network
リポビタンD TREND NET

今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.04.16

全国で相次ぐ『データセンター』の建設…一部地域で懸念の声も

null

ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【全国で相次ぐ『データセンター』の建設…一部地域で懸念の声も】

吉田:AI(人工知能)の需要の高まりから、全国で「データセンター」の建設が相次いでいます。こうしたなか、一部の地域では、騒音や排熱を懸念する声があがっているということです。塚越さん、まずは「データセンター」とは何か、教えてください。


塚越さん:「データセンター」という言葉、最近ちょこちょこ聞くようになりましたが、疑問に思う方もいるともいます。簡単に言うと、インターネットの管理などのために、「サーバー」というコンピュータを沢山置いて、それを冷やすための装置や、大規模な電源などを兼ね揃えた大きな建物のことです。近年はインターネットのデータ処理に加えて、私たちが生成AIに依頼した文章や画像をつくったりするときも、データセンターのコンピュータが行います。特に生成AIは高度な計算を大量に行うので、電力消費が大きいということ。実際、一般的なAI向けのデータセンターは、年間で10万世帯分の電力を消費するということです。相当ですよね。国際エネルギー機関(IEA)が、今月まとめた報告書によると、世界の総電力消費のうち、データセンターが占めるのは、去年で全体の1.5%でした。消費量は上がっていて、2030年には全体の3%、つまり今の倍くらいになると予想しています。こうなると日本の総電力消費量より少し多いくらいで非常に大きくなると言われています。


吉田:この「データセンター」の建設が全国で相次いでいる、ということですか?


塚越さん:はい。例えば、東京都江東区は3月下旬に「データセンター建設対応方針」というものを策定して、4月1日から適用しています。この中には、データセンターの建築計画を近隣に知らせる標識を設置したり、事前に説明会を開いたり、空調の室外機の位置を明示するといった、近隣住民に配慮を求めています。この背景には、区内のデータセンター建設に関して、住民から騒音や排熱を懸念する声があったということです。中には、マンションから20メートルの距離で、今は駐車場になっているところに、高さ50メートルのデータセンターがつくられるというところもあります。説明会もありましたが、反対の声は収まらないこともあり、江東区として方針をつくって、今後は条例の制定なども検討するということです。「データセンター」という言葉もまだ広がっていなく、何するかよく分からないので丁寧な説明は必要だと思います。現在のところ、データセンターの9割近くは大都市圏に集中していて、懸念の声は江東区だけでなく、日野市や千葉県流山市でも同様の反対運動が起きていて、流山市では計画が撤回されたということです。


ユージ:「データセンター」の建設は、自治体にとってはメリットもあるようですね?


塚越さん:そうですね。まず、税収が増えます。例えば、千葉県印西市はGoogleなどの大手のデータセンターも多く「データセンター銀座」と呼ばれています。実際、2023年の固定資産税の税収は162億円で、10年前から2倍以上になっています。市の担当者も、これはデータセンター関連が高い比率を占めているということで、増えた税収分は子育ての施策などに使っているということです。ただ国土交通省によると、データセンターは自治体によって「倉庫」と判断したり、「事務所」とするところもあって、明確なルールはありません。なので、住宅地域に建てられるそうです。専門家は、トラブルの原因を住居エリアとの棲み分けができていないことや、データセンターの役割が認知されていないと指摘しています。先ほどの印西市は住居エリアとデータセンターの場所を分けていますが、流山市はそうではなかったことで反対運動が大きい問題になったかなと思います。こうしたこともあって、経産省と総務省は3月に、地方創生としてデータセンターを「地方に」設置する検討会を立ち上げています。データセンターは大規模な電源もあるので、地方にあれば災害への備えにもなりますし、土地の問題も都市部よりも選択肢が多くなるかなと思います。全体として、今後は排熱の問題など、様々なルールづくりが課題になると思います。


ユージ:「データセンター」の建設が全国で相次いでいること、塚越さんは、どうご覧になりましたか?


塚越さん:データセンターって、先ほど言ったようにビジネスとして大きくなると予想されています。AIや電力を使っているということになります。コンピュータですからね。この分野になると建設だけではなくてIT人材や保守点検等でセキュリティ関連の方など、色々な雇用も生むということなので、住民の方の心配というのはちゃんと説明をしたり色々なことして条例を制定しながらもビジネスとして重要なのかなと思います。データセンターの立地は都市部に集中しているのですが、何で都市部に多いかというと大量のデータを使うので都市部はネットワークのインフラが多かったり電力も入れやすい点もあります。あと、人材もいます。ただ、地方に分散させると災害の時に電源が使えますし通信回線も多く引いているので一部回線ダウンしても使えます。電力を確保するために再生エネルギーつくりましょうということもあったりして地方には雇用をつくるメリットもあります。災害の問題などの課題もありますが、中長期的な視点でみると地方にも分散化しつつ、持続可能なデータセンターの建設計画を世界的に考えても非常に重要な点かなと思いますので、「デ―タセンター」という言葉を覚えておいていただきたいです。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





過去の #ユジコメ を音声でCHECK!!

  • X
  • Facebook
  • LINE