです。


クローバーって毒があるんですね!
さて、薬草おじさんのそうじさんは、NPO法人・自然科学研究所として、薬用植物の栽培指導や、普及活動などもされているということなんですがその活動と、明治神宮の森は、どんな風に繋がっているのでしょうか。

◆そうじさんのみる明治神宮の森
薬用植物というのは、自然保護という観点からみると、自然の物を薬にするためにたくさん採取してきたという面はあるんです。別の考え方をすると、自然をすごく有効利用したという見方もできるわけですが、まあ我々はそこのところに頼っているわけですね。
 この明治神宮の森は、野生の状態をいまだに保っているひとつの大きな見本かなという気がします。元々これは「献木」という形で全国から木を奉納してつくられた森なんですが、樹下には昔の武蔵野の面影を残す、そういう自然がしっかりと残されてると私は感じてます。


この「そうじさんのワクワク薬草教室」の模様はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!

【番組内でのオンエア曲】
・Marvin Gaye (feat. Meghan Trainor) / Charlie Puth
・SUN / 星野源

今朝は、東京の中心部にある大きな森、明治神宮からのレポートをお届けします。
先日、この明治神宮の豊かな森を舞台に、「アースデー いのちの森」というイベントが開かれました。
これは、東京の真ん中で森と向き合い、木と触れ合いながら、自然とともに生きることを考える場づくりとして 毎年行われているもの。
子どもたちもいっぱい集まり、様々な体験を楽しんでいました。
まずはこのイベントについて、アースデイいのちの森事務局長 井梅 江美さんに伺いました。

◆アースデイとは?
「アースデイ」とうことで、世界で同時に開催している環境フェスティバルなんですが、「アースデイ いのちの森」は東京の大都市のど真ん中にある明治神宮の森を会場にして、自然と触れ合える場を提供しているイベントです。今年で7回目になります。
明治神宮の70ヘクタールの広大な森のなかで、子どもたちが自然と大地に触れ合って、泥を顔にペインティングしたりするような遊び場もあれば、多くの人たちが集ってトークをしながら未来に向かってどのように自然環境を残していけばいいのか、地球の上でどのようにしてサスティナブルな環境をつくっていけるのかということを話しあうコーナーもあります。

東京の中でも明治神宮の森とういのはとても自然の豊かな森です。昔の日本人は森と人とがすごく密着していた生活の中で、自然に生かされているという気持ちが育まれていたと思うのですが、いまの東京では、それを実際に日頃の生活で感じることがあまりありません。ですので、ぜひこの明治神宮の森に来て、自然に生かされているという感覚を取り戻してほしいなという思いではじめました。
明治神宮の森は、まだ95年前につくられたばかりの森です。全国の10万本の献木と11万人青年たちの奉仕で出来上がった森なんですね。いまではもう95年経っているのですが、木の世界では95年”しか”経っていない。でも絶滅危惧種や新種の生物が生きている、本当にとても自然豊かな森に成長してきています。ですので、日頃なかなか見ることのできない鳥だったり、虫だったり、タンポポだったりがあります。カントウタンポポが一面に広がっているような、本当に稀少な植物がたくさんある森で開催しています。
来場者の方々は、大地に寝そべる方が多かったです。子どもたちもとても喜んで走り回ってくれています。安心安全に、でものびのびと大きな声を出しながら遊べる場はなかなか東京にはありませんが、それが実現できている場所だと思います。


明治神宮の鎮守の杜は代々木の杜とも呼ばれています。総面積およそ70ヘクタール、これは東京ドーム15個分!!
そしてお話にあったように明治神宮の森は、大正時代当時の植物学者たちが、100年後を見据えて、手入れをしなくても永遠に世代交代するよう計算して作られたものなんです。絶滅危惧種のカントウタンポポだけでなく、なんとオオタカまでこの森に巣作りをしているといいます。
永遠に続く、いわゆる「常若(とこわか)の森」である明治神宮の森。ここで行われたアースデーいのちの森では色んな催しが行われました。
例えば、土を固めて真ん丸にして、コケでくるんだボール型を作る「コケ玉作り」。これは明治神宮のどんぐりの苗木を、そのコケ玉に植えて育てるというものです。
ほかには「神宮の秘密の田んぼ」、野鳥の会も協力した、神宮の森の野鳥の声を楽しみながらのガイドウォークなど。こんな楽しい催しもありました。

