今週も先週に引き続き、『森林ジャーナリスト』の田中淳夫さんのインタビューです。
森と人との関係をテーマに取材、執筆活動を続けている田中さん。今日は、森の「いやし効果」をめぐる、ある活動についてジャーナリストとしての視点でお話いただきます。


〜「森は怪しいワンダーランド」のなかで、森林セラピーのことについてもお話されていますね。
私は仕事も含め、個人的にも森歩きはしょっちゅうしています。森を歩くとやっぱり気持ちいいんですよ。仕事で行き詰まっていても、森を歩くとすきっとして、新しいアイデアが浮かんだりとか、体も肩こりが治ったり。だから、森を歩くことの効用はものすごく感じています。もともとはそれは「森林浴」といわれていたのですが、それをもっと科学的に調べてみようという人がいまして、実際に調べてみると、森を歩くと血圧が下がるとか、脳波がおだやかになるとか、そういう効果があるんだということがわかってきました。それが森林療法と呼ばれるようになったんですが、それに目をつけて始まったのが森林セラピーなんですね。言葉は似てますが、これは地域づくり、まちおこしなんです。つまり、「森を歩くと健康になれる」といって人を呼ぼうっていう、一種の観光のメニューなんですね。ですから、森林セラピー基地などが設けられているんですが、それはなんとか客に来て欲しいということでやっているので、「健康になりたい」ということと微妙にずれがあるんじゃないかなと思いますね。だから、本当は一人、二人で歩くのがいいのに、何十人がぞろぞろ歩くイベントとしてやってしまったりとか、ガイドの資格制度がつくられて、免許をとらないといけないようになってしまったり、いろいろなことがあって、本来の思いと現在の実際の内容がだいぶおかしくなっているんじゃないかなということを感じています。

〜でも勉強することは意味ありますよね?
はいそうですね。内容は悪いことは書いていませんしね。もっと昔から「森林インストラクター」というものもあります。それはまさに森林の知識をつけて、他の人に森を案内するインストラクターです。それはそれでまたいい勉強になるんじゃないかなと思います。

〜森林を気持ちよく歩くためにこんな歩き方がいいというのはありますか?
森林セラピー基地でも見かけるのですが、登山になってしまっている人もいるんですよね。最後まで歩くぞ!っていってせっせと歩いている方もいらっしゃいます。それはちょっと違うんじゃないかなと思います。歩く過程に意味があるので、そんなに速度も上げなくてもいいですし、立ち止まるということも必要なんですね。たとえば、大きな木の下に座り込むとか、それも森林セラピーの一種になりますしね。ゆったりと周りの自然を感じながら歩くのが、森林セラピー、森林療法の効果なんじゃないかと思います。

〜田中さんご自身、プライベートでも森に接してますか?
私が住んでいるのは奈良県の生駒市で、大阪と奈良県の間にある生駒山の山麓なんですね。家のすぐとなりが山の始まりで、原稿が煮詰まると森に入って歩きまわるのは、日課みたいなものです。いわゆる里山で、道もたくさんハイキングコースみたいなのがあるんですが、ここに谷があるから、ちょっと下りてみようと行ってしまったり、そういうふうに知らないところを探して行ってしまう感じですよね。

〜本の中で、谷に落ちたっていう話がありましたよね。
低い山だし、そんなにでこぼも無いから、道がなくても森を突っ切ったら次の街に出るだろうと気軽に入っていったんですよね。そうしたら、大した高低差は無いと思ってたら、森のなかには3〜5mの崖があって、そこに川が流れていたり、狭い地域なのに以外なほど知られていない場所があって、そこを進んでいたらずるずると落ちてしまって痛い目にあったりしています。100m行けば住宅地が拡がっていて、そこに小学校があって、校内放送が聞こえているんですよ。そこで転んで遭難しかけてたんです。そういう意味では怖いですよ。そこで足を痛めて歩けなくなっていたら、それは本当に危ないですよね。

〜その里山は、田中さんご自身なにか活用されていますか?
生駒山のごく一部なんですが、うちで持っている部分があるんですね。そこが雑木林でそこで遊んでいるんです。あまりにも茂ってたら切り開いたり、また植えてみたりとか。デッキを築いたり、一時はツリーハウスづくりもやっていたんですけどね。そういうちょっとした遊びも森と遊ぶ醍醐味みたいなものですよね。これからの季節はタケノコが出てくるんです。これも竹が増えするという問題はあるんですけど、わたしはタケノコを掘るのをいちばんの楽しみにしています。

