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今、知っておくべき注目のトレンドを、ネットメディアを発信する内側の人物、現代の情報のプロフェッショナルたちが日替わりで解説します。

25.05.27

コメ高騰の中、小泉農水大臣が5キロあたり2,000円を目指す方針を明らかに。果たして実現できるのか?

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「コメ高騰の中、小泉農水大臣が5キロあたり2,000円を目指す方針を明らかに。果たして実現できるのか?」

吉田:小泉進次郎農林水産大臣は先週、政府が放出する備蓄米の店頭価格について、5キロあたり2,000円を目指す方針を明らかにしました。神庭さん、5キロ2,000円はどうやって実現しようとしているのでしょうか?


神庭さん:最初に間違いがないように伝えておくと、コメ全体の値段を下げる話ではありません。「備蓄米5キロの値段を2,000円に下げる」と言っています。ちなみに昨日、発表された最新のコメの価格は全体で4,285円です。最高値を更新しました。備蓄米の価格をどう下げるのか?という話ですが、1つ目は、「一般競争入札から随意契約への切り替え」です。これまでは競争入札で一番高い金額で入札した業者に備蓄米を売り渡してきました。「国の財産だから安売りしたらダメだよ」という発想でしたが、それだとコメの値段を下げる目的と矛盾してしまいます。そこで、政府が任意の企業を選んで契約できる随意契約方式に改めることにしました。2つ目が、「スーパーなどへの直接販売」です。時事通信によると、備蓄米の入札資格は年間5,000トン以上の玄米を扱う大手業者に限定されてきて、95%をJA全農が落札してきたのですが、今後はスーパーなどの小売業者にも直接、売り渡していくということです。イオンやイトーヨーカドー、ドン・キホーテなどが名乗りを上げています。さらに輸送コストも国が負担する方針です。


ユージ:結構、変更していくんですね。他に変更点はありますか?


神庭さん:3つ目が、「ネット通販でも販売」です。小泉進次郎氏と面会した楽天の三木谷浩史社長は備蓄米のネット販売参入に意欲を示しています。そして、4つ目が「買い戻し条件をつけないこと」です。これまでは一旦、備蓄米を放出するけど、1年とか5年とか一定期間が経ったら政府が買い戻すという条件がつけられていました。ただ、これだと長期で見た時の市場のコメの供給量は変わりません。価格は需要と供給のバランスで決まるので、供給が変わらなければ価格も下がらない。これは経済学の常識です。今回は買い戻し条件ナシなので、こうした懸念は払拭できそうです。


吉田:コメの価格の高騰について、小泉大臣や石破総理は何と言っているのでしょうか?


神庭さん:小泉進次郎氏は「価格破壊を起こさないと世の中の空気が変わらない」「国民が求めているスピード感で結果を出す」と意気込んでいます。最初は、「5キロ2,000円台」と言っていたのですが、いつの間にか「台」がとれて「6月の上旬には2,000円の備蓄米を店頭で見ることができるようになる」と言い切りました。おぼろげながら2,000という数字が浮かんできたのかもしれないですが、期限と価格を明確に断言したのは自信と覚悟の表れかなと思います。一方、石破氏はちょっと日和っています。国会で国民民主の玉木代表に「3,000円台に下がらなければ首相として責任を取るか」と詰められて「責任を取っていかねばならない」と言っていたのですが、最近の共同通信のインタビューでは進退には直結しないという認識を示すなど、少しトーンダウンしてきています。


ユージ:ぜひ下げて欲しいと多くの方が期待していると思いますが、実際、備蓄米の値段は下がるのでしょうか?


神庭さん:そうですね。随意契約で中間業者をカットできるのは大きいです。実際2,000円になるかは分かりませんが、大きく下がることは期待できそうですよね。結局、まだコメの不足感が続く、先高観がある状況だと中間業者はどんどん売ろうというモチベーションにならず、売り渋りが起きやすいです。そこで、小泉進次郎氏が「価格破壊を起こす」とぶち上げたことで、政府の本気が伝わって、アナウンス効果でこうした売り渋りも一定程度解消されるはずだと思います。小泉進次郎氏は選挙に強くて、農業票に気を使う必要がありません。その点は期待できそうです。ただ、イメージ先行の部分も否めないかなと思っています。


吉田:どういった部分がイメージ先行なのでしょうか?


神庭さん:長野の農協系スーパーで、5キロ税抜き2,990円でコメが売られているというニュースがありました。このニュースを小泉進次郎氏がXに投稿したら、「進次郎さんが大臣になったおかげで下がった」と誤解した消費者やメディアから問い合わせが殺到したそうです。しかし、朝日新聞によると、これは3月に放出した備蓄米を4月から2,990円で売っているだけ。JA全農長野は「大臣就任により引き下げたのではない」と異例の声明を出しています。他にも備蓄米は固定資産じゃないのに、小泉進次郎氏は古いコメが「減価償却される」とテレビで話すなど、基本知識に疑問符がつく側面もあります。一番のハードルは自民党の党内世論です。小泉進次郎氏がぶち上げる農政改革を面白く思わない人もいます。森山幹事長はコメの価格について「安ければいいというものではない」と述べています。参院選を前に農業票の行方にセンシティブになっている議員も多いですから、小泉進次郎氏が農政族議員の圧を跳ね除けられるかどうかという部分も注目です。


ユージ:最後にコメの高騰について、課題は何だと思いますか?


神庭さん:備蓄米の放出は、あくまで対症療法です。最大の問題は飼料用米や他の作物への転作に補助金を出す、事実上の減反政策を今も続けていることです。これはアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもので矛盾しています。日本のコメは品質が高く、和食ブームで海外でも需要がありますから、減反を完全廃止して、どんどん輸出していく。田んぼに水を張らない「乾田直播」の方法もありますから、それを活用して、コメのコストを抑えながら大量生産していくやり方もあります。こういった農政の構造改革を進めていく、アメリカとの関税交渉もありますが、関税を見直すなどそういった方法もやっていかないと、一時的にコメの価格が下がったとしても、またコメ不足は再燃すると思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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