25.02.18
村上総務大臣の発言から考える、人口が減り続ける日本の未来
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
【村上総務大臣の発言から考える、人口が減り続ける日本の未来】
吉田:村上誠一郎総務大臣は13日の衆議院総務委員会で、個人的見解と断った上で、今世紀末に人口が半減するとの推計を踏まえ、現在1,700以上ある自治体は「300から400の市で済む」との考えを示しました。神庭さん、まずはこの発言をした背景を教えて下さい。
神庭さん:日本の現在の人口は1億2,359万人です。少子高齢化で毎年50万人ずつ人が減っています。民間有識者の「人口戦略会議」の中位推計では、今世紀末2100年には6,300万人まで落ち込んでしまうと予想されています。こういった将来予測を踏まえて、村上氏は国会でこのような発言をしました。「1億2,000万が5,000万から6,000万になったら、今のような1,700以上の市町村の構成が難しい」「30万から40万の人口の市で区切れば、全国で300から400の市で済む」「極端なことを言わせてもらうと県庁もいらないし、道州制も意味がない」と述べました。
ユージ:思い切ったことを言ったなと思いますが、この発言にはどういった反応が出ていますか?
神庭さん:ネット上で、反対意見としては「国会議員も半分でいい」「半減しないようにするのがあなたの仕事でしょ」「ふざけないで。平成の大合併で地方の住民がどれだけ苦しんだか」といった声があがっています。一方、賛成派からは「その通り。議員も多すぎだし減らすべき」「今からでも市町村再編に取り組むべき」「賛成。財政が厳しくなる中で、都道府県と市町村が同じような行政を行っているのは本当にムダ」といった意見が出ています。
ユージ:なるほど、賛否両論ありますね。
神庭さん:江戸時代がざっくり300藩の幕藩体制だったので、「江戸300藩と考えると、これくらいの単位で行政をするのは効率がいいのかも」との意見がありましたし、廃藩置県の逆で「廃県置藩ですか?」というコメントもありました。政治家だと、元・明石市長の泉房穂氏がXで《私の持論と方向性は同じだ。日本は300程度の地方自治体と、国の2層構造でやっていける。中間管理職の県庁などは不要だ。明治維新をやり直すイメージだ》と投稿しています。
吉田:神庭さんはどう思いますか?
神庭さん:賛成とか反対とか悠長な話ではなく、人口減は今そこにある危機です。「時はまさに世紀末」の話だから言うわけではありませんが、日本は『北斗の拳』のケンシロウに「あたたたた!」と60分揉みほぐしコースで丹念にツボを刺激された後「お前はすでに縮んでいる」状態です。
吉田:そんな状態なんですね。
ユージ:そんな状態か…。
神庭さん:昨年の出生数は初めて70万人を割る見通しです。2038年のはずだったのが、14年も前倒しするペースで少子化が進行しています。未来予測って大概ハズレますが、人口予測だけはかなりの精度で当たると言われていて、それが予定したシナリオよりもさらに悪い方向に転びそうです。だから、「このままだと人口が半減する」というのは議論の大前提であって、そこから目を背けちゃいけません。基本的には、もちろん少子化の度合いを抑える努力は最大限続けるべきですが、縮むことを前提にして「日本縮小計画」「戦略的撤退」を考える必要があるかなと思います。
ユージ:これ、なかなかハードルが高い感じがしますね。
神庭さん:その通りですね。大きく3つの壁があります。1番大きいのは「住民感情の壁」です。「都会の偉そうなヤツらがまた地方切り捨ての話をしてるぞ」と思われたら、そこで試合終了。何も耳を傾けてもらえません。以前「消滅可能性自治体」の解説をした際にもお伝えしましたが、今の規模で自治体を維持するのが難しくなるという話で、決してそこに住んでいる人がいなくなるわけではありません。すでに日本のあちこちで買い物難民が続出して、診療所の閉鎖、バス便の減便といったことが起きています。水道管は1キロ交換するのに2億円かかると言われていて、水道料金の格差も全国で7.7倍に達しています。この先、人口が半分になるなかで、住民サービスやインフラ維持を100%今まで通りに続けるのはやっぱり難しいです。
吉田:残り2つの壁は何でしょうか?
神庭さん:2つ目は「政・官の壁」です。こういう耳の痛い話をどう理解してもらうかが本来は政治の役目です。ですが、票にならないどころか票や議席が減ることになるので、政治家はわざわざ触りたくありません。あとは、役場で働く公務員の方々も徹底的に抵抗すると思います。3つ目は「安全保障の壁」です。島嶼部や山間部も含め、様々な地域で人々が生活を営むことで日本の国土が守られています。不便で生活コストが高くても、無人島になったら困る場所というのは沢山あります。そうした戦略的な要衝に関しては、政府がお金を出して支えていくことも必要になってくると思います。「300から400の市」という数字の根拠は分かりませんが、今回の総務大臣の発言を1つのキッカケとして、人口減社会での「賢い縮み方」をタブーなく議論していけるといいなと思います。例えば、福島県は「浜通り」「中通り」「会津」の3地方で気候風土や文化性も全然違います。ですから、この機会に「都道府県」という枠組みのあり方についても、改めて考えてみてもいいかもしれません。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 18, 2025
『300~400の市で済む。村上総務大臣の発言から考える、人口が減り続ける日本の未来 』について。…
#ユジコメ ②…
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) February 18, 2025
#ユジコメ ③…
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