〜最後に、森林ジャーナリストとして、これからどんなことを伝えていきたいと思っていらっしゃいますか?
やはり、森の本当の姿を知ってほしいという気持ちはあります。一時期は、森のことをみんなに伝えようと思ってると、どうしても自然科学的に論じてしまうことがあって、小難しくなっちゃうんですよね。でも、今回書いた本のように、科学的な面もあるけれども、一方で精霊の話のような、不思議な世界もある。その両面があるのが森だと思うんですね。どっちも知っていただくと、本当の森のおもしろさがわかる。森のことを知らないと、森を破壊してもなんとも思わないんですね。森のことを知っていると、たとえばそこを開発するために伐採してしまおうというときに、「ちょっと待てよ」っていう気持ちになるんじゃないかと思うんです。ぜひ正しい姿を知って、楽しんでいただきたい。森と人とのつきあい方をぜひみなさんで考えていただきたいなと思っています。

森林ジャーナリスト田中淳夫さんのお話しを3回にわたってお届けしましたがいかがでしたでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください。

田中淳夫さんの本「森は怪しいワンダーランド」のプレゼントへのたくさんのご応募ありがとうございました。当選は発送を持って代えさせていただきます。たのしみに待っていてくださいね!

「森は怪しいワンダーランド」新泉社 田中淳夫著

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Dirty Work / Austin Mahone
・かわいいひと / チャットモンチー
今週も先週に引き続き、『森林ジャーナリスト』の田中淳夫さんのインタビューをお届けします。
森と人との関係をテーマに取材、執筆活動を続けている田中さん。海外の森に入ることも大変多いということなんですが、今日は田中さんがこれまでに出会った、森のなかでの不思議な体験について、色々伺います。


〜田中さんは森と人をテーマにしたいろいろな本を出されていますが、最新刊が「森は怪しいワンダーランド」。タイトルからしてとてもわくわくするのですが、この本では田中さんが体験した世界の森のお話がたくさん書かれています。いくつか教えていただけますでしょうか。
わたしは全然霊感のようなものが無いのですが、何年か前に南太平洋のソロモン諸島に行ったんです。これは学生の探検部と一緒に、そこにある洞窟を調査する目的で行ったんです。ソロモン諸島のなかにシンボ島という小さな島がありまして、そこに火山洞窟があるということで行きました。そこの地元の村の方々に泊めていただいて、5人で生活をしながら洞窟を調べるということをやっていました。
ある夜、5人とも寝ていたのですが、私だけふと目が覚めると、小屋の外から音がするんです。はじめは誰かが騒いでいるのかなと思ったのですが、だんだん笑い声が聞こえてきて、歌声が聞こえてきて、犬の鳴き声が聞こえてきて、お祭りをやってるんだなと思ったんです。見に行きたいと思ったのですが、よそ者が勝手に覗いていいのかななどと考えていたら、どんどん声が大きくなって、小屋の周りが全部騒ぎ出したんです。これはぜひ覗きに行きたいと思って、起き上がって外へ出たら、ぱたっと音が消えた。周りを見ても誰もいない。街灯もないようなとことですから、真っ暗闇で月の光だけなんですね。不思議だなと思って、翌朝村の人に聞いたら、精霊が出たんだろうって言うんです。一緒に行った学生たちに聞いても全然気づいていない。私だけが経験したんですね。これは空耳ではないってわざわざノートにメモを取っているんです。


〜田中さんが精霊の話を地元の方に聞いても当たり前みたいな感じなんですか?
いまはだいぶ時代が変わってきて、もうそんなの昔話だよという人もいるんですが、子どものころ見たという人も結構いらっしゃるんですね。ほんの少し前まで、精霊と一緒に生きていたという人たちなので、そういうのを感じる能力があって、いまは全然感じないけど、昔子どものころ、精霊よく出たな、って皆さんいいますよね。

〜他にもなにか不思議な体験がありますか?
国内では、私は仕事もあって、紀伊半島の中の山村巡りもしたのですが、せっかくだから、キャンプして、夜は森のなかで寝ようと思ったんです。車で行っていたんですが、テントを貼ろうとしたら雨が降ってきたので、しょうがないから車の中で寝ていたのですが、暇ですよね。だからカーラジオのスイッチを入れて聞いていたら、始まったのが怪談なんです。それも山で遭難する話なんです。わたしは霊感がないので怖くはないのですが、ふーんと聞いていて、そのうちに電波が乱れてきたのでチューナーをいじったら、電波が入る局があったんです。そうしたらまた同じ怪談話がはじまるんです。でもこれはキー局の番組を系列局が流しているんだと思って切ったんです。でもやっぱり暇なのでまたスイッチを入れたら、また同じ怪談が始まったんです(笑)さすがに同じ怪談を3回聞いたらやっぱり気分悪かったですよ。その晩は眠れませんでしたね。

