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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.03.27

あなたの個人情報がAI学習に使われるかもしれない、個人情報保護法の改正案

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の城西大学助教、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


「あなたの個人情報がAI学習に使われるかもしれない、個人情報保護法の改正案」

吉田:政府の個人情報保護委員会は、企業内のデータを第三者に提供する際、AI向けの学習データであれば、本人の同意を原則不要にする法改正に動いています。そこで、今日はAIの学習と個人情報保護法の改正について、塚越さんと考えていきます。


ユージ:塚越さん、まずAI学習のために個人情報を利用する際、本人の同意を原則不要にする、この背景を教えてください。


塚越さん:まず、この数年で一気に開発が進んでいるのが、ChatGPT等の生成AIです。生成AIの学習には大量のデータが必要になるのですが、もう学習元のデータがどんどんなくなってきています。米シンクタンクの「エポックAI」と学者が去年6月に推計したところ、ネット上に公開されている文字データは、半角文字で1,200兆文字あるそうです。一方、最先端の生成AIの学習データは80〜120兆文字ということです。さらに加速していて、早ければ今年中に公開データを食い尽くしてしまいます。これ以上AIの発展が見込めない、という課題があるわけです。


ユージ:今年中に、AIがネットに公開されている情報を学習しきってしまう。改めてAIの勉強速度に驚きますね。


塚越さん:そうですね。この数年で頭が良くなっているので、すごい勉強していますよね。なので、データが少ないので、それを合成して学習に使うといった方法もあるのですが、根本的にデータの枯渇問題が言われています。そこでAI企業は、ネットにはない「クローズドデータ」、例えば企業が独自に持っている商品の販売データや顧客のマーケティングデータなどを学習しようとしています。AI企業とライセンス契約を結んで、データを有償で提供してもらう、ということを考えています。ただし、今の個人情報保護法では、データを持っている企業が他の企業にデータを渡す際、個人情報が含まれる場合は本人からの同意が必要になります。様々なコストがかかるので、今までこういうことが面倒なのでこういうことをしてきませんでした。今、個人情報保護法を改正して、企業間のデータ流通を円滑にしましょうという話が動いています。というのも、個人情報保護法は3年ごとに見直しが入ることが決まっているのですが、今年がその見直しの年になっているという背景もあります。


吉田:個人情報漏洩のニュースも最近多いですし、本人の同意なしに個人情報が使われると聞くと不安に思う人もいると思います。


塚越さん:そうですよね。法改正だと、AI学習といった統計データ目的の場合は、個人情報があっても本人の同意を原則不要にするということです。条件としては、HPに提供先の企業名を公表すること。例えば、うちの◯◯のデータはOpenAIに渡してますよ、と記載します。また提供先がAI以外にデータを使わないと確認するといった条件がつきます。さらに、大規模なデータ漏えいや悪質な利用があった場合は、課徴金を設けて安全対策を強化することも必要になっていきます。ただ現在は、原則本人確認の同意が必要な「要配慮個人情報」という、人種や思想信条、病歴データなども、AI学習向けには同意不要にもなるということです。


ユージ:AIの進化は必要なことだと思いますが、自分の個人情報が使われるかもしれないという、私たちの不安の部分は、払拭できるのでしょうか?


塚越さん:これまでの説明を聞くと、生成AIに自分のことを聞いたら家の住所が表示されると怖いなと思いますよね。


ユージ:はい、します。


塚越さん:最初、生成AI登場当時はデータ漏えいの懸念もあり、現在もいくつかの指摘はありますが、社会的に大きな問題といえるほどのことは起きていません。AI企業も考えているので、特に個人情報については、学習しても自分の病歴等が出てくることはまずないと私は思います。とはいえ、不安といえば不安ですよね。やはりデータを匿名化する技術を使ったり、また重大な問題が生じた場合はすぐに報告したり、法律が変わってもチェックしていく必要があるのですが、限界はあります。個人情報と共に、著作権法等も今以上に整備して、AI利用を適切にしていく必要もあると思います。


ユージ:企業の持つ個人情報をAIが学習すると、私たちには、どんなメリットがあるのでしょうか?


塚越さん:企業のマーケティング能力が上がるので、顧客ニーズを捉えるのは上手くなります。私たちにとっても個人情報を学ぶと、私が何か言ってもAIが私たちのことを理解しやすくなります。色んな情報があるので。


ユージ:適切な提案をしてくれるんですね。


塚越さん:これが、今まで以上に良くなるので使い勝手が良く、頭が良くなります。バランスがあるので決定事項ではありませんが、適切に恐れましょう。「適切に恐れていく」ということが必要になってくるかなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。







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