24.10.30
アメリカで起きている、多様性を尊重する企業に対する反発 大統領選挙への影響は?
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「アメリカで起きている、多様性を尊重する企業に対する反発 大統領選挙への影響は?」
吉田:アメリカ大統領選挙は、来月5日に投開票が行われます。こうした中、アメリカで従業員の多様性を尊重する経営方針を掲げている企業などに反発する活動家が現れ、こうした企業は経営方針の変更を迫られています。塚越さん、アメリカでみられるこの動きについて教えてください。
塚越さん:ハリスさんとトランプさんで情勢が拮抗している中、多様性配慮という流れに対する批判があります。アメリカで最近「woke」という言葉がよく聞かれています。目覚めるの動詞「wake」の過去形で、「目覚めた」という意味です。簡単に言えば、日本語の「意識高い系」に近い揶揄する言葉で、トランプさんやトランプさんを支持派の保守派などが批判的な意味で使う言葉です。ウォークはもともと、黒人独特の英語用法から生まれた言葉でもあり、差別を受けてきた黒人が権利意識に「目覚める」といった良い意味もあるのですが、最近は人種だけでなくLGBTやマイノリティ問題、気候変動や移民問題などを重視するリベラル派を揶揄する時に使われる言葉になっています。これらの根底にあるのは、人種や性的指向への差別や偏見の克服を目指す「ポリティカルコレクトネス」を否定する動きにあります。また最近は、企業経営者のポリティカルコレクトネス的な発言や多様性配慮の経営姿勢を「Woke Capitalism(ウォーク資本主義)」と批判する動きもあります。
吉田:従業員の多様性を尊重する経営方針を掲げる企業などに反発する活動家が現れたということですが、こちらは、どういった人物でどんな考えを持っていますか?
塚越さん:例えば、保守派の活動家で30代半ばといわれるロビー・スターバックさんという方です。この方は、多様性重視を打ち出す企業の姿勢を「拒む自由もあるべき」と訴えています。彼は、職場で政治や社会的価値観を押し付けるなとか、多様性やウォーク的な姿勢を捨てて、どんな人も歓迎する場所にして欲しいと述べています。多様性を否定する人、つまり人種差別を正当化する人も歓迎してということが読み取れますが、このスターバックスさんのXのフォロワーは60万を超えていて、彼がウォーク的な企業に不買運動を呼びかけて、経営陣に圧力をかけています。その対象となったのが、二輪車大手の「ハーレーダビッドソン」や、自動車大手の「フォード・モーター」、他にも農業機械系メーカーやビール企業など、アメリカの有名企業が次々とターゲットになっていて、特に企業が推進する従業員の「多様性、公平性、包摂性」を推進する経営方針を批判して、こうした経営方針の変更を迫られた企業も多いです。スターバックさんはトランプ支持で、最近は日本の自動車メーカーも標的にしています。性的少数者に配慮した活動に不満を持つスターバックさんは、「こういった企業の車は買わない」といったことを述べています。
ユージ:「多様性への配慮」をめぐる動きについて、塚越さんは、どのようにご覧になりましたか?
塚越さん:まず前提として、多様性への配慮などは促進すべきでしょう。2020年にアメリカで大きな動きとなった「ブラック・ライヴズ・マター」では、結局アメリカでは未だに黒人が差別されていることが分かってきました。一方、保守派からは「ブラック・ライヴズ・マター」に対して「オール・ライヴズ・マター(みんなの命が大切だ)」という言葉が言っていました。要するに「黒人だけ特別扱いするな」ということです。歴史的に考えれば、やはり黒人の方は、差別されてきたとの過去があります。じゃあなぜ「オール・ライヴズ・マター」だったり「ウォーク批判」があるかと言えば、昔からあることですが、これまで多数派でうまくやってきた社会で、少数者が出てきたことで混乱したと感じる人が多いです。特に経済がまずいときにはそういう方々が出てきて経済が悪くなるじゃないかと一定数の方が出てきます。問題だと思うのですが、他方で難しいのはいわゆるリベラル派の方が言っている「多様性配慮」も、結局は誰を配慮するかという「線引き(特別扱い)」をしているという、構造的な問題です。今まさに黒人を守るなら、貧困に苦しんでいる白人の人がいて、僕は白人に生まれただけだぞ。何も悪くないのに、何で我々は助けてくれないんだみたいなことを思っているとその黒人も大事ですが、白人というだけで線引きされていると思う人もいます。動物の権利をもっと守りましょうという話も世の中動いています。どこまで動物の配慮をして控訴審を配慮してくれないのか線引きですよね。こうしてみると、やはりリベラル派が考えている線引きという意味では、結構曖昧な所があります。構造的な問題で良い悪いがあります。かなり難しい問題です。だからと言って歴史的経由を考えれば、やはり黒人の方やLGBTの方を守るということは当然のことだと思います。構造的な問題かなと思います。
ユージ:こういった動きについて、来週行われるアメリカ大統領選挙について、どういった影響があると思いますか?
塚越さん:基本的に分かれているので、そこまで大きい投票に影響はないのかなと思います。決まっている人には決まっていると思うのですが、今申し上げた構造的な問題でなかなか簡単には覆せない問題があります。これは、日本でも全く同じ問題が起きているのでこれから日本でも同じような問題が出てくると思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET#ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) October 30, 2024
『アメリカで起きている、多様性を尊重する企業に対する反発』について…
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) October 30, 2024
例えば、保守派の活動家である、ロビー・スターバックさんは 多様性重視を打ち出す企業の姿勢を「拒む自由もあるべき」と訴えています。職場で政治や社会的価値観を押し付けるなとか、多様性や…
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) October 30, 2024
大統領選が迫ってきていますが、アメリカはこうした企業へのネガティブキャンペーンが多く、トランプ氏の岩盤支持の人は、以前からこうしたwoke批判の傾向があるので、むしろ民主党に票を入れる人が増えるかもしれません。この問題は選挙が終わっても変わらないため、woke VS 反woke…