25.05.14
石破総理、消費税減税を見送る意向、その背景は?
ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!
「石破総理、消費税減税を見送る意向、その背景は?」
吉田:石破総理が、物価高やトランプ政権の関税措置を受けた経済対策について、消費税減税を見送る意向を政権幹部に伝えました。財源論を置き去りにして、消費税減税を訴える野党に対し「責任政党」としての立場を鮮明にすることが重要だとの見方に傾いた、ということです。塚越さん、「消費税減税」を見送る背景について、詳しく教えてください。
塚越さん:まず背景にあるのは、今年7月に参議院選挙が行われるということです。衆議院は「解散」によって、ある程度、時期を決めることができますが、参議院には解散はないので、もう決定事項です。なので政治家は、いいか悪いかは別として、選挙に備えて減税だったり物価高対策など、目玉政策をぶつけたいと考えるところで減税対策が出ています。これまで現金給付案だったり、減税案が与野党からいろいろ出ていましたが、自民党は現金給付案はやめていて、さらに9日の記者会見で、林官房長官が消費税の減税は考えてないと発言しました。理由としては、まず消費税の税収は年金や医療といった社会保障費の財源になるのですが、減税した場合、今のところ年間5兆円〜15兆円の減収になるとみられています。これを赤字国債の発行で賄うのかというと、それが将来世代へのツケになり、また日本への信頼感が揺らいで、日本の国債が売られてしまうのではないかという懸念が、自民党幹部から出ているという報道があります。トランプ政権も国債が売られることがアキレス腱になっているので、それと同じことを危惧しているのかなと言えます。また減税するにしても、期間限定の場合は、レジのシステム変更だったり値札の貼り替えなど、負担も多く、準備期間も必要になります。さらにいうと、一度下げたものをまた上げる(再増税)は国民からの反発も多く出るので、政治家としては体力が必要になります。結局、再増税ができなくなるという指摘もあります。また、今の自民党の森山幹事長は財政均衡を重視する方、つまり減税には消極的な方とみられているので、そうした影響もあるのかなと思います。いずれにしても自民党は「責任政党」として、このところ一種のブームのような減税の流れとは違うんだ、ということを強調する狙いが今回あると私は感じます。
吉田:一方、野党は「消費税減税」一色ですね?
塚越さん:そうですね。野党は、どの党も減税を掲げています。立憲民主党と日本維新の会は、それぞれ1年〜2年間の「食料品0%」を主張していて、国民民主党と共産党は、一律消費税を5%に引き下げる政策を掲げています。自民党は、逆に言うとこういうものに同調しないという声明をしたことになります。ただ、先ほども話したように、減税を求める声は大きくて最近の調査でも6割くらいは減税に賛成しています。ただ一方で、その財源に関する議論はあまりされていないという部分も事実かなと思います。例えば、立憲民主党は減税に関する作業チームを8日に発足させて、色々な制度設計など今月中に見解をまとめる方針を出していますが、立憲内部からも、きちんとしたものが出せるかと不安の声もあります。一方で共産党は、大企業や富裕層への優遇税制を見直したり、法人税を安倍政権以前の水準にまでもう一度高くすることで、年間15兆円の財源を確保すると言っています。また、国民民主党は短期的に「国債の発行」も容認する発言もしています。財源確保の方法については、色々賛否があると思いますが、共産党を除く多くの野党では、全体としては財源について「明確」にはなっていないのかなと思います。財源なき減税論は「バラマキ減税」だ、という批判もあって、そこも問題かなと思います。ただ、そもそも日本は世界と比較して財政を気にしすぎているという主張もあり、これ自体も議論すべき論点です。いずれにせよ財政は選挙の大きな争点なので、野党各党は財源や財政論を、包み隠さず私たち有権者に話してもらって、それを含めて議論するべきですし、私を含めメディアもしっかり伝える必要があります。
ユージ:自民党と公明党は、夏の参議院選挙の前に減税が難しかったとしても何らかの経済対策をやっていかないといけないんじゃないかなと思います。現時点で、どんな経済対策を検討されていますか?
塚越さん:自民党と公明党、色々話をしています。公明党は、減税と給付を検討すると話しています。特に7月から9月までの電気とガスの補助が決まっていて、予備費を使って最大限やりましょうと言っていて、公明党は、減税も含めて主張をしています。ここをどう調整できるかというところも論点です。
ユージ:「消費税減税」と「新たな経済対策」をめぐる動き、塚越さんは、どうご覧になっていますか?
塚越さん:選挙は7月なので、自民党の動きと野党の動きの違いが結構出てきました。ここは、注目するべき点だと思います。先ほど、述べた通り僕自身も消費減税をやった方がいいなと思います。ただやっぱり、財源とか、どういう財政論でやるかは野党も言わないといけません。選挙前は、政治家はいいことばかり言うので、いいところばかりではなくて、こういう問題もあるときちんと言って聞くということが、今1番わたし達に求められているのかなと思います。
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