プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森〜voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。

今週は先週に引き続き、アメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんのお話です。
ビナードさんが先日発表した絵本『わたしの森に』。雪ぶかい、新潟県十日町の森を舞台にした、一匹のメスのマムシが主人公の物語。きょうは、このマムシというちょっと怖い蛇の、知られざる、すごい能力のお話です!


『わたしの森に』くもん出版(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

 この絵本ではマムシが交尾をするシーンがあります。普通はオスの精子がメスの体内に入って妊娠するかしないかということでしょう。ところがマムシって違うんですよ。オスの精子がメスの体に入ったら、メスのマムシはそれを体内に備わっている精子バンクに入れるんです。受精卵にしないで精子を取っておくスペースがあって、保存できるんです。そして、冬を越して生活が安定していれば妊娠する。でもちょっと無理だ、食料も足りないし妊娠は厳しいなと思ったらとっておいて翌年妊娠するんです。僕らが知っているデータでは4年以上とっておいたという記録があるんですね。こんなことができたら、人間も助かるよね。「この男いいなぁ、でも今仕事もいろいろ大変。でももらっちゃうか」と言ってもらって、とっておけば、翌年とかに妊娠できる。それを動物学者は遅延受精と呼んでいます。体の何かが判断しているのか、脳で決めているかという議論はあるけれども、明らかに選択肢がある。それは僕ら人間が持っていない離れ業です。命を作り出すすごい才能です。僕はそんなことは一切知らずに、マムシが好きだなぁ、いいなと思って、絵本を作り始めて、田島さんといろんなものを調べてみたら、ええ!?っていう。
 びっくりして故郷のヘビのこともいろいろ調べているとき、ちょうどミシガンにいる母から電話がかかってきて、遅延受援のことを知っていたかと聞いたら「知ってるわよ」と。しかも「白熊もできる」って言われたんです。そんな哺乳類がそんな離れ業なんかできるの?と思ったら実はできるんです。ただ白熊は哺乳類だから仕組みが違います。精子をとっておくのではなくて、受精卵のまま着床させないで保存するんです。凄いでしょう?冬眠に入るときに、子育を成し遂げるだけの体力と、体脂肪と栄養がないと、子供だけじゃなくて母親も犠牲になるから、そこで判断するわけです。冬眠に入るときに、できそうであれば着床する。できないかもしれないときは未着床のまま。それを白熊はやっているんですね。
 ヘビって卵を産むんですが、マムシは卵を体内で孵化させて、子供が成長して一人歩きできるときに生むんです。だからこの絵本の1番の山場は出産です。交尾をして、”まんまんまん”と体内で膨らんでパンパンになっている感覚に読者がなって、それで生まれる。シューシューと出ていくんです。この絵本では3匹なんですけどね。自然界ではもっと多くて10匹ぐらい出てくる時もあります。
 ミシガンにもマムシに近い仲間のガラガラヘビがいて、森に入るときに噛まれたら大変なんです。そういうことを考えると、噛まれないように気をつけようと思いますよね。それがすごく良いことなんですよ。足元をよく見る、誰がいるかなど考えながら進んでいく。そうすると、キノコがあったとか、アメリカもワラビみたいなのがあるんだけど、ワラビが出てきたとか、ヤマアラシの棘があるとか気づけるんです。鹿って角を落とすけど、角がなかなか見つからないんです。あれだけいっぱい落としているのになぜ見つからないのかというと、鹿の角はヤマアラシの好物なんですね。ガリガリガリガリ食べちゃう。だけどヤマアラシが見つける前に見つけられると、それでいろんなものが作れるんだよね。子供にとっては欲しいものなんだけど、なかなか見つからない。でもガラガラヘビに気をつけながら入っていくと見つかるんですね。僕はミシガンでいろんな森の恵みを見つけてきたんだけど、それはガラガラヘビのおかげ。それを心配だとか恐怖と捉えるとマイナスのイメージだけど、本当はすごく大きなプラス。おっかない奴がいるって良いことなんですよ。


アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。気になる方はぜひ「わたしの森に」をチェックしてみてください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Friends / Justin Bieber and BloodPop
・Gravity John Mayer
今週は、スタジオにアメリカ・ミシガン州出身で広島在住の詩人、アーサー・ビナードさんをお迎えします。
ビナードさん、新潟県のとある集落に通い続けていまして、雪国の「森」を題材に、一冊の絵本「わたしの森に」を発表されています。きょうはこの絵本に出てくる森と、その森の「ちょっと怖い生き物」のお話、いろいろ伺います!


