音づくりのプロフェッショナル石丸耕一さん/ポストカー in萩
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- 2019/12/08
トーン・マイスター 石丸耕一さん

小山「はじめてトーン・マイスターという肩書きを知ったのですが、これはどういうお仕事なんですか?」
石丸「マイスターというのはドイツ語で親方という意味なので“音の親方”、劇場の音に関するすべての責任を負う人間ということですね。舞台の公演のプランを立てたり、若手のオペレイトの指導をしたり、劇場の機材を管理したり、調子の悪いソリストにそれとなくアドバイスをしたり……」
小山「そこまでされるんですね。指揮者のようなものですね」
石丸「影の指揮者ですね」

石丸「じつは小山さんとは同期です」
小山「えっ! 嘘!? 僕と話したことありますか?」
石丸「あります。新入生の歓迎会で」
小山「あだ名は何でしたか?」
石丸「“コウスケ”でした。“クンクン”でしたよね?」
小山「そうです(笑)」

小山「ああ、だから覚えてなかったのかも……。東京芸術劇場には、いつ入られたんですか?」
石丸「1999年、東京芸術劇場が立ち上がった時に、音響として来てくれと招かれて行きました。ただ、その直前に縁があって、当時はソビエト、モスクワのボリショイ劇場へオペラの音響の勉強に行く機会を得まして。ボリショイ劇場で勉強をしてから東京芸術劇場に行きました。以来30年間、ずっと東京芸術劇場です」
小山「まさか同級生がこんな偉大な仕事を……いやー、今日はコウスケに会えてよかった(笑)」

石丸「歌舞伎座や新橋演舞場は松竹の劇場でして、当時の松竹の映画や時代劇も手がけていました。あの頃ですと、『必殺仕事人』とか」
小山「刀で刺された時の『ブシュッ』という音は、どうやって作るんですか?」
石丸「キャベツをのこぎりで切って、それを録音したものをスクラッチさせると、あの音になります。包丁だとサクッと切れてしまうので、凄みのある音にならないんです」
宇賀「のこぎりなんですね、面白いですね!」
そしてなんと、今日は石丸さんにこのスタジオで、効果音の実演をしていただけるんです
石丸「効果音を作る道具というのは、その専用に作られた道具と、その身の回りのものを使うのとふた通りに分けられます。まずは身の回りのものから。電動歯ブラシと、くしゃくしゃにしたアルミホイルを用意しまして……」

石丸「これは放電の音です。映画『ターミネーター』で未来からタイムスリップしてくるシーンで使われています。電動歯ブラシの音はあとでカットしています」
続いて、石丸さんが手に取ったのはフライ返し。これは西洋の映画の剣劇のシーンで使用するもの。
宇賀「目で見るとお好み焼き屋さんみたいになっているけど、すごい、なるほど!」
石丸「これは舞台が中国だと、お玉と中華鍋になります」

石丸「木の切れ端にテープを貼っただけのもので。人をひっぱたくシーンで、役者の動きに合わせて舞台袖で叩いて音を出すんです」
他にも、長野県で見つけたカエルの鳴き声を出す道具、映画『ハリー・ポッター』でも使われた、イギリスの汽車の汽笛の音を出す道具などを見せていただきました。石丸さんは音を出す道具を200〜300ほど所有されているそうです。





石丸「さすがにお仕事なので、必ず結果は出すようにしますが、もっとよく出来たんじゃないかと思うことは毎回あります。とくに、毎回難しいと感じるのは風の音ですね」
宇賀「風はどうやって表現しているんですか?」
石丸「具象的に、風は何かに当たって音を出しているわけですが、私の師匠はそれじゃ駄目だ、と。『マイクを持って風の音を録っても舞台やドラマには合わない』というんです。『風はどこに吹いているんだ、人の心の中に吹いているんだ。登場人物やそれを観ているお客さんの心の中に吹いているんだから、つくらないと駄目だ』と」
小山「どうやって作るんですか?」
石丸「大きな風車のような機械もあるのですが、師匠は口でやっていましたね」

