24.07.03
アメリカで社会問題化する『破滅的消費』。一方、日本は?
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「アメリカで社会問題化する『破滅的消費』。一方、日本は?」
吉田:三菱総合研究所政策・経済センターの研究員、田中嵩大さんによりますと、アメリカでは、今を楽しむために浪費を重ねる「破滅的消費」が社会問題化しているということです。塚越さん、「破滅的消費」というのは聞き慣れない言葉ですが、何なのか教えてください。
塚越さん:お話のあった三菱総合研究所の田中嵩大さんによれば、破滅的消費(DoomSpending)と呼ばれる行動について、明確な定義はないものの、例えばブルームバーグでは「若い世代が、自分たちの経済状況が絶望的だと考えて浪費すること」と表現しています。どういうことかというと、まずはコロナ禍をきっかけに住宅や生活用品など、あらゆるモノの価格が上昇し、労働市場も変化しています。こうした要因から自分が生きる社会を悲観して、場合によっては住宅購入や結婚を諦めてまで、モノをたくさん買う、あるいは宝石などの贅沢品を浪費して不安を紛らわせようとすることが言えますね。
吉田:この「破滅的消費」がアメリカで社会問題化しているということですが、これにはどのような背景があるのでしょうか?
塚越さん:やはり、アメリカの若年層の間で経済的不安が高まっているということです。金融企業の「クレジットカルマ」が2023年に行った調査によると、Z世代やミレニアル世代(1981〜90年代中頃までの生まれ)では、自分の経済状況を不安視する割合がおよそ7割と、全世代の中でも最も高いということです。同じくコンサル企業の「デロイト」が行った調査でも、Z世代とミレニアル世代のおよそ半数以上は、将来的に結婚や住宅購入は難しくなると回答しています。簡単にいえば、将来不安というストレスの緩和のために破壊的消費を行っており、こうした世代(わかりやすく言えば20~30代)のおよそ4割はクレジットカードなどを使いすぎるといった、破壊的消費の傾向が見られるということです。
照英:アメリカでは若者が「破滅的消費」に走っているようですが、日本でも同じような現象は起きているのでしょうか?
塚越さん:日本も基本的にはアメリカと同じで、住宅価格や生活用品の値段が上がって、雇用や収入も不確実性が高いです。内閣府の「社会意識に関する世論調査」によれば、経済的なゆとりと見通しが持てないと回答した20~30代は、2022~2023年と大きく増加しており、物価高等で若者の経済的不安が広がっていることは間違いありません。一方で、日本の若者はアメリカの若者のような「浪費」に関しては、マクロな現象としては見られていません。内閣府の先ほどの調査でも、将来に備えるか毎日の生活を充実させて楽しむか、という質問に対しては、将来に備えると回答した割合が、若者を含めてコロナ禍後は大きく増加しています。つまり、日本では今より将来に備える「倹約傾向」がコロナ後に増えているということです。これは2008年の世界金融危機(リーマンショック)の後にも見られるもので、日本は経済危機に直面すると倹約傾向になる。これは何となく分かるかなという気がします。
照英:経済的不安に対する消費行動が、日本とアメリカで異なるのは、どうしてなのでしょうか?
塚越さん:まずは国民性の違いですね。一般的に言われるような、消費が美徳と考えるアメリカと貯蓄が美徳と考える日本の違いがあります。ただ他にも、コロナに関係なく日本はバブル崩壊後の長期低迷だったり、少子高齢化による不安など、様々な要因があり、アメリカ以上に日本は不安が大きいのかなと思います。また経済が不安だから破滅的消費が増えるアメリカと、倹約志向の日本だと、日本の方が健全とも言えますが、消費がずっと縮小すると国内経済も冷え込むことになります。あとは消費を過度に抑制すると、様々な経験もできなくなります。昨今は、特に子供の教育に関して「体験格差」という、幼い頃の学校以外での体験の問題が指摘されています。子供への投資は倹約しないという家庭も多いと思いますが、20代などの大人になった後も例えば海外旅行のような体験をする/しないことで、体験に関する差が出てしまう可能性もあります。
照英:アメリカの「破滅的消費」と日本の「倹約傾向」は、塚越さんはどう思われていますか?
塚越さん:この問題ですが、一方でビジネスインサイダーの記事によれば、アメリカのZ世代は、経済について他の世代よりも楽観的にみている、というレポートもあります。これは賃金の良い職業に転職できたり、日本に比べると景気がよくなるんじゃないかなと思います。やっぱりそうなってくると、破滅的消費はまずいですが、健全な消費も多くあると考えられます。ここは日本とはやっぱり異なります。日本は、特に経済的不安。特に若者には多いので、ここを根本的に何とかしなければいけないのですが、そこはなかなか難しいところだと思いますね。
照英:色々なことを考えると、先ほど先生が話していましたが消費が美徳と考えるアメリカ、貯蓄が美徳と考える日本ということでちょっと考えていかないといけませんね。
そして、今日の #照コメ はこちら。
#照英さんコメント①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 3, 2024
日本もアメリカも、住宅や生活用品の値段は上がっていて、雇用や収入の不安から、消費または倹約になる傾向があります。日本人はどうしても、将来の不安を考えると倹約になってしまいますが、何かに備えるための気持ちは大切だと思います。#ワンモ
#照英さんコメント②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 3, 2024
例えば、自分たちの子供の世代から、お金の勉強をしっかりして、「お金に働いてもらって、お金を捻出する」という、知識を学べる環境を学校には作ってほしいなと、子を持つ親として感じました。将来的に考えても、是非一度、見直していただきたいです。#ワンモ
#照英さんコメント③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) July 3, 2024
まずは、自分たちが貯蓄しないといけない金額を計算して、その目標に向かって、一つ一つ準備していくことが重要です。しかし、「破滅的消費」の考え方も理解できるため、破滅しない、ちょうど良い消費にも賛成したい気持ちです。#ワンモ