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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.05.21

今年1月から3月のGDP、4期ぶりマイナス…トランプ関税の影響は?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルがニュースを読み解きます。
本日は、情報社会学がご専門の学習院大学・非常勤講師、塚越健司さんです。
今朝、取り上げるテーマはこちら!


【今年1月から3月のGDP、4期ぶりマイナス…トランプ関税の影響は?】

吉田:今年1月から3月期のGDP(国内総生産)の速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前の期と比べてマイナス0.2%、この成長ペースが1年続いた場合の年率換算でマイナス0.7%でした。マイナス成長は4期ぶりです。塚越さん、まずは今期のGDPについて詳しく教えてください。


塚越さん:まずGDPについてですが、これは国内で生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額で、国の経済力を総合的に示すものと言われています。これが今年1月から3月のGDPです。速報値では実質で前の3ヶ月と比べて0.2%減りました。原因としては、物価高が再加速したことと、アメリカの関税だと考えられます。詳しくみていくと、まずGDPの半分以上を占める個人消費が0.04%増。増えたは増えたのですが、0.04%なので、ほぼ横ばいです。物価高ということで、コメやパンといった穀物や肉や魚など食品が振るわなかったほか、自動車や冷蔵庫も低調でした。また、企業の設備投資は1.4%増と1年間連続でプラスです。人手不足対策の投資や、ソフトウェア向けの投資が増えました。ここまでは増えたのですが、マイナス要因としては、輸出が0.6%減りました。こちらは1年ぶりのマイナスで、やはりアメリカの関税が影響しています。関税が上がるので、駆け込み需要で自動車の輸出は増えたのですが、海外にライセンスしている日本のアニメや技術の使用料といった、知的財産権の使用料などが減ったことで輸出が落ち込みました。輸出にカウントされるインバウンドは好調だったのですが、それでも輸出は全体としては0.6%マイナスになりました。もう1つは、輸入が2.9%増えています。輸入というのは、GDPの計算上プラスになるとGDPとしてはマイナスになります。これも駆け込み需要でかなり増えて、こうしたことが響いて全体的にマイナス成長になりました。


吉田:今期のGDPにはトランプ関税の影響があまりみられなかったのですが、次の四半期には影響が出てくる、と言われていますよね?


塚越さん:そうですよね。1月から3月の本格的な発動前の段階で、すでにマイナスになったということです。実は、アメリカの経済も1月から3月は3年ぶりにマイナス成長になっており、やはり関税の先行き不安があります。その上で、やはり気になるのは4月から6月の今ですよね。4月に入ってから、一部猶予期間が設けられたりもしていますが、一律10%の関税だったり、自動車関税もはじまりました。本格的に関税が発動されると、輸出や生産の落ち込みが避けられないという見方が強まっています。実際、民間のエコノミスト10人に聞いた4月から6月期の見通しだと、年率で0.2%のマイナスという予測が出ており、景気は厳しくなると考えられています。また、読売新聞の調査によれば、企業は関税の影響で輸出を控えたり、業績悪化を見越して設備投資にも慎重になっているとされ、日銀も今年度の経済成長の見通しを従来の1.1%から0.5%へと大きく引き下げました。中小企業を中心に賃金やボーナスの抑制も懸念されていて、「春闘」後の賃上げ率が伸び悩むようだと、個人消費への影響も大きく、実際に景気後退へと進む可能性も出てきています。


ユージ:今期のGDPと今後の見通し。塚越さんは、どうご覧になりましたか?


塚越さん:関税の「予想」の段階でマイナスになったわけですが、4月からはアメリカから一律関税の10%がすでに発動しています。さらに、本来は相互関税として24%のところを現在は猶予期間です。その猶予が切れるのが7月8日です。つまり、それまでは関税が「本気を出していない」状態です。もちろん、今後のディールでどうなるかは分からないですが、そうなると4月から6月までのデータも、まだ本気の関税前の状態といえます。さらに、自動車関税もどうなるか分かりません。となると、今の4月から6月も厳しいですが、1番恐ろしいのは7月以降じゃないかということです。ただ、アメリカも経済が失速していて、トランプ氏も中国と妥協点というところで、先ほども115%関税を下げることをしています。いま、予想されているよりも悪くなることは避けられると思います。ちょっと分からないですよね。いずれにしても、トランプ氏に振り回されている状態なので、人間関係でもよくいいますが、他人の人生に振り回されてはいけないのかなと思います。これは国も同じです。簡単に言うと、日本は70年代のオイルショックが起きたときも、エネルギーが高いなら省エネを頑張ろうということで、省エネ技術で頑張って乗り切ったこともあります。これは単なる節約ではなくて、産業構造改革を転換させたこともあります。こう考えると、アメリカ全体で国として20年、30年後のことを考えて難しいですが、新しい産業構造改革を私たちが意識していくこと。これを機にもっともっと議論していく必要があるかなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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