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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

23.11.29

AIの未来を握る4社『GOMA』そのうちの1社『Anthropic』とは?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
コメンテーターは引き続き、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【AIの未来を握る4社『GOMA』そのうちの1社『Anthropic』とは?】

吉田:クーリエ・ジャポンによりますと、アメリカ誌「ATLANTIC」は生成AIの分野で注目を集める4社を会社名の頭文字から「GOMA」(ジー・オー・エム・エーで「ゴマ」)とし、「AIの世界では、全てがたった4社に集約されつつある。Google、OpenAI、Microsoft、Anthropicである」と報じています。「Anthropic」だけ、聞いたことがない会社で気になりますが、まずは塚越さん、Google、OpenAI、Microsoftについて改めて教えてください。


塚越さん:OpenAIは従業員が数百人と少数ですが、去年11月にChatGPTで生成AIブームの火付け役となったスタートアップ企業です。ChatGPT発表直後に、Microsoftは100億ドルを段階的に投資すると発表し、ChatGPTを基盤としたチャットボットを、Microsoftの検索エンジン「Bing」に導入しています。現在もMicrosoftはOpenAIの技術をベースに、「Copilot」というサービスを展開し、WordやExcel等で生成AIが使えます。OpenAIとMicrosoftは蜜月関係にあるといえます。これに対抗するのがGoogleで、ChatGPTに遅れつつも、独自のチャットボット「Bard」を発表しています。検索や地図、ドキュメントに生成AI機能を搭載すると発表しており、MicrosoftとGoogleは生成AI競争の真っ只中にあります。


吉田:「Anthropic」を初めて聞いたのですが、どんな会社ですか?


塚越さん:Anthropicは、もともとOpenAIに所属していた元幹部たちが、2021年に立ち上げたスタートアップ企業になります。今回、OpenAI内部で様々な対立があってCEOのサム・アルトマンが解任されたり復帰したりとニュースになりました。その詳細はまだ分りませんが、こうした対立は以前にもあり、その時に去った人達がAnthropicを立ち上げています。そのAnthropicは主に「Claude」というサービスを展開していて、ChatGPTと似ていながら得意分野が異なっていたり、何よりOpenAIよりも大幅に安い価格を設定しているので、企業が使いやすいということで後発ながら大手企業との提携を増やしています。半年前は生成AIを利用している企業の提携先9割以上がOpenAIだったのですが、最近は15%近いシェアをAnthropicが獲得している、といった報道もあり追い上げつつあります。Anthropicは独自に数十億ドルの資金調達をしていたり、生成AIにあまり手を出していないAmazonが40億ドルを投資したり、Googleも続いて20億ドルの投資をしています。まとめると、OpenAIとMicrosoftの2強ががっちりと手を組んでおり、対抗するGoogleはAnthropic等と提携しているという構図です。


ユージ:この4社が、生成AIの分野でリードしている理由は何でしょうか?


塚越さん:OpenAIのサム・アルトマンCEOが言っていることですが、生成AIモデルを動かすのは「目玉が飛び出るほど」高くつくそうです。ある分析によれば、ChatGPTの運用は、サーバーに強い負荷がかかるもので、1日で70万ドル(約1億円)かかるとされています。Googleの生成AI「Bard」と会話するのは、通常のGoogle検索の10倍のコストがかかる。開発となると大量のデータを動かすので、もっとお金がかかります。AIを使用すると検索の10倍コストがかかります。さらに開発となると、大量のデータを動かすのでさらにお金がかかります。このコストに加えて、すでに巨大な資金力とクラウドサービスを持っているMicrosoftとGoogleが強いです。そして、それらと提携するOpenAIとAnthropicといった企業に、他の新興企業はついていけないという状態です。


ユージ:生成AIの分野で優位に立っている、この4社、塚越さんは、どうご覧になっていますか?


塚越さん:この4社がすべてを握るかといえば、まだまだ先は分からないかなと思います。例えば、数年経つとITはコストが下がるので新しいところが入ってこれるということもありますし、実はMETA(旧Facebook)もChatGPTに匹敵する大規模な言語モデルをつくっています。ただ、こちらはまだAIの使い道がメタバースなのかSNSかなど、定まりきっていないので目立っていないですが、大きな企業が本腰を入れてくればどうなるか分かりません。その上で重要なのは、これだけの力をもつ生成AIをどう開発運用するかの方針です。今回は、OpenAIのサム・アルトマンCEOが解任されて電撃復帰したのですが、その背景まだ分かっていません。ですが、簡単に言うとサム・アルトマンCEOは、どんどん開発を進めようとする立場だと言われています。対して反対意見は、「ゆっくり着実に。もっと倫理的な設計をしましょう」ということで、この対立があったんじゃないかなと言われています。実際、Anthropicつくった人たちがOpenAIを去ったのも、Microsoftと手を組んで、どんどんビジネスを進めるという方針に不満があったからと言われています。もちろん、Anthropicもすでに高額な投資をされていますので、そういう二項図式にならないとは思いますが。問題は、「ゆっくり、着実に」という方針か、「どんどん進める」方針の二項対立があるので、これを気を付けながら今後のAIの展開気を付けて欲しいなと思います。


ユージ:1番心配な点は、AIが人類を支配するのではないかと皆さん不安を感じていますが、その倫理を企業がどこまで守りきれるか注目したいなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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