三協フロンテア presents The Starters(ザ スターターズ)

パーソナリティ ユージ・吉田明世20代~30代の若手起業家をゲストに迎え、
彼らがどんな発想や未来への展望を持ってブレイクスルーを起こそうとしているのかお話を伺います。
高い意識とモチベーションで社会に風穴を開けようと取り組む彼らの話が、
「あなたも、世の中を変えられる!」という、
朝、仕事へ向かうビジネスパーソンのやる気のカンフル剤になることを目指してゆきます。

Guest ゲスト

2025.09.09

キャリアとライフが両立できる社会を

株式会社 Aill
代表取締役
豊嶋千奈
企業向けのAI縁結びナビゲーションアプリ
「Aill goen」の運営


ONE MORNING「 The Starters 」
火曜日のこの時間は社会に風穴を開けようと取り組む若き起業家をお迎えして
そのアイデアの根っこにあるものや未来へ向けたビジョンを伺います。

今週のゲストは先週に引き続き、株式会社Aill 代表取締役の豊嶋千奈さんです。
豊嶋千奈さんは、大学卒業後、武田薬品工業に入社。薬剤の営業、マーケティングなどをご担当。そして2018年に「Aill(エール)」の事業を開始。2020年に女性日本起業家代表に選出されています。エールは、「Aill goen(エールゴエン)」という縁結びアプリを提供されています。婚活系のアプリは個人で参加するのが一般的ですが、「Aill goen」は、厳選された企業の社員だけが対象。企業も福利厚生の一環として社員に提供し、社員の出会いの場を提供しているというユニークなサービスです。しかも、「Aill goen」はAIを搭載していて、実際に会うタイミングについて「まだ早いです」や、話題について「好きな映画を聞いてみて」など、いろいろとアドバイスしてくれます。まさに「今」という感じのサービスでした。
今回は豊嶋さんのこれまでについてうかがいます。武田薬品にいた頃は、営業職として実績伸長率全国一位を三回も取られているということで本当にすごいですよね。学生時代から、将来的にご自身で会社をやりたい!という思いはあったんですか?

「学生の頃は全く思っていなかったですね。いい成績が取れて、ありがたいことに女性幹部候補生に選ばれたのですが、働いているとプラスアルファの仕事が来て、どんどん忙しくなっていったんです。」

幹部候補生に選ばれたことでやる気もアップして仕事頑張ろう!となると思いきや、辞めてしまわれたんですね。

「29歳の時に、会社の人と「そろそろ私生活も大切にしたいなと思うんですけど、このままいくと武田と結婚しそうな勢いだぞ」といったことを話していました。関西の会社ということもあって一笑い起きて盛り上がったんです。武田のことは今でも大好きなんですがそれが「自分の人生のQOLってなんだろう?」と思ったきっかけであり、この「Aill goen」というサービスを作ろうと思ったきっかけでもあります。」

それって多くの人が抱える悩みだと思うんです。でも、そこでアクションに起こして、自分の幸せだけじゃなくて、他の人たちの幸せまで、解決しようとしているじゃないですか。どうしてそういう考えに行きついたんでしょうか?

「出発は自分が欲しいサービスを自分で作ろうという想いからでした。各所にヒアリングをしてみて、みんな同じように課題を抱えていたので、これはなんとかしたいなと思いました。」

起業もそうですし、アプリを作り、AIを使いこなすなんてすべてが営業の仕事とは全く違うところにあるのかなと思うんですが、その辺りはどのようにクリアしたんですか?

「すごく大変でしたが、うちのAIって実はタケダの時に自分が培った営業のノウハウが、一番初めの教師データになっているんです。ここはタケダでの知見が生きたかなと思います。昔の人が言った「営業と恋愛は紙一重だ」という言葉にかけて、知ってから人を愛する過程と、お客さんとリーチしてからロイヤルカスタマーになっていく心の変遷。どんな行動をして、どんな情報を共有して、欲しい情報をどれだけ出すのかというような流れはかなり一緒で転用できました。」

こんな言い方は失礼かもしれないですが、武田薬品さんにいる時、豊嶋さんは恋愛が得意ではなかった。でも、営業ではそれなりの成績を出されて自信があった。 これを、恋愛に置き換えたら、恋愛もうまくいくんじゃない?という発想の転換ですよね。
それでもアプリやAIの開発はご経験なかったと思うのですが、どのようにしたんですか?