◆アースデイいのちの森
ビンゴカードを持って森を回ろうといって、いま一生懸命虫眼鏡を使って地面を這っている小さな男の子がいますが、あれは虫を探しています。向こう側の方にはエステをしている人がいるんですが、明治神宮でお借りしている泥を水と撹拌して、それを顔に塗っています。次の日はツルツルになりますよ。
これは竹のジャングルジムをつくっています。



そしてこれは桧プールです。明治神宮の宮大工の方がつくってくれた桧のプールなんですがとてもいい匂いです。これは普段、宮大工さんが明治神宮の境内のいろいろなところを修復して出たおがくずを溜め込んでいてくれて、桧の匂いにはリラックス効果があるということで、プールをつくっていただきました。その隣はピースシードさんのブースです。種というのはお米も種だし、キウイの中にはいっている粒も種だし、身近に種っていっぱいあるんですが、それが木になって、色々な食べ物ができてきたり、私たちの吸う空気を作ってくれたりということがあるので、そこを読み解いていきます。


この「ピースシード」という団体による、種をまこうという 企画。これは2000年から始まった取り組みなんですが、詳しく伺いました。

◆いのちのたね
ピースシードという団体がやっている「いのちのたね」というコーナーで、初年度からずっとやらせてもらっています。これはネイティブアメリカンのカール・バーンズさんという方がまもっていた、本当にカラフルできれいな「ガラスの宝石とうもろこし」というものなんです。

私たちピースシードは、シードバンクというものを運営していて、種がほしい人に種をお分けして、栽培して頂いて、全部食べてしまわずに一部を種で返してもらうという形でずっとやっています。
これは去年ここで欲しい方にお渡しして、返ってきた種を再びみんなで色分けする作業をお話しながらやっています。私はよく幸せを分けると増えるよねっていうんですが、種を大切にして、渡すときには里子に出すような気持ちでお渡しして、また育てて頂いて、また返ってきてっていう、そういう関係で人間関係も深めていくようなことをやっています。
あちらでは田植えの作業をやっていますが、お米も種ですよね。胡麻もそうだし豆もそうですし、種をいっぱい食べているんですね。それが食べ物として普段出会ってしまうから、循環が見えない。私たちはよくワークショップで「米はたね」というのをやっていますが、それぞれの土地でそれぞれに進化して、それぞれの米文化があって、用途があってということがあるんですね。それを見て感じて、昔は野生だったものを人間が一生懸命食べられるように工夫して、いまの栽培品種ができたという時間の流れ、人々が本当に長い時間の中で次世代に残したから今があるということを伝えたいですね。次の世代に伝えていくために、私たちは楽しみながら種を残す。そういうことをやっています。


今回お届けしたお話しはポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!
来週も引き続き「アースデイ いのちの森」の模様をお届けします。
どうぞお楽しみに!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・La / Old Man River
・歓びの種 / YUKI

今回も引き続き、南国の森のお話をお届けします。
奄美の森の中にいるという「妖怪 ケンムン」について、数週にわたってお届けしてきましたが、きょうが最終章です。

ケンムンは、奄美では、木に暮らしているとされています。特に、奄美や沖縄で見られる亜熱帯の樹木「ガジュマル」には、ケンムンがいると考えられているんです。
奄美の人なら、子どもの頃、誰もが言われる「あそこはケンムンがいるから近づくな」という言葉。この言葉とともに、島にはたくさんの、大きなガジュマルが残っています。

