- 2018.11.04
なぜ左巻きのカタツムリが存在するのか~細将貴さんインタビュー1
さてきょうは、森のなかにいる生き物たちにみられる「ある特徴」について調査を続けている、研究者の方をお招きします。
その特徴とはなにかといいますと・・・例えばカタツムリ。カタツムリの殻の部分を想像してみてください。さて、カタツムリの殻は・・・右巻きでしょうか。左巻きでしょうか。実はこれ、とっても興味深い理由で、どちらかに巻いているらしいんです!
東京大学の特任助教、細将貴さんにお話を伺いました。

元々生き物は何でも好きで、特に右左で興味を持ったわけではないのですが、大学生の時にたまたま受けた授業の中で、生き物に右左があると。それがとても大事な役割を果たしているというお話を聞いたんですね。アフリカのタンガニーカという湖に住んでいる魚のなかにうろこばかり食べる魚がいて、そのうろこを食べる魚は口がひん曲がっていて、個体によって相手の右側ばかり襲うものと、左側ばかり襲うものという2タイプいる。で、口が右に曲がっているものと、左に曲がっているものが半々いて、ちょうど半々に均衡が保たれているということを発見されたという話がすごく印象深かったんですね。で、自分もそんなかっこいい研究をしたいなと思ってテーマを探していて、今の研究に行きつきました。
~じゃあ同じ生き物でも、簡単にイメージすると右利きと左利きがいるということですね。
そうですね。利き手というのは人だけではなく、チンパンジーにもありますし、文献を調べると、ヒキガエルにもあるとか、鳥がとまるときに足を使う側がどっちだとか、いろんな研究があるんですね。
~すごく不思議なんですけど、ということは、左利きの生き物が残る理由というのがあるということですよね。
そうですね。マイノリティになるとなにか得なことがあるということを考えると、両方がひとつのグループにいるということを説明しやすいんですね。先ほどのうろこを食べる魚の場合は、左に曲がっているほうの魚が、相手に警戒されて食べるのが難しくなってくると右が増えていくと。で、増えすぎるとまた警戒されて、マイノリティのほうが得をするという状況になる。そういう仕組みで割合が半々に近づいているという考えができますね。
~細さんが特に重点的に研究を進めていらっしゃるのが、西表島や石垣島にいるある生き物と伺ったのですが。
はい、カタツムリばかりを食べる変わったヘビですね。セダカヘビという仲間のヘビです。

イワサキセダカヘビ
おもしろいことにカタツムリと、まあ与えればナメクジも食べますね。食べるものが決まっているんです。初めに研究しようと思ったのは、ヘビのほうではなく、食べられているカタツムリの研究としてでした。巻貝の仲間には右巻きのものと左巻きのものがいて、サザエとかタニシとか、我々がよく見る巻貝はみんな右巻きなんですね。

だけど、たまに左巻きの種類もいる。これは不思議なことで、右巻きのものもいて左巻きのものもいるとなると、ご先祖様はどうだったんだということですけれども、たいていの場合右巻きから左巻きの仲間が出てくるという、そういうイベントがあって、進化してきて、左巻きになっていくというイベントがあったと考えられるんです。ここがすごく不思議なことで、右巻きのカタツムリと左巻きのカタツムリは交尾しずらいんですね。彼らは雌雄同体なので、どちらがオスということはないんですが、とりあえず出会って、相手に精子を渡して卵を産むという過程を経て繁殖します。そのときに交尾が同じ巻きのもの同士だったらうまく姿勢を整えることことができて子どもを作ることができるのですが、巻きが変わっちゃうとそこがうまく合わなくなって、子どもを作れないはずなんですね。なので、右巻きの種類から左巻きの種類が出てくるということは、右巻きばかりの集団の中に左巻きがポンっと出てきて、それが数を増やしていって左巻きのグループになるということですけれども、数を増やせないはずなんです。でも左巻きのカタツムリは実際にいる。これは不思議なことで、解かれていない謎だったので、これを解こうと考えました。これを説明するのに、マイノリティならではの有利さがあったら進化しやすいのではないかと考えたんですね。それでマイノリティならではの有利さとして、食べられにくいということがあるんじゃないかと考えたんです。そうしてみていくと、巻貝を食べる生き物で、右巻きの巻貝を食べるのに特殊化した生き物が色々いるということがわかったんです。海の貝ってほとんどが右巻きなのですが、カニの仲間でそれを食べるのにとても具合がいいはさみの形をしたものがいることは昔から知られています。そういう生き物がいたら、左巻きのカタツムリも進化しやすくなるんじゃないかと思いました。それで左巻きのカタツムリがいるところにきっとそういう天敵がいるはずだと思って目星をつけたのがセダカヘビというヘビです。獲物のほとんどが右巻きなので、それを食べるのに特殊化していてもおかしくないんじゃないかと思って研究を始めたんですね。そして、セダカヘビは左巻きのカタツムリはうまく食べられないということが実験でわかってきました。
細将貴先生のお話、いかがだったでしょうか。続きはまた来週お届けします!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Look At What The Light Did Now / Flo Morrissey and Matthew E. White
・Don't Be Denied / Norah Jones
その特徴とはなにかといいますと・・・例えばカタツムリ。カタツムリの殻の部分を想像してみてください。さて、カタツムリの殻は・・・右巻きでしょうか。左巻きでしょうか。実はこれ、とっても興味深い理由で、どちらかに巻いているらしいんです!
東京大学の特任助教、細将貴さんにお話を伺いました。

