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REPORT

第108回 11月9日「炊飯器」後編
2025.11.09
1955年(昭和30年)に発売された世界初の自動式電気炊飯器。
その開発には多くの苦労がありました。

米と水の量によって沸騰までの時間は変わり、気温や温度にも影響されます。
竈門での羽釜による米炊きは、主婦の経験や勘に基づく部分が多く
言語化されていないことを電気製品に落とし込まなければならなかったからです。

メーカーから開発を依頼された三並義忠さんは、
美味しい炊飯のメカニズム解明を試みました。
わかったのは「強火で一気に炊くこと」。
そのためには、釜の水が沸騰してから20分間加熱してスイッチを切る。
しかし、季節や気温などに影響されずに、
どんな条件でもお米が美味しく炊ける炊飯器を実現するのは困難でした。

突破口は、水をタイマー替わりに使うアイデアを思いついたこと。
釜の外にも水を入れる部分を設計し、20分で沸騰する量の水を入れ、
沸騰したら、それを感知してスイッチが切れる仕組みをつくり
自動式電気炊飯器が誕生しました。

この発明は「日本の主婦の睡眠時間を1時間延ばした」と言われ
発売から5年で家庭への普及は3割近くに達しました。
1970年代になる頃には9割を超えています。

一方で、炊飯器は進化を続けました。1972年には保温ジャー機能が登場。
1988年にIH式が出て、より全体を均一に加熱できるようになり、美味しさが増しました。
2010年代半ばからは、高級IH炊飯器が主流になっています。
今では、精米具合に合わせた炊飯ができたり、パンを焼いたり、
料理ができる製品もあって、昔の人が知ったら、さぞ驚くことでしょう。 

こうした進化も、開発に携わった人たちの努力があったからこそ。
感謝の気持ちを込めて、美味しいご飯を炊きましょう。
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