24.12.12
“公益通報したら解雇”は罰則方針の法改正要請
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「“公益通報したら解雇”は罰則方針の法改正要請」
吉田:先週、消費者庁の有識者検討会が公益通報者保護制度の見直しを議論し、年内の報告書取りまとめに向け、法改正する上での論点を整理しました。通報者が不利益な扱いを受けないようにするにはどうすればいいのか?公益通報と通報者の保護について、塚越さんと考えていきます。
ユージ:塚越さん、まず“公益通報”について改めて教えてください。
塚越さん:公益通報とは、労働者などが不正の目的ではなく、勤務先の不正、刑事罰や過料の対象となる不正を一定の通報先に通報することです。企業の不祥事が内部で揉み消されないために行うものでもあるので「内部告発」とも呼ばれます。内部告発者は英語で「ホイッスルブロワー(笛を鳴らす者)」つまり周囲に警告する人を意味します。通報ができるのは、組織の正社員や派遣労働者、アルバイト、パートの他、公務員も含まれ、また退職後1年以内の退職者や役員も含まれます。通報先は、勤め先の他、条件もありますが行政機関だったり報道機関も可能です。
ユージ:そして、その通報をした人は、不当に解雇されたりしないように保護されないといけないんですよね?
塚越さん:はい。通報したことを理由に解雇した場合は、解雇が無効になります。またそれ以外にも、減給などの不利益な扱いも禁止です。組織も、公益通報で損害を受けたからといって、通報者に損害請求はできません。当然といえば当然のことです。通報して罰せられるなら、誰も通報できないということですよね。
吉田:そこで今回、公益通報者保護法の法改正が議論されました。
塚越さん:公益通報者保護法は2006年に施行され、2022年6月に改正されています。この時の改正では、内部通報に適切に対処できる体制の整備義務などが定められました。今回の有識者の検討会では、組織が通報者を探したり、また通報を理由に解雇や懲戒を行った場合、刑事罰の対象とする報告書案をとりまとめる方針で、政府にも早急に法改正を要請してくださいという方針です。これまで、不適切な対応をした組織への罰則は限定的なもので、刑事罰はありませんでした。そこで今回は、刑事罰を含めてはっきりさせるという方針で、議論が進んでいます。
ユージ:具体的には、どうなっていくのでしょうか?
塚越さん:例えば現在は、通報者が組織から不利益を受けて訴訟を起こしても、どの点が公益通報なのかを通報者が立証する必要がありましたが、情報や証拠は組織に多くあり、通報者の立証負担を軽減すべきといった意見がありました。なので、通報と処分の関係の説明を、組織側に追わせる案が出ています。これには異論もあるので、まだまだどうなるかは分かりませんが、議論が続いています。今年度中に議論をまとめて、さらなる法改正に動くと基本的に考えられています。
吉田:塚越さんは、公益通報者の保護について、どう考えていますか?
塚越さん:公益通報が本当に公益で通報者を保護するかどうかを判断するには「真実相当性」が必要になります。真実相当性とは、これは真実と思えるだろうという理由のことで、仮に真実ではなかったとしても、信じるに足る合理的な理由があれば真実相当性にあたります。兵庫県の斎藤知事の問題でも、真実相当性について議論が多くありました。ただ、もちろん通報の時点で通報内容が真実かどうかは、相当いい加減な通報でない限り、それこそ詳しくみてみないと分かりません。早急に真実であるかないかを判断するのではなく、時間をかけた判断が必要です。この手続きがやはり重要なのですが、その時、兵庫県が結果が出る前の5月の段階で通報者を停職3ヶ月の処分にしたのは問題なのかなと思います。次の法改正では、こうした点も問われると思います。刑事罰の対象になるのも議論になるのかなと思います。ちなみに斎藤知事に対する兵庫県の調査では、パワハラがあった確証までは得られませんでした。一方、パワハラがなかったとは言い切れません。パワハラは、認定がかなり難しく兵庫県の調査はそういうことになっています。今回の件に関しては、他にも百条委員会と第三者委員会の調査があり、これの公表は、来年になります。ここも慎重な報道姿勢が求められるかなと思います。これだから絶対白、黒ということはありません。これだけは慎重にやらないといけない。我々、報道メディアも斎藤さんのときには、かなり苛烈な部分があると思います。こういったところで議論になっています。いずれにせよ、公益通報者保護法が改正される方向になりますので、この前のような悲しいことが起きないようには、そういったことを踏まえた改正が必要なのかなと強く思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 12, 2024
『“公益通報したら解雇”罰則方針の法改正要請』
公益通報者保護法では、通報者が事業者側に特定されたり、不当に解雇されたりしないよう保護することが定められています。
今回、そのような不利益処分をした組織への罰則方針の見直しが議論されました。#ワンモ
#ユジコメ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 12, 2024
会社内で公益通報のシステムが整っていても、社員が少ない会社の場合、通報者がなんとなく露見してしまう可能性があります。
結果的に声をあげづらくなってしまうということにもなりかねませんし、罰則方針の見直しがされたとしても、まだまだ課題は残るでしょう。#ワンモ
#ユジコメ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) December 12, 2024
ただし、課題解決のために法改正の議論が真剣に行われているのは良い動きだと思っていますし、より磨きをかけていってほしいです。
また、誰かがあげた小さな声を、それが会社にとって後ろめたい事だとしても、しっかり汲み取れる組織づくりが何よりも重要だと思いました。#ワンモ