〜そういう森のなかで見たり感じたりするものってなにかあると思いますか?
精霊がいるかどうかというのはその人たちの感じ方で、絶対にないとは言えません。私自身も感じたわけですから。でも森に何の興味もない人は森に行ってもなにも感じないと思うんですね。やっぱり森に興味があって、未知の部分を感じていたりとか、憧れているとか、そういうものを持っている方が、感じたりするんでしょうね。実際にいるのか、頭の中だけで感じているのかわかりませんが、そういう思いがいちばん必要なんじゃないかと思うんですね。

〜番組では奄美のケンムンという精霊の話を取り上げたこともあるのですが、田中さんはケンムンはいると思いますか?
私自身がケンムンを感じたということは無いのですが、そういう話は聞きますよね。沖縄ではキジムナーという名前になって存在するという話もあります。沖縄でも同じような経験があって、私は全然霊的なものは感じないのに、ある森に行ったらビンビン何か響くんですよ。空気が圧迫されているような感じで、そいうい森があるんですね。その森は地元では聖なる木があるとされている森だったんですね。

〜やっぱり科学では説明できないものっていうのはきっとありますよね。
樹齢1000年、2000年の木を見てなにかを感じたり、あるいは岩なんかでも感じるという方がいますよね。そういう大きな自然物はなにか感じるという人もいるわけですよね。だからそいう自然に対する崇拝とか憧れとか、そいういう気持ちが心のなかにあるんだろうと思うんです。特に日本人は自然を敬う気持ちを持っていて、それが無意識に出てくるものなんじゃないかと思うんですけどね。

〜田中さんが日本や世界の森を取材していく中で、木とか岩とか、印象深かったものってありますか?
私はボルネオによく通っていたことがあるのですが、熱帯雨林を行くと、森の中にはものすごい数の生物がいて、動物もいれば昆虫もいれば、菌類のような目に見えないものもいっぱいいて、それに自分は囲まれているんだと思うと、なにか感じるものはありますよね。

田中さんのお話いかがだったでしょうか。今回のインタビューにも出てきました田中さんのご本、新泉社から発売中の『森は怪しいワンダーランド』を3名の方にプレゼントしたいと思います。
ご希望の方は、番組のウェブサイト”MESSAGE”のところから「プレゼント希望」と書いて、2/24(金)までにご応募ください。ご住所、お名前も忘れずに!

「森は怪しいワンダーランド」新泉社 田中淳夫著

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Paris / The Chainsmokers
・りんごの木 / 大橋トリオ
今週は、『森林ジャーナリスト』の田中淳夫さんをお招きしました。田中さんに日本の森をめぐるお話から、世界中を旅されて見聞きした世界の森の「不思議な話」まで色々伺おうと思います。


〜田中さんは学生時代、探検部だったそうで、その後新聞社や出版社を経て、フリーの森林ジャーナリストになられた方です。森をテーマにした本も多数出版されていますが、森林ジャーナリストってどんなお仕事なんですか?
基本的には森林にまつわる、森と人に関係あるものをなんでも扱っていこうという気持ちで付けた肩書なんですが、この肩書を使っているのは日本で私だけです。ですから、日本一の森林ジャーナリストと名乗っているわけです(笑)。

〜森林ジャーナリストを名乗ろうと持ったきっかけは何だったんですか?
じつは私が「森林ジャーナリスト」という肩書を考えたわけではないんです。最初に森に関する本を出版したときに、書評などに森林ジャーナリストの本ということで紹介されて、このフレーズはいいな、ということでそのまま使わせていただいているんです。

〜最近、「街路樹サミット」の取材をしたと伺いましたが、街路樹サミットってなんですか?
これは街路樹の現状を憂いている人たちの集まりです。造園家の人が多いのですが、林業家ですとか、一般市民の方もいらっしゃいます。いま、街路樹はいろんな問題を抱えていて、皆さんよく見かけると思うのですが、電信柱みたいに枝を全部切ってしまうような剪定をしている木があったり、大木になりすぎて歩道から根がはみ出ているような木があったり、車道に枝がはみ出ていて見にくいという問題があったりします。また、病んでいる木も多く、内部で腐って、急に倒れたりすることもあって、それも問題になっているんですね。それはやはり管理、世話の仕方がおかしいんじゃないかということで集まって、それを訴えていこうというサミットが開かれたんです。1月に開かれたのですが、全国サミットとしてはそれが2度めだということでした。

