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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.04.30

2回目の日米関税交渉…注目すべきポイントは?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【2回目の日米関税交渉…注目すべきポイントは?】

吉田:赤沢経済再生担当大臣は、アメリカのトランプ政権との2回目の関税交渉のため、4月30日から5月2日の日程でアメリカを訪問します。5月1日にベッセント財務長官と協議する方向で調整しています。塚越さん、2回目の関税交渉ですが、今回どのようなところに注目すれば良いですか?


塚越さん:色々なことが言われているのですが、報道されているところでは、まず政府は、トウモロコシと大豆の輸入拡大案を検討しています。アメリカは、中国にトウモロコシと大豆を輸出していて、特に大豆についてはアメリカが輸出する大豆全体の5割ほどを中国が占めています。ただ中国とアメリカって、ものすごい関税をかけ合っているので、アメリカが中国に輸出していた穀物が減ってしまいます。これを代わりに日本が引き受けようと考えています。まず、日本が輸入しているトウモロコシは、アメリカが最大の輸入相手国で、特に去年のトウモロコシの輸入は、全体のおよそ8割近くがアメリカからの輸入と圧倒的に多いです。2位がブラジルで2割程度ですが、このブラジルからの輸入分をアメリカに振り分けることを検討していて、農林水産省として農業団体に協力を求めるということです。実はアメリカは世界最大のトウモロコシの輸出国で、食用ではなく基本的に家畜の飼料用だったり、ガソリンに混ぜても使える「バイオエタノール」という、環境負荷の軽減になる車両用の燃料に使われます。トウモロコシをめぐっては、2019年のトランプ第一次政権のときにも関税議論があり、その時は当時の安倍総理がトウモロコシの輸入を増やす代わりに、自動車の追加関税を回避したことがあるので、今回もパッケージに組み込むと考えられます。交渉術として私が思うのは、中国に輸出できなくなると値段が下がるトウモロコシを、従来の値段で買いますと言って、何とかやってくれるといいなと思います。もう1つ検討されているのが、大豆の輸入です。日本が輸入しているうち、アメリカが全体の65%。ブラジルが23%でカナダが10%程度ということで、アメリカが多いです。これもやはりブラジルなどからの輸入分を、アメリカのものに振り分けることが検討されています。次に、コメに関してですが、ここはミニマム・アクセスという、非関税の輸入枠が77万トンあるのですが、ここに新たにアメリカから7万トンを加える案も検討されています。ただ、そもそもコメはアメリカの貿易赤字の解消に、あまり貢献しないということもあり、慎重論もあります。一方で、コメに関しては現状、民間レベルでの輸入が拡大していることも報じられています。今年は去年の20倍前後の4万トンくらい民間で輸入するんじゃないかと言われています。そのほとんどがカリフォルニア米ですが、コメについては日本の国内問題の部分も多く、慎重な判断が求められるでしょう。他にもLNG(液化天然ガス)の輸入拡大、造船分野の協力なども検討されています。


吉田:トランプ政権の関税措置、現時点で日本企業に影響は出ているのでしょうか?


塚越さん:農水省によると、牛肉輸出業者や加工食品、アルコール飲料業者などから、取引がキャンセルになったという報告があったとのことです。農水省はすでに関税対策チームをつくって、生産者や業者を支援する方法を探っていますが、事態が流動的に動いているので、具体的なところは難しいですよね。そして、気になるのは自動車関税です。トヨタ関連の部品メーカー各社が発表したところでは、5月3日に自動車部品の追加関税が予告されているので、色んな懸念があってかなり現場が困惑しています。先ほどもありましたが、ちょっと自動車関税が緩和するんじゃないかという話もあります。どうなるか分かりませんが、現場の方々はゴールデンウィークがないですよね。色々、考えないといけないので関係者の皆さまお疲れ様です。


ユージ:この2回目の関税交渉。塚越さんは、どのようにご覧になっていますか?


塚越さん:やっぱり、トランプ政権が焦っているという報道があります。実際、そうだと思います。ここを強行に出るというよりかは、日本がどうやって上手いこと交渉していくかが重要かなと思います。1つ思うのが、韓国もアメリカと色々交渉しています。韓国は、お隣の国ですし非公式で良いので話し合ったりして何かできることがあるんじゃないかなと思います。というのも、アメリカが造船業の協力を求めるニュースがありました。造船技術は、中国が圧倒的1位で韓国が2位、日本が3位です。アメリカが「もう1回、船を造りたい」と言っています。ここなんかは、「韓国と日本が協力して出来ますよ」と言うなど、こういうやり方も重要じゃないかなと思います。かなり流動的で、今日の発表も考慮しながら、まさに今これから赤沢経済再生担当大臣は、4月30日から5月2日にアメリカを訪問しますので、この発表のことも考えていると思います。このあたりのパッケージ化、上手いこと調整しながら最終的にやってくれると嬉しいなと思います。


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