今回の取材では、私もそんなガジュマルの木に会うことができました。
このガジュマル、加計呂麻島の海沿いの道路から、ちょっと山道へ入っていったところにあります。正確には不明なのですが、樹齢300年以上ともいわれています。本当に、ケンムンがいてもおかしくないと感じる、大きなガジュマルだったのですが、なぜここにケンムンがいると考えられているのでしょうか。
ケンムンのことを長年調べてきた考古学者でケンムン村の村長、中山清美さんに伺いました。


◆ケンムンの住む木
ケンムンが住む木は、北部ではアコウ、南部ではガジュマルといわれています。共通しているのは絞め殺しの木ということ。ガジュマルの実を鳥が食べ、大きな木の上で糞をすると、そこで発芽して、下に向かってヒゲが伸びていくわけです。そうすると、そのヒゲが下につくとそれが根になり、ヒゲがだんだんこの木を巻いていくわけです。そして大きなり、そのうち木が絞め殺されてしまう。そのガジュマル、アコウの木にケンムンが住むといわれているんです。
ガジュマルはたいてい海岸と集落の間、周辺域に防風林として植えてあります。また、大きなガジュマルは貝塚であったり、神山といったところにもあるので、そこにケンムンが住んでいるということになります。そのガジュマルを切ったりすると祟りがあるといわれているんです。


防風林だったり、貝塚など「大事にしている場所」にガジュマルが植えられ、そこにケンムンがいる、ということで近づかず、大事に守ろうとしたんですね。
ガジュマルの木を「切る」と、祟りがある。というお話がありましたが、実は奄美には、これを象徴する伝説が一つあるんです。
太平洋戦争のあと、奄美ではガジュマルを伐採しろという命令が GHQから出ました。島の人たちは祟りを畏れて切ろうとしませんでしたが、「お前たちは悪くない。マッカーサーの命令で切るんだ」と言われ、切ってしまいました。
すると数か月後、なんとマッカーサーが死んだとのニュースが!
自分たちのせいじゃない、マッカーサーが悪いんだ!とガジュマルを伐採した島の人たちは、ケンムンが太平洋を渡ってマッカーサーを呪い殺したと考えたんだそうです。

そして、ケンムンは奄美の人々が 「もめごと」を避けるためにも必要な存在でした。例えば、集落と集落の境目には、必ずケンムンがいるとされていたといいます。どういうことなんでしょう。

◆争いをさけるためのケンムン
集落のことを島といいますが、山に行くとここからは向こうの島、ここまではこっちの島というふうに縄張りがあるわけです。深い山から海のサンゴ礁に至るまで、境界線がはっきりしています。集落、集落が独立していて、伝統行事もしまぐち(方言)もひとつひとつ違うんです。顔の形も違います。それくらい境界線を大事にします。狩猟採集の社会では境界線がはっきりしていないと争いになるわけです。
奄美では15歳になると、自分の島の周りを歩きます。たとえばタケノコがでる時期やシイの実が落ちる時期になると、確認してこいということで、境界を歩くんです。そのとき、隣の島の人がいないと、見てないからといって境界を超えたりする。そうすると、「おまえ、境界を超えて取っただろう」と争いになることがあります。そのときに「ケンムンのせいじゃない?」ということでおさめるわけです。「ほんとうはあんたが取ったんだろう」といっても「「いやあ、ケンムンじゃない?」というと納得するわけです。だから、ケンムンというのは争いを避けるためにも使われるということなんです。ですから深い山にはケンムンはあまりいません。出没マップはだいたい集落の周辺域、入り口になるわけです。
ケンムンを見たという人は年々減っていますが、いま、奄美群島が考えるべきなのは、ケンムンを絶滅危惧種にしていいのかということです。アマミノクロウサギなどの動物も大切ですが、ケンムンを絶滅危惧種にしてしまうと、集落の共同体意識も崩れてしまうという恐れもあるんです。



ちなみにお話しをしてくれたケンムン村の村長で考古学者の中山さんは、ケンムンをあと一歩のところで見逃したという経験があるそうです。
田んぼの籠の中にケンムンを捕まえたという知らせを受けて見に行ったんですが、籠を開けたら、夜が明けて朝になっていたので見えなかったんだそうです。

いま、奄美群島は「世界自然遺産」を目指しています。これについて、中山さんは、まずは「島として畏れ敬うもの」をちゃんと島の人たちが大事にするところから始めないとダメだと話していました。自然遺産でも、文化遺産でもなく、複合遺産を目指すべきだともおっしゃっていました。

今回のお話しはポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!

