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25.03.11

災害支援協定から考える、自然災害時の支援のあり方

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ副編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「災害支援協定から考える、自然災害時の支援のあり方」

吉田:2011年3月11日に起きた東日本大震災から今日で14年を迎えました。岩手・宮城・福島の3県は、当時、地震や原発事故で被災し、全国から多くの応援職員が駆けつけました。共同通信の調査で、3県の市町村の9割が派遣元の自治体と災害支援協定を結ぶなど、いまも関係を継続していることが分かりました。神庭さん、改めて調査の内容を教えて下さい。


神庭さん:共同通信によれば、今年の1~2月にアンケートを実施して、岩手・宮城・福島の3県の42市町村が応じました。このうち28市町村が「大規模災害に備えた相互支援協定を結んだ」と回答しています。22の自治体が「派遣元自治体が被災した際、職員派遣や物資を送付した」と答えました。つまり、お互い様の精神で被災地自体同士が助け合っている様子がうかがえます。登半島地震の際も、9割の自治体が応援職員を派遣したと答えています。非常にいい取り組みだなと思います。


ユージ:そもそも「災害支援協定」というのは、どういうものでしょうか?


神庭さん:「災害支援協定」「災害時応援協定」といいますが、大きな災害が起きた際に被災した自治体を助けるために、自治体同士、自治体と民間企業の間で結ぶ協定のことです。大災害でインフラがダウンしてしまったり、自治体職員自身も被災して、役所機能がマヒしたりします。そうした事態に備えて、平時のうちから物資の供給や医療・救護体制の確保、職員の派遣などについて協力体制を整えます。


吉田:いい取り組みと思いますが、どれぐらい広がっているのでしょうか?


神庭さん:全国1,741の市町村のうち、96.8%にあたる1,686自治体が相互応援協定を結んでいます。ほとんど全部の自治体ですね。都道府県単位の協定は1995年の阪神大震災の前までは3件しかありませんでしたが、1996年に47都道府県による協定が結ばれました。企業との協定も合わせた数字ですが、政府の災害時応援協定システムには、約10万4,000件の協定が登録されています。災害時に段ボールベッドを供給する、ドローンを捜索や物資の輸送に使う、キッチンカーやキャンピングカー、トレーラーハウスを出すなど、支援内容は様々です。仮設住宅ができるまでホテル・旅館などへの2次避難の支援をするといった取り組みもあります。


ユージ:自治体だけじゃなく、企業も入っていると。阪神大震災からの教訓も活かされているわけですね。首都直下地震も心配されていますが、協定などの備えは進んでいるのでしょうか?


神庭さん:例えば東京都であれば、災害で家に帰れない帰宅困難者向けに「災害時帰宅支援ステーション」で水道水やトイレ、災害にまつわる情報を提供することになっています。この「災害時帰宅支援ステーション」にはコンビニ各社やファミリーレストラン、ガソリンスタンドが協力しています。昨年、セブン&アイ・ホールディングスがカナダ企業から買収提案を受けて話題になりましたが、コンビニは災害時の重要なインフラでもあるので、仮に外資に買収されてしまった場合にこうした機能がどうなってしまうのかは少し心配なところです。


吉田:そして、こちらも心配な南海トラフ地震に関してはどうでしょうか?


神庭さん:西日本でも、南海トラフに向けた備えが進んでいます。RNC西日本放送によれば、香川県警と香川県丸亀市にある「レオマリゾート」の運営会社が3月6日に協定を結びました。大規模災害で全国から警察が派遣されることになった時に、レジャー施設にあるホテルの最大300部屋と4,600台の駐車場を空いている限り提供するという内容です。警察とレジャー施設の連携というのはちょっと珍しいかもしれませんね。


吉田:教訓を生かして、対策が進んでいることもあれば、一方で災害支援協定の課題もあると思いますが、いかがでしょうか?


神庭さん:協定を絵に描いた餅にしてはいけない、ということ。せっかく自治体同士、たくさんの企業と支援協定を結んでも、いざという時に機能しないと意味がないと思います。応援職員に何をやってもらうか決まっていない。想像以上に物資がたくさん届いて捌ききれない、ボランティアの配置がうまくできないなど、実際の災害現場では様々なことが起こります。だからこそ、日頃からの訓練も欠かせません。受援体制といって、支援を受け入れる体制を整えておく必要もあります。ところが2023年の段階で、市町村全体の4分の1ほどにあたる429自治体で受援計画が策定できていないということが分かりました。これは非常に大きな問題だと思います。もう1つは、首都直下や南海トラフなど被害が広範囲に及ぶ災害では、近隣の県同士で助け合おうにも、共倒れになってしまうリスクがあります。エリアをまたいだ広域の連携を充実させることも大切です。それから、内閣府には災害時応援協定システムというデータベースがありまして、そこに協定に関する情報が大量に登録されています。例えば、「いま〇〇が不足している」「どこそこの支援協定で一番早く調達できるぞ」みたいな情報がAIでパッとマッチングして引っ張り出せると、災害現場でもすごく役に立つのではないかと思います。


ユージ:今の時代だからこそのAIだったり、ITの技術を使った連携もすごく重要なのかなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。



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