22.12.20
日本の少子化、政府が示した改革方針について
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は「BuzzFeed Japan」編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
【日本の少子化、政府が示した改革方針について】
吉田:政府の「全世代型社会保障構築本部」は16日、今後の改革方針を示す報告書を決定しました。神庭さん、報告書ではどんなことを打ち出しているのでしょうか?
神庭さん:少子化を「国の存続そのものに関わる問題」と位置付け、いくつかの対策を打ち出しました。1つが、出産育児一時金の引き上げです。出産費用の負担を軽減するために、現状42万円の出産育児一時金を来年4月から50万円にアップします。その財源として、後期高齢者医療制度から出産育児一時金の一部を負担する仕組みを提言しています。
吉田:8万円のアップですが、効果は期待できるんでしょうか?
神庭さん:子育て世帯に手厚くするという意味で、やらないよりはやった方がいいのかもしれませんが、出産育児一時金を上げても、すぐまた出産費用が上がってしまうので、結局いたちごっこだと指摘する声もあります。病気やケガの治療と違って、出産は自由診療になります。医療機関が自由に値段を決められるんですが、この10年ほど右肩上がりで上昇し続けています。一時金の方もそれを追いかけるようにアップしていて、日経新聞によると1994年に30万円でスタートして以来、2006年に35万円、2009年に42万円と上昇してきました。引き上げは、今回で実質5回目になるそうです。卵が先かニワトリが先かですが、一時金を上げることでかえって出産費用の高騰を招いているのではないかという見方もあります。出産を自由診療ではなく保険適用にして診療報酬制度の枠内で対応するなど、根本のところで「便乗値上げ」を防ぐ仕組みが必要ではないかなと思います。
ユージ:そう思いますね。間もなく我が家にも、もう一人生まれてくる予定なので、改めてお金の面でかかるなぁというのが正直な印象なんですよね。報告書では、ほかにどんな対策が載っているんですか?
神庭さん:児童手当の拡充や、現状では育児休業給付の対象外となっている自営業者やフリーランス、ギグワーカーの方々に育児期間中の新たな給付を検討するよう求めています。ただ、後期高齢者医療制度から一部負担する、と財源をある程度明示した出産育児一時金と違って、児童手当の拡充に関しては「恒久的な財源とあわせて検討」というなんとも曖昧な書きぶりなんです。いまは、子ども1人あたり1万円から1万5000円を支給していますが、これをいくらに引き上げるのか?数兆円はかかるみられる財源をどう担保するのか?といった具体的なプランはなかったので、少し腰が引けた印象があります。
吉田:少子化の問題は、ここ何十年も議論されています。改めて現状を教えて下さい。
神庭さん:今年の出生数は80万人を割り込む可能性が高いとみられています。実は国立社会保障・人口問題研究所の2017年段階での試算では、80万人を割るのは2033年と推計されていたんです。国のシミュレーションを10年以上も前倒しして爆速で少子化が進んでいます。総人口も、国の中位推計では2053年に1億人を割って9924万人に、2065年には8808万人まで減少するとみられていますが、こうした推計もさらに前倒しで実現してしまう可能性があります。
河合雅司さんの『未来の年表』という本には、将来のシナリオが淡々とつづられていて、
2026年 認知症患者が700万人規模に
2030年 百貨店も銀行も老人ホームも地方から消える
2040年 自治体の半数は消滅の危機に
2042年 高齢者人口が約4000万人とピークに
…というかたちで、少子高齢化の深刻さがリアルな実感をもって伝わってくるので是非ご一読いただくとよいかと思います。
ユージ:先進国の多くで少子化は進んでいるようですが、神庭さんは今回の報告書をどうみましたか?
神庭さん:少子化を「国の存続に関わる問題」と強い言葉で表現しているわりには、少し打ち手に欠け、財源の裏打ちもありません。厳しい言い方をすると、ピントがずれている気がするんですね。独身研究家の荒川和久さんがYahoo!ニュース個人で公開した記事がありまして《出生数が増えない問題は「少子化」ではなく「少母化」問題であり、解決不可能なワケ》というタイトルなんですが、2015年のデータで、既婚女性は平均1.94人の子どもを産んでいて、実は第2次ベビーブームの1970年代からその数は2人前後でそんなに大きく変わっていないそうなんです。一方で、母親の絶対数は1985年から2015年の30年の間に半分以下になっているということです。荒川さんは《少子化はそもそも婚姻数の減少によるもの》《問題なのは、少子化ではなく「少母化」》と指摘しているんです。この記事、僕は目から鱗でした。もちろん子育て支援は子育て支援でやるべきだと思いますが、婚姻数が減っている根本原因も目を向けないといけないと思います。「若者の結婚離れ」の背景に「お金の若者離れ」があり、結婚・子育てがもはや贅沢品になりつつある実情にも、しっかり目を向けて考えていく必要があるのではないかと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 20, 2022
「日本の少子化、政府が示した改革方針」について
少子化問題はここ何十年も議論されていて、「国の存続そのものに関わる問題」と位置付けられている割には、なかなか有効な対策が講じられていないように思います。?#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 20, 2022
まず、通常の出産にともなう入院費が保険適用ではなく自由診療であることに疑問を感じましたし、出産育児一時金が上がったとしても、医療機関が値上げをしているのであれば見直す必要があると思いました。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 20, 2022
また、今朝紹介した「出生数が増えない原因は”少子化”ではなく”少母化”問題である」という、独身研究家の荒川和久さんの記事(https://t.co/lOVnyKO0qc)がとても腑に落ちました。実は、既婚女性一人当たりの出生数は、第二次ベビーブームの1970年代とさほど変わらないそうです。#ワンモ
#ユジコメ④
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 20, 2022
しかし、子どもを産む産まない以前に、家族の在り方は多様化しているので、子どもを産もうという決断をした人たちには手厚い補償を引き続き考えていく必要があると思いました。#ワンモ