元々生き物は何でも好きで、特に右左で興味を持ったわけではないのですが、大学生の時にたまたま受けた授業の中で、生き物に右左があると。それがとても大事な役割を果たしているというお話を聞いたんですね。アフリカのタンガニーカという湖に住んでいる魚のなかにうろこばかり食べる魚がいて、そのうろこを食べる魚は口がひん曲がっていて、個体によって相手の右側ばかり襲うものと、左側ばかり襲うものという2タイプいる。で、口が右に曲がっているものと、左に曲がっているものが半々いて、ちょうど半々に均衡が保たれているということを発見されたという話がすごく印象深かったんですね。で、自分もそんなかっこいい研究をしたいなと思ってテーマを探していて、今の研究に行きつきました。
~じゃあ同じ生き物でも、簡単にイメージすると右利きと左利きがいるということですね。
そうですね。利き手というのは人だけではなく、チンパンジーにもありますし、文献を調べると、ヒキガエルにもあるとか、鳥がとまるときに足を使う側がどっちだとか、いろんな研究があるんですね。
~すごく不思議なんですけど、ということは、左利きの生き物が残る理由というのがあるということですよね。
そうですね。マイノリティになるとなにか得なことがあるということを考えると、両方がひとつのグループにいるということを説明しやすいんですね。先ほどのうろこを食べる魚の場合は、左に曲がっているほうの魚が、相手に警戒されて食べるのが難しくなってくると右が増えていくと。で、増えすぎるとまた警戒されて、マイノリティのほうが得をするという状況になる。そういう仕組みで割合が半々に近づいているという考えができますね。
~細さんが特に重点的に研究を進めていらっしゃるのが、西表島や石垣島にいるある生き物と伺ったのですが。
はい、カタツムリばかりを食べる変わったヘビですね。セダカヘビという仲間のヘビです。

イワサキセダカヘビ
おもしろいことにカタツムリと、まあ与えればナメクジも食べますね。食べるものが決まっているんです。初めに研究しようと思ったのは、ヘビのほうではなく、食べられているカタツムリの研究としてでした。巻貝の仲間には右巻きのものと左巻きのものがいて、サザエとかタニシとか、我々がよく見る巻貝はみんな右巻きなんですね。

だけど、たまに左巻きの種類もいる。これは不思議なことで、右巻きのものもいて左巻きのものもいるとなると、ご先祖様はどうだったんだということですけれども、たいていの場合右巻きから左巻きの仲間が出てくるという、そういうイベントがあって、進化してきて、左巻きになっていくというイベントがあったと考えられるんです。ここがすごく不思議なことで、右巻きのカタツムリと左巻きのカタツムリは交尾しずらいんですね。彼らは雌雄同体なので、どちらがオスということはないんですが、とりあえず出会って、相手に精子を渡して卵を産むという過程を経て繁殖します。そのときに交尾が同じ巻きのもの同士だったらうまく姿勢を整えることことができて子どもを作ることができるのですが、巻きが変わっちゃうとそこがうまく合わなくなって、子どもを作れないはずなんですね。なので、右巻きの種類から左巻きの種類が出てくるということは、右巻きばかりの集団の中に左巻きがポンっと出てきて、それが数を増やしていって左巻きのグループになるということですけれども、数を増やせないはずなんです。でも左巻きのカタツムリは実際にいる。これは不思議なことで、解かれていない謎だったので、これを解こうと考えました。これを説明するのに、マイノリティならではの有利さがあったら進化しやすいのではないかと考えたんですね。それでマイノリティならではの有利さとして、食べられにくいということがあるんじゃないかと考えたんです。そうしてみていくと、巻貝を食べる生き物で、右巻きの巻貝を食べるのに特殊化した生き物が色々いるということがわかったんです。海の貝ってほとんどが右巻きなのですが、カニの仲間でそれを食べるのにとても具合がいいはさみの形をしたものがいることは昔から知られています。そういう生き物がいたら、左巻きのカタツムリも進化しやすくなるんじゃないかと思いました。それで左巻きのカタツムリがいるところにきっとそういう天敵がいるはずだと思って目星をつけたのがセダカヘビというヘビです。獲物のほとんどが右巻きなので、それを食べるのに特殊化していてもおかしくないんじゃないかと思って研究を始めたんですね。そして、セダカヘビは左巻きのカタツムリはうまく食べられないということが実験でわかってきました。
細将貴先生のお話、いかがだったでしょうか。続きはまた来週お届けします!
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Look At What The Light Did Now / Flo Morrissey and Matthew E. White
・Don't Be Denied / Norah Jones