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25.06.02

三菱UFJがデジタル銀行設立へ…加速するポイント経済圏バトル

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「三菱UFJがデジタル銀行設立へ…加速するポイント経済圏バトル」

吉田:三菱UFJフィナンシャル・グループは5月27日、2026年度後半に「デジタルバンク」を開業する計画を明らかにしました。そこで今朝は、デジタルバンクを始める背景や金融業界で広がる「ポイント経済圏」をめぐる争いについて、神庭さんに解説してもらいます。


ユージ:今回、デジタルバンクということですが、ネット銀行とは違いますか?


神庭さん:そこ気になりますよね。「ネット銀行」ではなく「デジタルバンク」と言っているのがミソかなと思います。ネット専業銀行ではなく、既存の店舗網や金融のプロによるアドバイスなども使えるサービスで「デジタルとリアルのいいとこ取り」を目指すと言っています。具体的には「スマホ上で手続きを完結させることでコストを削り、預金金利を高めに設定」、「Google Cloudの技術を使った柔軟なサービス提供」、「完全子会社化したウェルスナビと連携し、顧客データやAI技術を活用してユーザーの資産形成を支援」といったことを想定していているようです。


ユージ:三菱UFJは、すでにネットバンキングをやっているのに、さらに新しいサービスを立ち上げる理由は何ですか?


神庭さん:1つは若いユーザーの獲得です。日経新聞によると、楽天銀行やPayPay銀行など主要ネット銀行6行の口座数は合計4,000万を超えていて、昨年までの5年間で2倍に増えています。業界トップの三菱UFJは3,800万口座ありますが、猛追を受けている状況です。さらに新規の口座開設数にフォーカスすると、三菱UFJの年間70万に対して、楽天は150万ですからそういう部分では大きく水をあけられています。若年層はわざわざリアル店舗に行くよりも、スマホで手軽に完結できる方がいいと思っていますし、手数料の安さなどコスパも重視しています。そういうユーザーも取り込んでいきたいということなのかなと思います。もう1つの狙いはポイント経済圏です。


吉田:どういうことでしょうか?


神庭さん:三菱UFJは、6月2日から「エムットポイント」を始めます。三菱UFJカードを使って対象のスーパーやコンビニで買い物をすると7%還元、銀行口座をつくって給与受取口座にするなど、様々な条件をクリアすると最大20%の還元を得られるということです。銀行、クレジットカード、投資などグループのサービスを使うと、どんどんポイントが貯まるようにして楽天のようにポイント経済圏を築き上げていきたいということだと思います。三菱UFJはPontaポイントの経済圏でもあるので、新しく始まるエムットポイントと、どういうふうに絡んでくるのかというのも気になるところです。


ユージ:ライバル銀行の動向は、どうなっているでしょうか?


神庭さん:三井住友フィナンシャルグループは、銀行口座、カード決済、証券、保険などの個人向け金融サービス「Olive」を2023年に始めました。今年3月で500万アカウントを突破しています。新規で口座開設した人の半数が20代以下で、30代も含めると67.6%と若年層にも刺さっています。アプリが洗練されていて使いやすいです。さらに5月15日、三井住友とソフトバンクが包括提携を発表しました。OliveとPayPayを連携して、VポイントとPayPayポイントを相互に交換できるようにするということを打ち出しました。Vポイントは8,600万人、PayPayポイントは延べ2億9,000万人のユーザーがいるので、かなり巨大なポイント連合が誕生することになります。


吉田:ポイント戦国時代ですね。


神庭さん:おっしゃる通りです。ポイント経済圏バトルが加速しています。先週は、NTTドコモが住信SBIネット銀行を買収するというニュースが話題になりました。ドコモと言えばdポイントです。1億人以上の利用者がいます。銀行などのサービスの利用に応じてdポイントを付与する方針です。ただ、住信SBIネット銀行のユーザーインターフェイスが非常に優れていて使いやすいですが、一方でdアカウントはちょっと使いにくいという評判もあります。買収によって住信SBIの方まで使い勝手が悪くなったら困る、という懸念の声も出ています。逆に住信SBIのUIに学んで、dアカウントの方が使いやすくなるとユーザーにもメリットが大きいのかなと思います。


ユージ:今後の金融業界、どう変化していくと思いますか?


神庭さん:まさしく戦国時代ですが、銀行がIT企業化していきますし、IT企業の側も金融にどんどん参入していく部分があります。銀行とITの垣根はなくなり、テック人材の奪い合いになっていくと思います。三菱UFJのデジタルバンクに関しては「デジタルとリアルのいいとこ取り」と打ち出しているのですが「どっちつかず」にならないといいなと思います。大手銀行ほど多くのリアル店舗を抱えています。イノベーションのジレンマと言って、今ある所からなかなか新しいところに踏み出せないということがありがちですから、そこを打ち破って、大胆にDXを進めていけるかどうかというところがカギになりそうです。あとは、ポイント経済圏についてですね。メディア「Impress Watch」によると、三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規社長は「“経済圏”に閉じ込めるのは絶対ムリだと思う。新しいポイントカードを作ったからといって、昔のをやめるかといえば、そんなことはない」と言っています。これは非常に正しい認識で「ポイント経済圏に囲い込む」というのはサービス運営者側の勝手な理屈にすぎないわけです。ですから、亀澤宏規社長の発言に謙虚でいいなと思ったのですが、あくまでもユーザー目線に立って、使いやすいサービスを磨き上げていくことが大切になるんじゃないかなと思います。


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