【番組内でのオンエア曲】
・Comfort / David Mead
・秘密の森 / Keishi Tanaka
今週は、ちょっと怪談話の時期には早いのですが、奄美の森の中にいるという「妖怪 ケンムン」のお話です。
ケンムンは、奄美の人々が、昔からずっと語り継いできた妖怪です。
ケンは、木、樹木のことで、ムンは「もの」という意味で、つまり、「木のもの」。樹木に潜む妖怪、森に住む妖精ということになります。
今回訪れたのは、奄美大島の北東に突き出た 笠利町。案内してくれたのは、ケンムンのことを長年調べてきた考古学者で、「ケンムン村の村長さん」という不思議な肩書きもお持ちの中山清美さんです。

中山さんにつれられ、最初に訪れたのは、街道沿いに立てられた、大きな看板でした・・・。

◆島の宝
奄美群島では集落のことを島といいます。島の人達が畏れ敬い、守って残して伝えていきたいものを、地域の人達が自分たちの遺産として、島遺産から奄美遺産にしよう、奄美遺産を観光に活かしましょうよという取り組みなんです。
みなさんに、いちばんの島の宝はなんですかと聞くと、そういったものは何もないよといいます。それならば、守りたいとか、大切にしたいという場所があるかというと、それはあるよといいます。つまりそれが宝なんだということです。
最初は何もないといっていたのが、これもあった、あれもあったといって、30くらい出てきました。最初は10といっていたのですが、10では多すぎるから8がいいという話になりました。8はケンムンが嫌う数字なんですが、それだったら8つにしようということになりました。旧石器時代から残る遺跡があるというのは、島の人々が畏れ敬い、守り、残し、伝えたいということが今に維持されてきているということなんです。


中山さんは、奄美の文化財を保護する協議会の会長でもあります。笠利町の看板には、これを通じて選ばれた島遺産が紹介されています。
例えば、古くからわき水が出る場所。そのわき水は「聖水」として神事に使われていたそうです。また、すぐそばには宇宿貝塚もあり、やはりこれも島遺産になっています。
ちなみにこのわき水と貝塚のあたりには、首の無い豚があらわれる・・・という怖い伝説もあるんです。
そんな風に畏れ敬われ、残ってきた遺跡・文化財とともに、ケンムンの伝説もずっと語り継がれています。ではケンムンとは一体なんなのか。どんな姿をしているのか、ケンムン博士の中山さんに伺いました。

