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25.03.26

介護分野に『特定最低賃金』の導入を検討…賃上げ人手不足の解消につながるのか?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【介護分野に『特定最低賃金』の導入を検討…賃上げ人手不足の解消につながるのか?】

吉田:福岡厚生労働大臣は、3月21日に「特定最低賃金」の介護分野への導入について、「労使の意見や特定最低賃金の実態を再度確認し、検討を進めたい」と話しました。塚越さん、この「特定最低賃金」について教えてください。


塚越さん:まず、最低賃金には種類が2つあります。1つは、都道府県ごとに決める「地域別最低賃金」で、番組でも何度かお伝えしているものです。アルバイトの時給などの目安にもなるもので、基本的には行政が主導で決めるものです。そしてもう1つ、今回お話するのが「特定最低賃金」というものです。こちらは、特定の産業で労使が話し合って、先ほどの地域別最低賃金よりも、高い水準にすることが必要だと認められた産業に適応するものです。基本的には、民間の労使が主導して、地域別の最低賃金より賃金が高く設定されるものになります。現在、この特定最低賃金が設定されているのは電子部品や鉄鋼といった製造業のほか、百貨店などがあります。ただ全国一律で設定されるのではなく、地域の産業の実情に応じて異なるので、同じ業種でも地域によって設定されないところもあります。とはいえ、都道府県をまたいだ設定も産業によってできるので、全体としては賃上げ拡大につながる可能性があります。今回は、この中に介護分野も入れようという話です。石破総理は先週の予算委員会でも賃金が上がらないと、この国の経済はもたないという認識があるので政府主導で判断したいと述べています。政府としてもそういう動きがありますし、狙いとしては人手不足の介護分野を賃上げによって少しでも解消しようという考えが裏にはあります。


吉田:介護職の賃金や人手不足は、今、どのような状況ですか?


塚越さん:介護は、とっても大切な分野ですが、あまり給料が高くないというのは聞いたことがある人も多いと思います。厚生労働省によると、介護職員の去年9月の平均月収は25万3,810円で、前の年の同じ時期に比べて4.6%増えています。ですが、物価も上がっていてどの業界も多かれ少なかれ賃金が上がっています。実際上がったと言っても全産業の平均より未だに7万円以上低いということになっていて、そうなるとなかなか人手が集まらないということなので、だからこそ賃上げ対策でこういうことになっています。さらに言うと、今後のことを考えると本当に深刻で15年後の2040年度になると65歳以上の高齢者数が、ほぼピークになります。介護職員がおよそ57万人ほど不足する推計があります。介護業界は、AIの導入がなかなか難しいですよね。人間の力が必要とされるので人が足りなくなります。一方で、介護職員の数は2023年度でおよそ212万6,000人ほどいます。実は、その前の年から2万9,000人規模で減少しています。2000年以降はじめて減少しました。増えていたのですが、最近、介護職員が減ってきてしまいました。ただでさえ人手が足りないのに、そこで職員が減るのはまずいということで、人材確保が非常に急務だということです。


ユージ:介護分野に「特定最低賃金」を導入することについて、塚越さんは、どうご覧になりましたか?


塚越さん:最近は地域別最低賃金の引き上げがどんどん行われています。問題としては、急激に賃金を上げると、特に中小の経営が厳しくなるという問題も指摘されていて限界があるかなと思います。今回の特定最低賃金も労使が主導して、条件が整えば賃金を引き上げることができます。今、話したように介護業界だけでは賃金を上げるのは難しいので、政府は支援しながら介入するということも考えています。例えば、厚労省は訪問介護など、小規模事業者への支援を行うということです。さらに、横の連携や事業の再編を促して、大規模な経営をつくって経営を安定させていくということをある程度お手伝いするので、こういうことをやってください。賃金を上げてください。そして、この分野に人を増やしてくださいということを政府も考えているとのことです。先ほど話したように介護業界は、そもそも賃金が低いので地域別の最低賃金にするのは難しい側面があるのかなと思います。労使の合意がとれるか、過度に賃金が上がることで経営が圧迫される可能性もあります。人と関わる福祉だからこそ、様々な制約があります。さらに、賃金引き上げをすると結果的に利用料金が一般のユーザーに今度は料金が高くなる方向である程度受け入れないといけないという議論もあります。色々難しい点がありますが、ただ賃金を上げなきゃいけない、人を集めないといけないのは当然ということで、この賃金の問題と業界の問題があって今取り組んでいるということをご理解いただけるといいのかなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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