25.04.28
株の最低投資額「10万円」引き下げで何が変わる?
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。
【株の最低投資額「10万円」引き下げで何が変わる?】
吉田:連日、乱高下する株価のニュースが報道されていますが、そうしたなか、東京証券取引所は24日、株式を購入する際の最低投資金額を10万円程度に引き下げるよう上場企業に対して求める方針を発表しました。そこで今朝は「貯蓄から投資へ」の流れを後押しする最近の動きについて、神庭さんに解説してもらいます。
神庭さん:まず、今回のニュースの背景ですが、東証はこれまで、上場企業に対して投資単位を50万円未満にすることを努力義務として定めてきました。でも株を買おうという時に50万円だとまだハードルが高いです。多くの人に買ってもらうには、最低投資額をもっと引き下げる必要があります。東証が個人投資家にアンケートをとったところ、投資単位として「10万円程度」を求める人が26.2%と最多でした。そこで今回、上場企業に対してこの「10万円程度」という目安を示したうえで、引き下げを検討するように求めていく方針を報告書にまとめたというニュースです。
吉田:引き下げのメリットは何でしょうか?
神庭さん:最大のメリットは、様々な投資家が個別株に投資しやすくなり、日本経済が元気になることかなと思います。東証プライムに上場する企業の最低投資額の中央値は20万円弱です。これに対して、アメリカは1万8,000円弱、ドイツは9,000円余り、フランスは3,000円ちょっと。オーストラリアも約700円と日本よりも最低投資額が安いです。ただ日本では、最低投資額が100万円を超える企業が珍しくありません。日経新聞によると、ユニクロを展開するファーストリテイリングの場合、約460万円かかります。これだと年間240万円以内の新NISAの成長投資枠では購入できません。一方、Appleは約2万8,000円から買えます。こういう海外とのギャップを埋めて、個人投資家が株を買いやすい環境を整えていくことが狙いです。課題は企業側のコストです。株主総会の前後や中間決算の後で、年3回、株主宛に書類を郵送しているとして、個人株主が増えたら、そのぶんだけコストは増えます。これに関しては、電子化などコスト削減のための対応も必要になってくるのかなと思います。
ユージ:最近は、高齢者や子ども向けのNISAを導入する案も浮上していると聞きました。
神庭さん:良い動きですが、岸田前総理が率いる自民党の議員連盟が、高齢者向けの「プラチナNISA」や18歳未満の未成年を対象にした「こども支援NISA」の創設を政府に提言したということです。シニアの方々からすると、今さら長期投資を始めてもね…というのがどこかにあります。そこでプラチナNISAでは、高齢者の運用益が毎月払い出される投資信託を買って、生活費に充てられるような設計を想定しています。長く引き出せないのではなく、毎月引き出されるのがメリットです。こども支援NISAの方は、積立投資枠限定で、未成年にもNISAを開放することを検討しています。祖父母世代から将来世代への資産の移転を促す狙いがあるそうです。まだ提言レベルで実現するかは分かりませんが、「資産運用立国」「貯蓄から投資へ」の流れに沿って、NISAを全世代型に拡充することを目指しています。
ユージ:「貯蓄から投資へ」の流れ、神庭さんはどう考えますか?
神庭さん:「貯蓄から投資へ」という言葉は、かなりオブラートに包んだ表現でまろやかな口当たりにした言葉だと思います。要するに「公助から自助へ」ということです。年金も含めて国は老後の面倒まで見切れないから、足りない老後資金は自分らで何とかして!というメッセージだと受け止めています。残酷なようですが、何も丸腰で戦えというわけではありません。すでにある新NISAという武器に加えて、仮に「未成年向けやシニア向けのNISAを用意します」「最低投資額も引き下げます」となるのなら決して悪い話ではないのかなと思います。インフレが長引けば、銀行口座のお金は相対的に目減りしていきます。インフレに強い株式投資はリスクヘッジにもなるかなと思います。国民全員が亡くなる寸前まで「老後が不安だ、心配だ」と言いながら亡くなっていく。「お金が足りない」と言い続けながら、せっせとタンス預金に励むよりも、投資をしてお金に働いてもらう方が日本社会にとってもプラスだと思います。天国に札束を抱えていけませんからね。
ユージ:そうですね。注意点は、どうでしょうか?
神庭さん:当然、リスクもあるよという話です。未来永劫、右肩上がりの経済が続くかというとそういうことではありません。今回のトランプショックもそうですが、必ずどこかで暴落・調整局面はきます。そういう時に動揺して仕事も手につかなくなるような金額を投資に回すべきではありません。もし暴落したとしても、「そういうこともあるよね」「長期投資のいい買い場が来たな」と思えるくらいの、無理のない額にしておくことが大切です。「とにかくNISAの枠を早く埋めたい、上限枠ギリギリまで投資しよう!」と焦っている方も中にはいるのですが、結果として生活費カツカツの「NISA貧乏」になっちゃうみたいな事態は避けた方がいいと思います。国としても、武器だけ渡してハイおしまいではなくて、盾や防具も渡して、受け身の取り方を教えていくべきだと思います。受け身って何ですか?という話ですが、裾野が広がるぶんだけ金融リテラシーを底上げしていかないということで、よく「靴磨きの少年」という例え話があります。靴磨きの少年まで投資をし始めたら株価暴落のサインだと言われます。国策で靴磨きの少年を大量生産しても仕方がないですから。そうならないように、リスクの説明や金融教育も合わせてやっていく必要があるのかなと思います。
そして、今日の #ユジコメ はこちら。
#リポビタンD TREND NET #ユジコメ ①
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 28, 2025
テーマは「株の最低投資額『10万円』引き下げで何が変わる?」
東京証券取引所は、株式を購入する際の最低投資金額を10万円程度に引き下げるよう、上場企業に求める方針を発表しました。#ワンモ
#ユジコメ ②
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 28, 2025
今まで日本の企業だと、最低金額が100万を超えることもあり、リスクも伴うため、投資のハードルが高かったです。
値段が下がることによって、投資のハードルが下がって、日本の株が買いやすくなるのはいいなと僕は思いました。#ワンモ
#ユジコメ ③
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 28, 2025
今は政府側からも貯蓄から投資へっていう風にアナウンスがありますが、見放されちゃったのかなっていう風に、少なくとも僕はちょっと聞こえてしまいました。
自分の身は自分で守るっていう大前提はありつつも、国側でもお金の面で国民を守れるような政策があったらいいなと思いました。…
#ユジコメ ④
— TOKYOFM/JFN『ONE MORNING』 (@ONEMORNING_1) April 28, 2025
投資の方も引き続きリスクはあるということを考慮しつつも、チャレンジしていくってのはいいのではないでしょうか?
金融リテラシーを上げる意味でも、若年層への金融だったり、投資の方法や危なくない方法の提案を学校でもできたらいいのになと思いました。#ワンモ