〜街を歩いていると街路樹はたくさん見ますし、有名なイチョウ並木なんかもあったりしますが、じつはそこには問題があるんですね。
そうなんですね。健全に育っているとは限らない木が多く、また剪定の仕方があまりにも酷くて、見栄えも悪いし木のためにもよくないということがあります。ではなぜそういうことが起きるのかというと、担当者にあまり植物の知識を持つ人がいないんですね。道路の付属物としてつくられるので、土木関係者が思いつきで植えてしまったりするケースもありますし、剪定も、邪魔だったらどんどん枝を落としてしまうというような、あまり植物の生態を考えて管理していないので、それでそういうことが起きてしまいます。ですので、もっと造園とか林業とか、そういう植物に詳しい人が手をかけるべきじゃないかという趣旨でサミットが開かれて、そのことをみんなに呼びかけていこうという動きでしたね。

〜その街路樹の問題を解決するにはどうすればいいんでしょうか?
たとえば剪定の仕方も工夫をして、木を元気にすることも考えないといけませんし、あまりに大きくなった木は植え替えないといけません。でも切ろうとするとたいてい地元で反対運動が起きるんです。放っておくと枯れて倒れてしまうおそれもあって危険なのですが、大木を切ることに抵抗のある人が多いです。でもそれでいいのかどうかということです。木のためにも、地元の景観を考えるときにも、やっぱり知識を持って管理しないといけません。
多くの街路樹は戦後、ニュータウンなどが広がっていく過程で植えられる事が多かったので、植えてから50年くらい経っています。ですので、そこそこの大きさになっているのですが、街路樹の下の土の部分は極めて狭いので、それ以上根が広がりません。そうすると樹木にとってはおかしな成長になって、病気になるものも出てきます。たとえばきのこが生えて、中から腐ってしまっているような木も増えているんですね。


〜植えたときは見た目を気にして、その後のことはあまり考えられていなかったんですね。
そのときに細い低木を植えて、ちょっとした緑という気だったんでしょうが、50年後の姿を考えていなかったんだろうと思いますね。

〜そういった街路樹にも生態系があるんですか?
普通に考えれば、街路樹というのは、数m間隔で一本一本植えるので、そこにはあまり森林のような生態系は無いわけですが、そういう木でも上に枝葉が広がっていると、そこには虫がつくし、虫がいればそれを食べに鳥が寄ってきます。鳥はあちこちの街路樹や公園を順番に回っていくので、街路樹だけを見ると大した生態系ではないのですが、もっと大きい視点で、公園と公園が街路樹で結ばれていると見ると、そういう意味では大きな生態系があります。コリドーという言い方もするのですが、ある公園に住んでいる鳥や昆虫は、街路樹をつたって別の公園の方にも移動できるという効果もあるので、街路樹があることによって、その地域の生物多様性が増すということが最近の研究でわかってきています。
ですから、そこも考えて管理しないといけません。いきなり全部丸坊主に剪定してしまっては、いままでその木にとまっていた鳥はとまるところが無くなってしまうわけですね。


〜ネットにも興味深い田中さんのコラムがありますが、そのなかのひとつ、「360度カメラで森林情報」というのはなんですか?
これは国有林の話なのですが、国有林でもそこの木を売ったりしているわけです。でもその情報が全然世間に伝わっていないんですね。どんな森で、どういう生態系なのかということがわからないのに、利用してくれと言ってもできないので、そこに360度カメラを設置して、それをインターネットで常時見られるようにしようということなんです。まだこれからなので、成果はわからないのですが、色々工夫をして広めていこうということです。林野庁としては、その木を買いたいという人が現れるのを待っているらしいんですけどね。

〜なるほど、そういう使われ方なのですね。「大木の尊厳死を考える」というのはどういことですか?
大木が天然記念物に指定されていたりすることがあって、それはいいことなのですが、大木というのはつまり老木ですよね。樹齢何百年経っていたりして、かなり弱っている木もあるのですが、それを地元の方が熱心に、なんとか枯れないようにしているということがあります。それは結構なことなのですが、あまりにも無理をして、痛々しいような世話をしているのを見ると、そこまでして大木を守らないといけないのかなと思うんです。もっと自然のままにしておいて、寿命が来たらそれはそれでいいんじゃないかということをコラムとして書いたんです。でもかなり反発もありました。なにもいきなり切ってしまえという事を言っているのではなくて、自然に枯れるのを待ってもいいのではないかという提案なんですけどね。

