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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.05.26

メルカリ不正被害「全額補償」方針に転換

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


【メルカリ不正被害「全額補償」方針に転換】

吉田:フリマアプリ大手のメルカリは21日、取引中に詐欺被害に遭った利用者に対して、購入代金や販売利益を全額補償する新方針を発表しました。そこで、ECサイトで横行する不正やプラットフォームが果たすべき役割について神庭さんに解説してもらいます。


神庭さん:まずは、今回メルカリが打ち出した対策の内容ですが、1つ目は「ユーザーがトラブルに遭った場合、購入代金や販売利益を全額補償する取り組みを7月からスタートするということ」、2つ目は「AIで不正を監視し、不正利用者に対してはアカウントの利用制限や刑事事件化、民事訴訟などの対応を強化」、最後の3つ目は「偽ブランド品撲滅のため『メルカリ鑑定センター』を設立。こちらは9月に開始を予定している」ということです。


吉田:この取り組みの狙いは何でしょうか?


神庭さん:もともとメルカリの規約には、《ユーザー間の売買契約、出品、購入等の保証等に関しては、すべて当事者であるユーザーの自己責任》《売買契約の取消し、解約、解除、返品、返金、保証など取引の遂行には一切関与しません》と書かれていました。要は「トラブっても自分らで解決してね。私たちは知りませんよ」ということです。突き放すような口ぶりだったわけです。ところが、詐欺の急増とユーザーの不満の高まりを受けて、メルカリもようやく重い腰をあげた、というのが背景です。


ユージ:実際、詐欺はそんなに増えていますか?


神庭さん:増えています。警察庁の資料によると、昨年の詐欺被害の総額は3,075億円で前年から89%も増えています。詐欺の認知件数も5万7,000件超と、この5年で1.9倍近くに増えています。この中には投資詐欺とかオレオレ詐欺みたいなメルカリと無関係なものも多く含まれていますが、メルカリのようなECサイトにとっても、詐欺の急増や手口の巧妙化は深刻な問題です。そこで、ユーザー任せだったこれまでの姿勢を転換して、全額補償を打ち出したわけです。


吉田:具体的に、どんな被害が起きていますか?


神庭さん:ライターのナカヤマユウショウさんがITmediaに執筆した体験談によると、メルカリで22万円超のカメラレンズを注文したところ、安物のプラスチックのブレスレットが届きました。注文当日に不審な点に気づいてキャンセル依頼をかけたのですが、メルカリ事務局の対応は遅く「既に商品が発送されてしまったためキャンセル・手続きは不可能」と言われてしまいました。1カ月以上経ったあとに、ナカヤマさんの事例がテレビで紹介された後になって、ようやくメルカリ事務局から返金されたという話です。他にも、8万円近い高級デニムを購入したら、果汁グミが届いたという酷いケースもあります。「メルカリでデニム注文グミ届く」と、Yahoo!ニュースの見出しが綺麗な五七五だと話題になっていましたが、全然笑いごとではありません。


ユージ:他にも、手口みたいなのがありますか?


神庭さん:ありますね。怖いですが、購入者ではなく、出品者がダマされるパターンもあります。「すり替え詐欺」「返品詐欺」といって、出品者が送った商品に対して、購入者の側が「汚れている」とか「破損している」とかクレームをつけて返品したいと言ってくるわけです。そんなはずないのにな…と思いつつ、渋々受け入れると、全然違う安物が送り返されてくる。自分が送ったものと違うものが返ってくると。複数の報道によると、プラモデルを送ったら返品と称してゴミが送られてきたとか、ポケモンカードを送ったらレアカードだけ抜き取られて、価値の低いカードだけ送り返されたといったケースもあるということです。


ユージ:それは酷いな…。課題はどうでしょうか?


神庭さん:不正の横行は別にメルカリだけの問題ではありません。Yahoo!オークションでも他人名義のクレジットカードで商品を不正購入して転売する事案がありました。Amazonのマーケットプレイスでは粗悪品やスペックを偽った詐欺商品が多数確認されています。PCに外付けする記憶装置のSSDが「30TB」の大容量で1万円を切るようなあり得ない価格で売られていたりします。異常に高評価レビューが多く、サクラが疑われるようなものも少なくないです。騙す側もAIを使って手口を洗練させていますが、最近は消費者もAIを使って商品を検索することが増えてきました。私も先日、子どもの筆箱を買おうと思って調べていたのですが、Amazonの検索だと粗悪な海外製品ばかりレコメンドされるんですよ。しょうがないなーと思って、ChatGPTで調べたら、一発でいいものを教えてくれました。プラットフォームは儲かればいいや、だけではなくて消費者の保護と信頼回復に本気で取り組んでいかないと、消費者に愛想を尽かされてしまう。「AIで調べるからいいよ」となってしまいます。


ユージ:消費者側は、どうやって身を守ればいいですか?


神庭さん:私もメルカリやYahoo!オークションで、よくTシャツを買うのでぜんぜん他人事じゃありません。嫌な言い方になりますが、消費者の側としては、基本相手は詐欺師だと思うくらいの心構えで使うくらいがちょうどいいかなと思っています。異常に安い商品には手を出さない。Amazonレビューが怪しい時はサクラチェッカーを使う。高額商品を出品する際は、梱包の様子を動画に撮っておくとか、返品詐欺防止のため切断するまで外せない「すり替え防止タグ」を使うことも1つ選択肢として有力かなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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