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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

24.12.18

経団連が“富裕層への課税強化”を提言…その狙いは?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「経団連が“富裕層への課税強化”を提言…その狙いは?」

吉田:経団連は今月9日、2040年を見据えた「公正公平で持続可能な経済社会」の実現に向けた提言を発表しました。提言の中には、「富裕層への課税強化」が盛り込まれているということです。塚越さん、この提言について詳しく教えてください。


塚越さん:この提言のタイトルは「フューチャーデザイン2040」というもので、2040年の未来を考えています。なぜ2040年かというと、まず総務省統計局によると、今の65歳以上の高齢者数はだいたい29%くらいですが、2040年にはピークで35%くらい増えます。そういう状況の中で、日本は資源の少ない島国です。少子高齢化や人口減少が進むので、ここの中でどうしようかということで、2040年を見据えて色々書かれた提言です。内容ですが、経団連の十倉会長は、税と社会保障の一体改革を行って、公正公平な社会保障政策をやるべきだと提言しているのが、富裕層に対する所得税の段階的引き上げです。これによって2034年度には5兆円程度の税収を確保して、現役世代の社会保険料の負担を抑えようということです。そうなると、中間層の消費が拡大するので、経済成長につながるということです。簡単に言えば、お金持ちから税金を多く取って、それを中流層に還元できれば日本はよくなるよね。という話です。日本は、これまで俗に「一億総中流」と言われたように、中間層が分厚く、そこが経済を押し上げていました。現在は、ここでもニュース取り上げるより社会保険料がどんどん上がってきていて、こうした層に余裕がなくなっています。経団連としても、分厚い中間層を望んでいるということかなと思います。ただ、提言には5兆円と言っている財源が不足する場合は企業への課税に加えて、消費税の引き上げも必要としているので、それはそれで別の議論になってくるかなと思います。提言は、他にも女性の労働促進のための社会保障制度の確立など色々ありますが、十倉会長は、これを起点に中長期的な国のあり方について議論が深まって欲しいと述べています。


吉田:「富裕層への課税強化」が盛り込まれたことについては、反発する意見も出ていますよね?


塚越さん:そうですね。例えば、楽天グループの三木谷会長兼社長は先週月曜日に自身のXで、「経団連終わってる。頑張って成功した人に懲罰的重税、正気か」と強く批判しています。三木谷さんは他にも、日本は「最高税率も最高相続税も共に55%で主要国ではダントツに高い」といったことも指摘しています。税率は計算方法にもよりますが、確かに日本の税金は諸外国と比べても高いと言えます。また三木谷さんは、「これ以上続けると日本から富裕層がいなくなって、海外で起業する人も増えます」と述べています。優秀な技術者やビジネスマン、スポーツ選手は、逆に日本に来なくなるんじゃないかということで、人材は流出するし、いい人は入ってこなくなるということです。実は、三木谷さん率いる楽天は2011年に経団連を脱退しています。その後、2012年に「新経済連盟=新経連」という団体を旗揚げして、影響力を保っています。三木谷さんからすると、経団連は保守的でスピード感に欠けるということです。逆に新経連はイノベーション等を重視しているということで、実際、新経連に加盟しているのはIT企業等が多いです。三木谷さんの発言は、こういうところの背景があるのかなと思います。


ユージ:2040年を見据えた、経団連の提言。塚越さんは、どうご覧になりましたか?


塚越さん:要するに、富の再分配をしないと、日本経済が成り立たないということです。分かります。財源が足りなければ消費増税も選択肢に入っているというところも私は違和感があるかなと思います。個人的には、三木谷さんの批判の方がしっくりきます。これ以上、富裕層の課税を強化すれば、優秀な人ほど海外に流出すると思います。提言の中には、所得だけでなく「資産にも着目した負担」という文言もあり、何か行き過ぎな感じがします。もちろん、例えば金融所得に対する課税など、ものによっては一部の部分で富裕層に課税も重要だと思いますし、実際来年から一部の超富裕層に対しては課税が強化される「ミニマムタックス」という制度が導入されます。何でもかんでも富裕層から取るというのは、ある意味「夢がない」と思います。あとは、富裕層の課税強化を簡単に賛成できないのは、イノベーションの促進ということで、日本というのは先進国が、新しいサービス付加価値のある。極端に言えばiPhoneのような、そういうもので儲けようということです。アイデアやそういったものが必要になるので、一人の天才がというわけでもないですが、イノベーティブな方がいて何か引っ張っていくという部分が重要です。そういう人たちに対して、とんでもなく税率を上げちゃうと、もう日本はいいやとなることがあると思います。そうしたときに、バランスは大事ですが、何でもかんでもお金持ちから取って全部還元という話は、厳しいかなと思います。この辺りは、長い時間をかけて我々がきっちり議論していかないといけないところだなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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