〜「わたしの森に」ではずっと主語が「私」でページが進んでいきますが、私って蛇だったんですね。
 バラしちゃったね(笑)絵本の真ん中あたりで人間が森に入ってくるんだよね。人間て本当に鈍くて、いろんなものを踏んづけてから、「あ、山菜があった。キノコがあった」って気づくんだけど、マムシの場合は踏んづけるとかまれる可能性があって、痛い目にあう。でも踏まれたマムシも痛い目に合ってるんだね。幸いなことにこの絵本では踏んづける前に子供が気がつくんだよね。そこで初めて、この主人公はマムシだったって気づくんですね。それまではずっと「私」、「私」。
 ストーリーとしては、1匹のメスのマムシが新潟の雪深い十日町鉢集落あたりの森にいる。豪雪地帯ですから、雪の下の土の中にいる。動物たちは眠りながら感じるんだね。杉の木に雪がいっぱい積もって、それが温まるとズルズルとずり落ちる。そのドスンと落ちて、その響きを敏感に森を感じながら、その下にいる存在が語っている。雪の下には動物だけではなくて植物もすごい生命力を持ったふきのとうとかコゴミとかいて、それも感じながら語っていくんだよね。そして、雪が溶けて今度はいろんな冬眠していた生き物が出てくる。
 マムシって、僕らがちょっと想像が及ばないような才能を持っているんですよね。マムシの顔をよく見ると、目と鼻の穴の間に不思議な凹みがある。それを英語でピットというんです。僕の故郷にいるガラガラヘビといとこ同士みたいな親戚の関係なんだけど、そのガラガラヘビはピットヴァイパーといいます。顔にきれいにくぼんでいるところが左右の頬に目と鼻の穴の間にあるんです。昔の1950年代の百科事典があるんだけど、ピットの意味は凹み。でもそれが何のためにあるのかわかりませんと書いてあるんです。半世紀前は誰もその凹みの意味がわからなかった。でもその後いろいろ研究が進んで、わかってきたんです。今回の絵本にはそれをこの絵本の絵をかいた田島征三さんと議論しながら、可視化したんです。この凹みはもう一つの目なんです。僕らは光を感知できる目を持っていますが、マムシも光で見る目があるんだけど、目と鼻の穴の間の凹みは赤外線を見る目なんです。彼らは熱を全部ビジュアル的にとらえる。よく米軍の夜の作戦の映像なんかでも出てきますよね、ナイトビジョン。要はこれを体に備えているわけなんです。ちょっとした温度差は全部映像としてビットでわかるんです。
 森の中ではこれがものすごく大事です。特にマムシはネズミとかウサギとかを捕るわけ。このストーリーでは冬眠から目覚めてお腹がすいたところにトガリネズミが来て、「いただきましょう」とあります。そうなると、ピット器官の映像とかが見えてきます。マムシのピット器官は感覚的には何なのか。雪の下ではズシンシンズシンシン、シンシンと感じる。暖かいものが見えると「むんむんむん」が見える。たとえば僕らの体は暖かいから「むんむんむん」が見えてくる。そして、マムシは交尾して妊娠するんだけど、その膨らんでいくのを「まんまんまん」という擬態語のような言葉を繰り返し出て表現しています。「まんまんまん」「むんむんむん」「しんしんしん」という3つの擬態語が中心になっていて、ある時はっと気づいたんです。「マ ム シ」。全然そんなこと意図せずにやったんだけど、はっと気づいて田島さんに「マムシの頭文字になってるけど、これわざとらしい」と言うと、「誰も気づかないからいいんだよ」って。でも今までで小学生で気づいた人がいましたね。大人は絶対に気づかないですね。


〜でも絶妙な表現だと思ってました。「むんむんむん」はなんか熱を感じる音に聞こえますし。
読者がマムシの気持ちになってをれを感じたら、それが本当にいちばんこの絵本で伝えたかったことなんです。

アーサー・ビナードさんのお話、いかがだったでしょうか。来週もインタビューの続きをお届けします!


『わたしの森に』くもん出版
(文:アーサー・ビナード、絵:田島征三)

高橋万里恵さんがオープニングで話していた宮城県南三陸町「鮭・いくらまつり福興市」の様子です!



【今週の番組内でのオンエア曲】
・BUILT TO LAST / Melee
・WANT YOU BACK / HAIM
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