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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

21.06.15

出版元が“猛省”を求めた毎日新聞の風刺画

nullネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。

BuzzFeed Japan News 副編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!


『出版元が“猛省”を求めた毎日新聞の風刺画』


吉田:人気絵本『はらぺこあおむし』をモチーフにした毎日新聞の風刺画に対し出版元の偕成社が「猛省を求めたい」とする社長名義の文書をサイト上に掲載しました。問題になっているのは、6月5日付 毎日新聞の朝刊、イラストレーターの『よこたしぎ』さんが1998年から連載している、『経世済民術』という風刺画コーナーです。タイトルは『エリック・カールさんを偲んではらぺこIOC食べまくる物語』。IOCのバッハ会長ら3人のメンバーが『あおむし』となって『放映権』と書かれた『ゴリンの実』を食べている様子が描かれています。


ユージ:『はらぺこあおむし』は、かなり有名な絵本で、我が家にもあるんですけれども、お子さんがいる家庭は、結構、持ってる方も多いかもしれませんね。


吉田:そうですね。『はらぺこあおむし』は、先月亡くなったアメリカの絵本作家、エリック・カールさんが1969年に出した絵本です。世界中でロングヒットしています。日本では、1976年に出ていて、未だに人気が続いています。小さなあおむしが、もりもりと食べ続けて、美しい蝶になるお話で、数ですとか曜日の認識を織り込んだり、穴あきの仕掛けを凝らしたりしている絵本です。


神庭さん:お二人はどう思いましたか?今回の件は。


ユージ:ん〜…。正直、この『はらぺこあおむし』のストーリーが、今、吉田さんが紹介してくれた通り、もりもり食べ続けて、“美しい蝶”になるというお話なんですよね。だから、「風刺がちょっとかみ合ってないな」と思いましたね。


吉田:そうですよね。風刺画というのがこういうものなのかな?と思いながらも、ここにね、子供も大好きな『はらぺこあおむし』が使われてしまったのはちょっと悲しいですね。


ユージ:バズフィードでもこの件について取材されてますよね。神庭さんはどう思いましたか?


神庭さん:やっぱり、ユージさんがおっしゃるように、ダジャレとしてね、そもそも、『はらぺこあおむし』と『はらぺこIOC』ってダジャレとしても無理がありますし、単純に風刺としてちょっと面白くないかなというふうに思いますね。


ユージ:そうなんですよ!面白いかどうかが結構重要で。


神庭さん:結構大事ですよね!


ユージ:全然面白くないんですよね…。


神庭さん:利権で肥え太った『あおむし』に例えて批判したいという意図だと思うんですけど、絵本の本来の筋とかけ離れているんですよね。偕成社の今村正樹社長も公式サイトに掲載した文書の中でこういうふうに指摘しています。

『はらぺこあおむし』の楽しさは、あおむしのどこまでも健康的な食欲とそれに共感する子どもたち自身の「食べたい、成長したい」という欲求にあると思っています。
金銭的な利権への欲望を風刺するにはまったく不適当と言わざるを得ません。

というふうに書いているんですけれども、やっぱり、最後、美しい蝶になるという話なのに、じゃあ、むしゃむしゃ利権をむさぼった人が最後に美しい蝶になるというのは、全然かみ合わないですよね。私もIOCとかバッハ会長に対して特にいいイメージは持っていないですけれども、だとしても、批判の材料に合っていないというか、都合よくつまんで使うのは違うかなと思います。


ユージ:一方でですよ、『表現の自由』というのがありますよね。だからそうなると、規制までは出来ないですよね。


神庭さん:そうですね、そこが大事なところで、今回の件で注意しないといけないのは、偕成社は毎日新聞に対して“猛省”、すごく反省してということは求めているんですけれども、“撤回”とか“修正”とか“謝罪”まで要求しているわけではないということなんですよね。


ユージ:あっ、なるほど!


神庭さん:BuzzFeedの取材にも今村社長はこんなふうに答えています。

私自身、表現の自由や風刺の重要性を認識していますが、大切にしている出版物なので、納得がいかなかった。一言いっておかないといけないと、文書を出しました。ことを荒立てたいわけではありません。

というふうにおっしゃっていて、パロディーとか風刺含めて、『表現の自由』というのは最大限保障されないといけないんですね。一方でその表現が「イマイチだな」とか「センスが悪いな」と思ったら批判する自由もあるし、これは、版元や作者に限らず、誰にでも保障されている権利だと思います。
僕は好きな漫画で、藤子・F・不二雄先生の『エスパー魔美』という漫画があるんですけれども、その中に「くたばれ評論家」というエピソードがあって、主人公の魔美のお父さんは画家をしていて、批評家にすごい辛辣な批判を浴びるんですね。魔美は、「悪い人には天罰が下る」とか「あんなひどい批評をかいた」と怒るんですが、 お父さんは「それは違うぞ」というふうに諌めて、こう言うんですよ。

「公表された作品については、見る人全部が自由に批評する権利をもつ。どんなにこきおろされても、さまたげることはできないんだ。剣鋭介に批評の権利があれば、ぼくにだっておこる権利がある!!あいつはけなした!ぼくはおこった!それでこの一件はおしまい!!」

と。これはすごいいい言葉で、発表する自由はあるし、それに対して、「いや、気に入らない」とか「おかしいだろ」というふうに指摘する権利もあるので、そこは健康にお互い意見を出し合えばいいわけで、「謝罪だ!」、「撤回だ!!」という話では、今回は少なくともそういう話ではないのかなと思いますね。


ユージ:だから、偕成社の社長も撤回・修正を求めているわけではないけど、僕側からも意見を言わせてもらうよと、ちょっと猛省してほしいと。お互い表現の自由をうまく使っていて、ただ、表現の自由の中にも節度というのがあるので、自由だから言ってもいいんだけど、それを受けて、周りの人たちがどう思うかというのもすごく重要なポイントなんじゃないかなと思いますね。


神庭さん:人気キャラクターである『あおむし』を使ったら、返り血を浴びということも当然あるわけですから、そこは認識したうえで、覚悟を持って、意味がある形で、文脈に沿って使わないと、こうやって批判されちゃうということですよね。



そして、今日の #ユジコメ はこちら。






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