◆ケンムンの出る場所
ケンムンというのは妖怪なんです。カッパの仲間でもあるし、沖縄のキジムナーの仲間でもある。でもカッパとも違う、キジムナーとも違う。奄美の人たちはケンムンとよんでいるんです。そのケンムンがこの集落の周辺域に出るということがわかったんです。
ケンムンは恐れるものなんです。恐れるからそれ以上、その場所に入っていかないわけです。入るときには口タブという、おまじないを唱えます。山に入るときも、海にいくときもボソボソっと「わたしは今日はイノシシを一頭捕るだけで木は切りません。どうか獲らせてください」というようなおまじないをして入っていくわけです。そうするとちゃんと獲らせてくれる。
しかし黙ってそのままいい加減に行ってしまうと、お前は何しに来たんだということになって、ケンムンが悪さをして捕れない。そういう自然との関わりを密接に信じているということですよね。
ケンムンを知っていますか?と子どもからお年寄りまで聞いたら必ず知っている、聞いたことあるといいます。小学校など、いろいろなところにアンケート調査をしたら、だいたい80%は知っていますね。
でも見たという人はここ数年激減しています。昔はあちこちにいました。80代、90代の人に聞けば相撲をとったという人もいます。ケンムンは相撲が大好きなんです。弱いのに相撲を挑んでくるんです。
ケンムンを見たという人の話によると、身長は1mくらい、痩せていて、全身が毛に覆われていて、体育座りをすると、膝小僧が頭の上まで出るんだそうです。つまりか弱いわけです。それが相撲を挑んでくるので、投げ飛ばす。投げ飛ばしても、投げ飛ばしても、何回も挑んできて、夜明けになってしまう。そのうちに疲れてしまうので、人間が負けてしまうそうです。
そんなうふうに相撲をとったり、山に入ってきた人間に、ここに入れたくないというところでは石を投げたします。それを無視して行ってしまうと、引き回しの刑といって、山をあちこち連れ回して、自分では帰っているつもりだけどまた同じ場所に戻ってしまう。そうして山からおりてこなくて行方不明になってしまった人もいます。
そこはまたハブがでる場所でもあるんですね。この島と徳之島と沖縄には猛毒のハブがいるのですが、親たちは、あそこに行くとハブがいるからとは言わず、あそこにはケンムンがいるから行くなよと言うんです。そうすると怖いから、そこにはいかないということになる。
ケンムンがでるという場所には意味があるんです。それを調べていけば、こういった遺跡だったり、貝塚だったり、山城であったりといことに行き着くんですね。だから、そういったケンムンが出る、ハブが出るという場所は、逆にいえば大切に守ってきた場所なわけです。だからこの島には縄文時代に相当する遺跡とか、旧石器時代の遺跡とか、山城とかが多く残っているんです。



いかがでしょう。これがケンムンです。見たことある方いますか?奄美の人々はたいてい名前は知っていて、さらに、なんらかの体験をした・・・という人も多いんです。
そして、「あそこはケンムンが出るから近づくな」という言葉は、この土地で生まれ育った人なら、誰もが子どもの頃 言われた言葉だと言います。

◆足もとを見つめなおす
親たちも、あそこにいくとハブが出るというよりは、ケンムンが出るといったほうが子どもが近づかない。「あそこには妖怪が住んでいて、ここに来てはいけないと言っているから、行かないようにしようね。」「妖怪と友だちになれるように、妖怪が嫌がることはしないようにしようね」というふうに言うんです。
しかし今の子どもは逆かもしれませんね。ケンムンに会いたいから行こうって行ってしまうかもしれないですね。あんまり妖怪は仲良くなっちゃいけないんですよ。恐れるものだから、それ以上妖怪が嫌うことをしないように、妖怪と共存するように住んでいかないといけないねというふうに教えないと。可愛いからっていうのではありません。これは商品になるよとか、こうすれば売れるよといったらだめですよ(笑)。そうするとケンムンが怒って、しっぺ返しがきます。
最近、ケンムンを見たことがないという人がいるということは、島の自然環境に変化が出ているということかもしれません。ですからもう一度、たくさんあるこの島の宝物を見つめなおそう。この自然と共生している島の人達の暮らしに宝があるから、それを自分たちで再確認しようよというのがさっきの看板なんです。


今回のお話しいかがだったでしょうか。
このケンムンには、頭にお皿があるとも言われています。タコが苦手で魚の目玉が大好きという言い伝えもあります。また、日が沈んだ後は、外でケンムンの話をしてはいけないんだそうです。ですから、日没後は屋根のあるところで話をするんです。
この日は宇宿貝塚という場所でお話しを聞いていたのですが、周りの木々からなにかに見られているような気配を感じて、ゾゾッとしてしまいました。

来週もケンムンのお話しです。
お楽しみに!

【番組内でのオンエア曲】
・やさしさに包まれたなら / 荒井由実
・イラヨイ月夜浜 / 大島保克
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高橋万里恵
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