田中淳夫さんのお話、いかがだったでしょうか。来週も引き続き田中さんのインタビューをお届けします。


「森は怪しいワンダーランド」新泉社 田中淳夫著

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Everlasting Love / Jamie Cullum
・All You Had To Do Was Stay / Taylor Swift
先週に引き続き、東京のど真ん中、皇居のお堀をめぐる自然観察ツアーのレポートです。

桜の名所として知られる千鳥ヶ淵、北の丸公園などは実は意外なほど 生き物豊かな水辺の自然があるんです。
そして、最近千鳥ヶ淵をご覧になった方は、「お堀の水が無くなってる」ことに気づいたかもしれません。
どういうことか。環境省自然環境局 飛島雄史さんが解説してくれました。

◆水をきれいにする「掻い掘り」
これは掻い掘りです。いまだいたい1mくらい水位が下がっている状態です。これは田安門に水門があるんですが、そこを開けっ放しにして、水門で下がるギリギリの水位まで下げている状態です。12月1日からはじめました。1月の末くらいには水を戻して、ここはボート場が3月からなのですが、それまでには元通りの水位でお楽しみいただくという予定になっています。
皇居のお堀は水が汚いというような話が以前からあったかと思います。元々は玉川上水の水なのですが、多摩川から色んな所に分配され、残りの水が、江戸時代から供給されていたんですね。それが、水がなくなったわけじゃないんですが、行き先が変わってしまって、玉川上水の水がこちらにはこなくなってしまった。で、水源がなくなりました。また、そのいっぽうで、何百年もするうちに、いろんなゴミが溜まってきますし、落ち葉であるとか、生き物の死骸、そういうものが積み重なってきます。それで我々も昭和50年台から水質をよくしよう、アオコをなくそうという取り組みをしてきまして、平成6年から堀水浄化施設というものを作りました。汚い要素のほとんどはアオコですが、これはそれを濾し取る施設です。濾し取って綺麗にした水は一番上流にある堀にポンプで放流する。それがまた戻ってくる。そういった水の循環ということを平成6年からしています。それによって、徐々にではありますが、水質がよくなってきています。今後その浄化施設をさらに改善していって、東京オリンピック・パラリンピック、その後に向けて備えたいというふうに考えています。
水環境を良くするというのは、実はいろいろな対策を組み合わせてやる必要があります。いまやっている掻い掘りというのは、底にたまった泥が悪さをしないようにするという手法です。底にたまった泥は、たとえば真夏になり、水をずっとためておくと、底のほうに酸素がなくなってきます。そうすると、下から汚いものの元となる窒素、リンが湧き出してきます。それを防ぐには空気にさらすという方法があります。泥のなかに酸素がを入れて有機物を分解して泥の性質を改善する方法として、この掻い掘りというものがあります。
掻い掘りは、実は新しい方法ではありません。昔から年末になると、村中総出で溜池を掃除して、乾かして、また来年使うと言うようなことを繰り返していましたから、非常に伝統的な方法です。ただし、掻い掘りの効果は数年しか持ちません。だから定期的にやる必要があります。


ちなみに掻い掘りは、千鳥ヶ淵のおとなり、牛ヶ淵でも平成15年、21年に行われています。そして、今回の千鳥ヶ淵の掻い掘りでは、ここにはどんな生き物が生息しているか、という調査も行われ、意外なほど生き物が豊富だということが分かったそうです。

◆お堀の生物
今回の調査でとれた魚は、大きな魚だとコイ、ゲンゴロウブナ、ギンブナ、ハクレンがといった魚がありました。ですが、それ以上に小魚が結構とれていまして、モツゴ、ジュズカケハゼ、トウヨシノボリ、ヌマチチブ、ワカサギ、その他にもテナガエビ、スジエビが特に多く見つかっています。ジュズカケハゼは特に多くとれているのが印象的でした。東京都のレッドデータブックに絶滅危惧2類で載っています。(環境省皇居外苑事務所 成瀬有香さん)

小さい在来の魚がここにもいるということがわかりました。これは、他の堀でも確認されています。ですから、ここは非常に汚い堀ということで、あまり生き物はいないなって思っていたのですが、そういうなかでも、こういった魚が随分いるということがわかりました。今回も泥の性質とか、色々なものを測りましたので、その結果を見て、その後どうするかといういことを決めていく。その材料にもしていきたいと思っています。あくまで浄化施設がメインでして、掻い掘り自体ですごくきれいになるというわけではないのですが、色々な組み合わせのなかでこういう取り組みは今後もやっていきたいと思います。


今回のお話いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・STAY TUNE / Suchmos
・Moving On and Getting Over / John Mayer
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高橋万里恵
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