「それはまずAIの先生に話を聞こうと思い、北海道大学の川村秀憲教授に、突撃みたいな形でAIのシステムを導入したアプリ作れませんかね?と企画書だけ持って突撃し、そこで8時間ほど話し合いました。そこで川村先生と意気投合し、「技術面は僕が責任持つ」と言ってくださり、エンジニアの方を紹介してもらいました。」

8時間はかなり盛り上がりましたね。人と人がつながってこのサービスを作り上げたんですね。
アプリの内容に戻りますが、そもそも個人ではなく条件をクリアした企業だけが使えるアプリにしようと考えたのはどうしてだったんですか?

「企業がWell-Beingを掲げているのは、結局、「従業員さんの生産性を上げて、会社の利益につなげたい」という考えからだと思うんですが、独身の方も多いのにそういった方々が疲弊していて、会社が言っていることと違うじゃないか!と思ったんです。これをちゃんと整理立てて言えば、これって会社の課題なんじゃないかと考え、そこにもしかしたら買ってもらえるチャンスがあるんじゃないかと思い、企業専用にしたんです。それに、一般向けにしたら、もうマッチングアプリって何百個もあるじゃないですか。レッドオーシャンに飛び込むことになるので、それは避けたかったんです。」

なるほど、そういう経緯だったんですね。実際に事業を始めてからは順調でしたか?

「かなり大変でしたね。」

なかなか導入してくれる企業が見つからなかったということですか?

「そうですね。恋愛サービスで予算をつけるというのは企業として相当ハードルが高く、売り上げに直接的につながるわけじゃないというのが一つの課題でした。」

それに2018年に事業をスタートしたということは、コロナの影響もあったんじゃないですか?

「かなりありました。企業様に直接会えなかったので、得意の営業が封じられてしまったのも苦しかったですね。」

そんな中でも、実際に今サービスを1500社にまで広げていますが、ここまで拡大できたポイントは何だと思いますか?

「会社と従業員さんの幸せがつながっているという部分が、「Aill goen」という1つの手段によってご納得いただいたことじゃないかなと思うんです。 やはり働くためにはパートナーの支え合いが必要です。弊社のサービスは、転勤ができる人は転勤ができる人同士で、できない方はそこの地域に住んでいる人同士でマッチングされるようになっているので、どこに配属されてもちゃんと支えあえる人ができる。 ここは企業様にも大事なことだと刺さってきたように感じます。」

今の時代、物価が上がっている一方で、すぐに賃金上げますってできない現実があるじゃないですか。じゃあ、働いている人たちは会社の何を好きになるのかと言ったら、「この会社は私のことを思ってくれてるんだ」や、「この会社にいることによって、すごく頑張れてやる気につながるんだ」といった、何かきっかけが欲しいんですよね。そういった意味では恋愛や私生活の部分を我々がサポートしますよという姿勢は、すごく会社との相性を良くする大きな武器になりますよね。

「おっしゃる通りだと思います。」

これまでうまくいかなかったこともあったと思うんですが、盛り返していくために必要な考え方や、うまくいかなかった時の発想の転換は、どのように生まれましたか?

「盛り返していくという部分で言うと、日々の積み重ねだなと起業してみて思いました。
武田薬品の時の私は恐らく傲慢だったんです。「私全国一だし」みたいな気持ちは正直ありました。でも、起業してタケダの看板が外れると何もできないんですよね。そんな何もない中で、いろいろな人が優しさをくれたんです。そこで周囲の人に心から感謝するようになりました。全然恩返しはできなかったんですが、そういった感謝の気持ちや、いろいろなネットワークが大変な時に生きてきますね。」

お人柄もあって、多くの人を引きつけて、それが今このサービスにつながっているのかなと思いました。
最後の質問になります。これからの夢を教えてください。

「キャリアとライフが両立できる社会づくりに貢献して、日本を元気にしたいという思いで起業したので、「Aill goen」含め、今後どんどん事業も発展させていくつもりです。今の日本の課題って、ちゃんと社員さんの幸せが会社の幸せにつながる。ここがちょっと難しい部分だと思うので、ここをちゃんとつなげて、結果的に、日本や世界が元気になる仕組み作りを実現して、社会に貢献していきたいなと思っています。」

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