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25.06.03

夏の参議院議員選挙の争点に浮上している消費減税について

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ネットニュースの内側にいるプロフェッショナルが、注目のニュースを読み解きます。
今日は、ダイヤモンド・ライフ編集長の神庭亮介さんにお話を伺いました。
神庭さんが注目した話題はこちらです。


「夏の参議院議員選挙の争点に浮上している消費減税について」

ユージ:7月28日に任期満了を迎える参議院議員選挙の争点に浮上している消費減税についてです。


吉田:神庭さん、まず各党の主張を教えて下さい。


神庭さん:まず自民党は慎重姿勢です。石破氏は、3月時点で「消費減税について、一概に否定するつもりはない」と言っていました。やっぱり、財政再建派の森山幹事長が強く反対していて「消費税を下げる公約は、どんなことがあってもできない。そんなに余裕のある国じゃない」と言っています。石破氏もトーンダウンしてきて「社会保障制度を支える重要な財源」、「引き下げは適当ではない」、何なら「レジのシステムを変えるのに1年かかる」とまで言っています。消費税を上げるときは言わなかったのに、急にそんなことも言い出していますね。ただ、自民党も一枚岩ではなくてNNNの報道によると、自民党参院議員を対象にしたアンケートで、8割が消費減税を求める結果になりました。高市氏も食料品の消費税ゼロを主張しています。公明党の斉藤鉄夫代表は、食料品の消費税率を現在の8%から5%に下げるのも一案だと言っています。


吉田:野党はどうでしょうか?


神庭さん:立憲民主は、「食料品の消費税率を来年4月から1年間ゼロ%にすることを参院選の公約に盛り込む」ということです。原則1年、最大でも2年です。維新も「2年間の食料品の消費税ゼロ」を打ち出しています。国民民主は「食料品だけでなく全品目一律5%への引き下げ」を目指しています。共産党は「一律5%への減税と将来的な廃止」が目標。れいわ新選組も「結党以来、消費税廃止」を訴えています。社民党は「3年間の消費税ゼロをうたう」ということで、右から左まで消費減税という感じですね。


ユージ:前も神庭さんに解説してもらいましたが、消費税は大きな財源じゃないですか。減った分の財源はどうするのでしょうか?


神庭さん:そこが一番大事なところです。日本の税収72兆円のうち、消費税が24兆円で3分の1を占めています。仮に消費税5%に下げれば12兆円、0%なら24兆円、1年限りではなく毎年、政府の歳入に大きな穴が空きます。消費減税の財源をめぐっては、石破氏が国会で共産党を褒めるという珍事も起きました。共産党は、年11兆円の法人減税や富裕層への税制優遇などを見直すことで財源を生み出すと主張しています。毎日新聞によると、石破氏は共産党議員の意見に賛同しないとしつつ、「安易に国債発行に頼らない姿勢は本当に立派」「ある意味、感動を持って拝聴している」とまで述べました。消費減税と言うなら「代わりの財源を示してくれ!」という、石破氏の他の野党に対する苛立ちの裏返しかもしれないですよね。


吉田:そもそも、消費減税の現実味はあるのでしょうか?


神庭さん:はい。与野党に減税論が広まっていますから、かつてなく可能性は高まっています。石破政権は少数与党で予算を通すためには、ある程度、野党の主張も受け入れないと立ち行かないです。参院選で消費減税を訴える野党が仮に伸びれば、その傾向はさらに強まるんじゃないかなと思います。


ユージ:消費減税について、神庭さんはどう見ていますか?


神庭さん:そうですね。いつの間にか、消費税を下げるか下げないかという2択に追い込まれている感がありますが、そんなに単純な問題ではありません。現役世代の負担を第一に考えるなら、1丁目1番地は社会保険料の軽減だと思います。日経新聞と、辻󠄀・本郷 税理士法人の記事を参考にChatGPTに1年間に支払っている消費税額と社会保険料を試算させたところ「年収200万円の人は、消費税10万円に対して社会保険料30万円」、「年収400万円だと消費税20万円、社会保険料60万円」、「年収600万円だと消費税30万円、社会保険料90万円」、「年収800万円だと消費税40万円、社会保険料117万円」、「年収1,000万円になると、消費税50万円、社会保険料129万円」という結果になりました。粗い試算ですが、消費税よりも社会保険料の方が2~3倍大きいです。しかも、老若男女が広く薄く負担する消費税と違って、社会保険料の方は働く現役世代だけに重くのしかかっています。消費税を下げるなとは言わないですが、優先順位としては社会保険料の方が私はずっと上だと思っています。社会保険料の引き下げが1丁目1番地なら、消費減税は4丁目5番地くらいだと思います。


吉田:こうして比べてみると、社会保険料は結構大きいですよね。


神庭さん:そうですよね。やはり、消費税の方が買い物の度に目に入るので分かりやすいです。社会保険料は長くステルス増税されてきましたが、給与明細まで細かくチェックしてる人は少ないので、見過ごされてきました。私が一番恐れているのは、消費税を下げた結果として社会保障が回らなくなり、お金が足りないから社会保険料を上げさせてください、というパターンです。もうこれ以上、現役世代や将来世代にツケを回してはいけないと思います。かといって、日本の財政を考えると、消費税も所得税も社会保険料もぜーんぶ下げます!という大盤振る舞いは、たぶん無理だと思います。イギリスのトラスショックのように国債暴落や急激な円安を招くリスクがあります。だからこそ、優先順位が大切だと思います。政治家の方は、「税金下げます」という有権者ウケしそうな話ばかりではなく、医療費を全世代で3割負担にするとか、場合によって年金の受給開始年齢を引き上げます、というような痛みを伴う話も覚悟を持って言うべきじゃないかなと思います。どの政党、どの政治家がどういう説明をしているのか、しっかり見極めたうえで投票所に足を運んでいただきたいなと思います。


そして、今日の #ユジコメ はこちら。





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