小山「生の舞台で、緊張しませんか?」
石丸「音を出すのが仕事ではないんです。音に芝居をさせてやる。音を通じて自分が出ずっぱりで芝居をしているのだと、師匠には言われましたね」
小山「もう一つ、音の質問をしてもいいですか? かつてあったのに、消えてしまってもったいないなと思う音はありますか?」
石丸「昔は『耳をそばだてる』という日本語があって。人は音に対して能動的に聞く姿勢があったのですが、いまはボーッとしていても音の方から勝手に飛び込んでくるようになってしまって。みんな音に対して受け身になったのが失われてしまったことかなと思います。『耳をそばだてる』という日本語もほとんど死語ですよね」
宇賀「確かにそうですね。自分から聞きにいくって、なかなかしていないと思いました」
小山「石丸さんは音のプロフェッショナルですが、“プロフェッショナル”ってどういうことだと思いますか?」

そして、薫堂さんからは最後にこんな質問が。
小山「石丸さんのこれからの夢や、目標は何ですか?」
石丸「師匠に『常に視点を客席に置け』と言われ続けてきたので。何か大きな目標というよりは、これからもずっと客席に視点を置いて、毎回の公演が終わったあとお客さんの笑顔を見送っていくことです。来年、東京芸術劇場は30周年を迎えますが、40年、50年とずっとそれを続けていきたいと思っています」

宇賀「ありがとうございました」
石丸耕一さん、ありがとうございました。

東京芸術劇場・コンサートホールの世界最大級のパイプオルガン。石丸さん率いる東京芸術劇場の音響部と、キングレコードの録音スタッフがタッグを組み、芸劇30年の歴史に蓄積された『芸劇オルガン』ベスト・マイクボジションと、キングレコードの録音技術で、究極のパイプオルガン・レコーディングに挑んだプロジェクトの第2弾です。
「超絶サウンド芸劇オルガン」
手紙文化を盛り上げよう! ポスト会議#28
全国におよそ2万4千局ある郵便局と連携を取りながら、商品開発をしたり、手紙文化を盛り上げていく企画コーナー「ポスト会議」。番組でも毎回ご紹介している、日本中の絵葉書映えする風景を巡る移動型郵便局「ポストカー」の旅。今回は、山口県萩市でおこなわれた「萩・ふるさと祭り」におじゃましました。萩の優れた産業や特産品等を展示・販売する萩市最大の産業まつりです。

ラジオネーム・しいちゃんが自慢したいのは「ご飯のお供、しそわかめ。これ一つでご飯が何倍でも食べれちゃう。萩市民ではないのですが、山口県のおいしいおかずです」。

小山「ごはんやおにぎりにかける以外でも、うどんとか卵焼きと一緒に調理してもおいしいらしいですよ」

宇賀「ちょっと気になったので調べてみたのですが……萩市では平成28年度から『新生児おむつ購入費助成事業』をスタート。新生児一人につき2万円を上限に、萩市内でおむつを購入すればその費用を援助! その他にも、チャイルドシートは1万5千円、ベビーカーは1万円、ベビーベッドは8千円を上限に費用を援助してくれるそうです。すごいですね」

萩・ふるさと祭りのポストカーに足を運んでくださった方、ありがとうございました!

そして……まだまだどんなデザインのものになるかは決まっていませんが、引き続き、SUNDAY’S POSTからの年賀状がほしい! という方は、下記の宛先まで、「年賀状希望」と明記して、お手紙かはがきでご応募お願いします。ご応募は12月9日の消印まで有効です。

【郵便番号102-8080 TOKYO FM 「SUNDAY’S POST」】
たくさんのご応募お待ちしています!
今週の後クレ

「近隣の郵便局の皆さんと一緒に手作り年賀状を作ってお客様に差し出していただこうという取り組みをここ3年ほどしておりまして。すごく楽しんで作ってくれているので”また書いてみるよ”って言うお子さんもいらっしゃいますし、この年賀状教室をキッカケに”今年はちょっともう何枚か出してみるわ”って言う方もいらっしゃったり、あとその作られた年賀状を受け取られた相手の方から嬉しくて電話が掛かってきたっていうお声を聞いたりして、やっぱりいいねっていうことを言っていただいて。それはすごく嬉しかったです。」
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この番組ではみなさんからの手紙を募集しています。
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を教えてください。
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