22.07.12
新型コロナウイルス、「新規感染者数の数字の意味」について
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
BuzzFeed Japan 編集長の神庭亮介さんにお話を伺います。
神庭さんに取り上げていただく話題はこちら!
『新型コロナウイルス、「新規感染者数の数字の意味」について』
吉田:政府 新型コロナウイルス感染症対策 分科会の尾身会長は昨日、岸田総理との面会後、取材に応じ、最近の感染者増加について『第7波』との認識を示しました。一方、『まん延防止等重点措置』などの行動制限については、「今のところ必要ない」としました。そんな中、毎日新聞が、<「新規感染者数」3月以降調査縮小、数字の意味は?>という見出しで新規感染者の数字の意味を改めて問うています。
ユージ:神庭さん、基本的な話にはなるんですが、感染者の数はどうやって数えているんですか?
神庭さん:『感染症法』によって、お医者さんは、新型コロナなどの感染者が出たら届出をするように義務付けられているんですね。コロナだけでなく、結核など80を超える感染症について、保健所経由で都道府県に全数を報告することになってまして、届出を怠ると、50万円以下の罰金を科されます。こうやって日々全国の新規感染者数が積み上げられていっているわけですね。
ユージ:新聞の記事は、『3月以降調査縮小』となってますけども、これはどうなんですか?数え方が変化してるということですか?
神庭さん:数え方というよりは、補足対象が微妙に変化しているといいますか、厚生労働省は3月に、クラスター発生を防ぐための『積極的疫学調査』を緩和・縮小する方針を打ち出したんですね。『積極的疫学調査』は、濃厚接触者とか無症状の感染者を洗い出して、感染のリンクをたどるためのものなんですけれども、これが結構大変で、『第6波』のさなかに保健所の業務を圧迫していたという事情がありました。そこで、緩和・縮小の方針を出して、保健所のリソースを高齢者施設とか病院とかに集中させるという妥当な判断だったんですけれども、結果として、無症状感染者をくまなく拾うことは難しくなりました。そうすると、「網目の細かい調査をやっていた頃と比べて、数値データに連続性はあるんですか?」と、「ちゃんと拾いきれているんですか?」という疑問が当然、出てくるわけですよね。
ユージ:なるほどね!だから、『3月以降調査縮小』なんですね!?
神庭さん:そういうことです。毎日新聞では、『日本医師会総合政策研究機構』の森井大一 主任研究員のこんな声を紹介しています。
「新規感染者数の意義がさらに曖昧になった点は否定できない。統一的な運用が保証されなくなり、日々発表される数値だけ見ても、あまり意味がない」
もちろん、大掴みの傾向を掴んだり、今後の流れを読むためのデータとして意味はあるんですけれども、毎日の様に「上がったぞ!」、「下がったぞ!」と一喜一憂するのはどうなんだろう?と僕も思います。傾向を掴むのが目的なら全数報告じゃなくて、季節性インフルエンザのようにですね、特定の医療機関で定点観測すればいいんじゃないか?という議論もあるんですね。
吉田:その定点観測には、反対意見もあるんでしょうか?
神庭さん:2つハードルがありまして、1つは、純粋に感染症対策として、マンパワーに余裕があるならしっかり調べた方がいいんじゃないのという専門家もいます。もう1つは、法制度でして、年明けからこの番組でも何度か議論してきました、『2類・5類問題』ですね。新型コロナは“2類相当”とされていますけれども、2類だと全ての感染事例を把握して、診断後すぐに報告しないといけません。季節性インフルエンザとか百日咳、はしかと同じ“5類並み”であれば定点調査でよく、届出も7日以内で済みます。そうすると、医療機関とか保健所の負担が劇的に軽くなりますよね。ただし、5類にすると患者さんの医療費負担が出てしまうという問題があって、そんな背景から「2類相当から5類相当に大丈夫なの?」、「時期尚早じゃないんですか?」という議論もありまして、政府としては、2類相当の枠組みを維持しつつ実質的に5類へ寄せていく、玉虫色の『骨抜き作戦』をとってきたわけですよね。
吉田:このまま、その“玉虫色の対応”というのが続くのでしょうか?
神庭さん:ある種、決断を先延ばしにしてきたわけですけれども、第7波に入りまして、決断の時がじわじわと近づいているのかなと思います。『m3.com』というサイトのアンケートによるとですね、開業医の52%、勤務医の49.7%が「5類相当にすべき」と回答してまして、感染者の届出についても、お医者さんの半数以上がですね、「定点報告とすべき」と答えているんですよね。東京都医師会は先月、『指定感染症5類感染症全数把握対象疾患相当』というですね、舌を噛みそうになるような新しい類型をつくって、新型コロナを2類からそちらの類型に移すという独自の見直し案を提案しました。これは、“2類でも5類でもない新類型”で、感染者の全数報告とか、医療費の公費負担については従来通りキープしたうえで、保健所による入院勧告であるとか、就業制限、健康観察は原則やめるという内容なんですね。この類型でも結局、全数報告やるんじゃないの?という話なんですけれども、ゆくゆく5類に近づけていく過程での“ワンクッション”と考えるなら、検討に値するのかなと思います。
ユージ:医師会のこの案も玉虫色っぽいところがある気がするんですけど、実現するんですか?
神庭さん:政治家からすると、2類から5類に引き下げた途端に感染爆発して、責任を問われたくないという心理がどうしてもあると思います。ですが、参院選の大勝で『黄金の3年』を手に入れた岸田政権にとって、踏み込んだ決断もしやすい政治環境が整いつつあるのかなというふうにも言えると思いますね。『全数報告の是非』とか、『2類相当の見直し』も含めて、第7波の悪化を前に本格的な議論のスタートを期待したいなというふうに思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 12, 2022
「新型コロナウイルス、新規感染者数の数字の意味について」
感染者数を全国区のニュース番組で発表するべきなのか、
もしくは、調べればすぐに出てくるくらいで良いのか。
僕は、毎日耳にするほどではなくて良いのではないかなと思います。#ワンモ
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 12, 2022
全員に周知して欲しい時は、感染者数が先週と比べて著しく増加したときだけで良いと思います。
新型コロナウイルスBA.5株に置き換わりつつあるということで、
ここまでくるとずっと続くものなのかなと思ってきました。#ワンモ
#ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 12, 2022
そうなった時に、一人一人感染症対策は日常的に続けて、
感染者数は気になった時にチェックしたり、
周りで増えてきたなと思ったら意識変えてみるとか、
そういう向き合い方にシフトチェンジして良いと思います。
#ワンモ