24.09.04
最低賃金、上げ幅が最も大きかったのは徳島県、過熱する“脱最下位”争い
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「最低賃金、上げ幅が最も大きかったのは徳島県、過熱する“脱最下位”争い」
吉田:今年度の都道府県別の最低賃金が先週木曜日に出そろい、厚生労働省が発表した時給の全国平均は、前の年度に比べて51円増えて1,055円でした。引き上げ額は過去最大です。国が示した「目安」の50円を27県で上回り、上げ幅が最も大きかったのは徳島県でした。「84円」引き上げて980円と大幅な引き上げを決めました。塚越さん、まずは今回の最低賃金引き上げについて詳しく教えてください。
塚越さん:最低賃金については、毎年厚生労働省の「中央最低賃金審議会」で、都道府県を経済情勢に応じてA~Cランクに分けて目安を示します。これを受けて、各地方の最低賃金審議会がそれぞれ決定します。今年度の目安は「一律50円アップ」で、目安通りだと全国平均は1,054円となりますが、50円より高くする県が相次いで平均は1円上がって時給「1,055円」となりました。これは、大体10月頃から適応されることになっていますので、みなさんがお住まいの地域の最低賃金をチェックされてもいいかと思います。バイト代が上がると思います。
吉田:最低賃金の上げ幅が最も大きかったのは徳島県ということですが、これはどうしてなのでしょうか?
塚越さん:まず徳島県は去年の最低賃金が896円で、今年は「84円」と平均の50円より34円も高い、大幅アップとなりました。なぜこれだけ上がったのかというと、徳島県は去年の最低賃金が、全国でワースト2位でした。徳島県の後藤田正純知事は全く納得せず、今年7月に「他県との人材獲得競争を勝ち抜くには、最低賃金の向上が不可欠」と、知事に権限はないものの大幅な引き上げを要請していました。徳島労働局によると、審議会では使用者(つまり会社側)は目安とされた「50円」を提示しましたが、労働者側は「104円以上」と示して対立しました。ただ徳島県の審議会は、徳島県の経済力を総合的にみると、全国の中位より上位に位置しているという見解を示しました。経済規模でいうと、ワースト2位ではなくて真ん中より上です。去年の47都道府県の真ん中くらいの額は大体930円くらいになります。これに今年の目安となる50円を加えて「980円」とすることで決定しました。去年が896円ですから、最低賃金は1割近くアップすることになります。徳島県は、去年のワースト2位から一気に27位に上昇しました。
ユージ:上げ幅すごいですね。下の方から脱出だったらもう少し抑えた金額でもよかったものの、上げてきましたね。働く人にとっては良いことですよね。これに関して、最低賃金の“脱最下位”争いが過熱しているという見方もあるようですね?
塚越さん:そうです。最低賃金が上がるのは良いことですが、問題がないわけでもありません。例えば去年、残念ながら最下位だった時給893円の岩手県は、今年は59円引き上げて952円として、951円の秋田県を抜いて最下位を脱しました。ただ、大幅な引き上げは人件費の増加につながるので、企業の中でも、中小企業にとっては経営に打撃を与えてしまうことになります。一方で県としては「給料が低い県」というイメージは払拭したい。岩手県の経営者協会の専務理事は、「他県と比べた順位は意識せざるを得ない」とも話しています。一方、今年最下位になるのは「秋田県」です。秋田県の審議会が金額を決めたのは他県よりも比較的早く、目安の50円より4円多い54円の引き上げを先月8月5日に決定したわけですが、これをみて他県も追従する形になります。例えば金額の決定が遅かった先ほどの岩手県は、秋田県より1円高く設定。他にも秋田より1円高い県が多く、去年40位だった秋田県は今年最下位になりました。秋田県の審議会で公益委員をしている方は朝日新聞の取材に対し、先に決めた秋田県に1円プラスするのは、最下位を避ける以外の経済合理性が見出しにくい、と述べています。つまり、最下位になりたくないだけで金額を決めてないか?ということですね。またその上で、最低賃金が実力より高く設定されてしまう可能性もあるから、厚労省の目安通りに一律アップする方がまだフェアだと言っています。
ユージ:最低賃金をめぐる、こうした状況。塚越さんは、どうご覧になりましたか?
塚越さん:一気に上がっていくので、それ自体はいいことですが、上がりすぎても人件費が高騰しすぎてそもそも人を雇えなくなります。決め方にも、今話した通りでみると結構色々な内部のことがあるので、このあたりはもっと調整が必要なのかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
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