25.02.17
日銀植田総裁、食料品値上がりに懸念!インフレの行方は?
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
「日銀植田総裁、食料品値上がりに懸念!インフレの行方は?」
吉田:日銀の植田和男総裁は先週、衆議院の財務金融委員会で、生鮮食品を含む食料品の値上がりは「一時的なものでは必ずしもない」「生活に強いマイナスの影響を及ぼしている」と懸念を示しました。そこで、植田総裁の発言の真意とその発言の影響について神庭さんに解説してもらいます。
神庭さん:最近スーパーに行っても、食品のインフレすごいなと感じますよね。東京都区部の消費者物価費数の1月中旬の速報値では、生鮮食品が前年同月比で23.8%も上がりました。中でもキャベツは204.6%という驚異的な上昇幅になっています。漫画『美味しんぼ』の名ゼリフ「いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ。それが、人間えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ」というのがあります。最近は付け合わせのキャベツの方が高騰しているので、「キャベツをいつでも食えるくらいになりなよ」にセリフを変えなきゃいけないかもしれません。それ以外にも、コメが72.8%増、みかん37.3%増、チョコレート30.2%増、コーヒー豆19.0%増と食料品は軒並み上がっています。
ユージ:そんな中での日銀の植田総裁の発言、どう受け止めたらいいですか?
神庭さん:植田さんによれば、食料品の値上がりが長期化しそうです。「まだ上がるの?」という感じです。先ほどの東京都区部の消費者物価でも、生鮮食品を除く総合指数だと2.5%増にとどまります。これだけ聞くと、それほど大したことがないように錯覚します。生活者からすると、日々スーパーで見かける食品の値段ってすごくインパクトがありますし、毎日繰り返し買う分だけ、消費行動にも大きく響いてきます。だからこそ、植田総裁は「国民生活に強いマイナスの影響を及ぼしている」と懸念しているわけです。発言を読み解くキーワードは「体感物価」「体感インフレ」です。
ユージ:どういうことでしょうか?
神庭さん:昨年12月の日銀の「生活意識に関するアンケート調査」で1年前に比べて物価が何%変化したか聞いたところ、平均で「17%上がった」という回答でした。一方で、生鮮食品を除く全国の消費者物価指数は前年同月と比べて3%しか上がっていません。実態と庶民の感覚でものすごくギャップがあります。「体感インフレ」と日銀や政府が重視する「生鮮食品を除く」データ上での物価にギャップが出ているなということです。
吉田:なぜ、生鮮食品を除く数字で政策を判断してきたのでしょうか?
神庭さん:野菜や果物などは天候要因で値動きが激しいです。またガソリン代や電気代も原油価格など海外要因に左右されます。日銀など当局者はこれまで、そういった一時的な影響を取り除いた数字をもとにして物価の基調を見極め、利上げの判断材料にしてきました。ところが、それだと生活者の感覚とギャップが出ちゃうので、食品の値上がり具合もしっかりウォッチしたうえで利上げを判断していくよ、というのが今回の植田発言の肝となります。
ユージ:日銀は1月に利上げをしましたが、物価はそんなにすぐ下がらないですか?
神庭さん:なかなかすぐには下がらないというのと、景気が過熱して物価が上がっている時は、蛇口を絞ってマネーの供給を減らして、景気を冷やすことで物価を抑制する定石ではあります。ただ、原材料費や人件費の高騰によるコストプッシュ型のインフレです。利上げで需要を冷やしたところで、物価が下がる確証はありません。日米の金利差による円安も物価高の大きな要因の1つです。政策金利は日本が利上げしたといっても0.5%。アメリカは昨年何度か利下げしたが、まだ4.25~4.50%もあります。マネーは金利が高い方に集まるので、依然として円安傾向と輸入物価の高止まりは続くのではないでしょうか。かといって日銀が急速に利上げを推し進めれば景気は失速し、最悪スタグフレーションに陥ります。日銀は非常に難しい舵取りを迫られているかなと思います。
吉田:インフレは今後どうなりそうでしょうか?
神庭さん:食料品含め値上がりは長期化しそうです。鍵を握るのは、トランプ氏の動向かなと思います。トランプ氏は関税の引き上げをぶち上げていて、報復関税の応酬で世界経済のブロック化が進めばインフレに拍車がかかります。一方で、サウジや石油輸出国機構(OPEC)に原油の値下げを求めたり、液化天然ガス(LNG)を積極的に輸出しようとしたり、エネルギー価格を下げる方向の政策も進めているので、いい方向に転べばインフレが緩和される可能性もあります。対日本で影響がありそうなのは、相手国と同水準に関税を引き上げる「相互関税」です。日本は対アメリカで、ほとんど関税をかけていませんが、コメには非常に高い関税をかけています。トランプ氏は、非常に頭が良い人ですから「日本がコメの関税を下げないと、アメリカは自動車の関税を上げるぞ!」と交渉材料にしてくる可能性もあります。こうやって、アメリカからの圧力に加えて、コメが値上がりしていますから、それに対して消費者の怒りが高まると、世論が「コメの関税を下げろ!」という方向に流れる可能性もあり得ます。食料安全保障の面ではリスクだし、米農家の方々は大反対だと思いますが、関税が下がって輸入米が増えると、コメの価格が大きく下がるシナリオもあるかもしれないですね。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 17, 2025
テーマは「日銀植田総裁、食料品値上がりに懸念!インフレの行方は?」
食品のインフレはスーパーでも本当に感じて、ちょっとお店に入っただけで、「これ、この間までこの金額だったのに?」と思うものも値上がりしています。#ワンモ
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 17, 2025
僕も最近家族で回転寿司に行ったときに値段は変わっていませんでしたが、少しお寿司が小さく感じました。
値上げせず据え置いてくれているぶんサイズ調整は仕方ないことで「なんで小さくしてるんだよ!」とは全く思いません。…
#ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 17, 2025
スーパーや飲食店に行っても、請求書が届いても
あらゆる場面で値上げを感じています。
消費者目線で言うと生活をする上で本当に欠かせない、…